学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
木造軸組工法による木工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
選択肢3が不適当です。防腐・防蟻措置を行う所定の木部の範囲は、原則として地面から1m以内です。基礎が40cm立ち上がっていても、基準となる高さを地面から60cmへ縮めることはできません。どこから測る高さなのかを取り違えた記述です。
防腐は木材を腐らせる菌への対策、防蟻はシロアリによる被害への対策です。地面に近い木部は、湿気や雨の跳ね返り、シロアリの侵入などの影響を受けやすいため、所定の範囲に有効な措置を行います。対象となる柱や筋かいなどの木部について、部位や仕様に応じた処置を選びます。
本問の数字を図として考えると、地面を0cm、基礎上端を40cmとしたとき、地面から1mの位置は100cmです。基礎上端から見れば上になります。しかし本肢は「基礎上端から60cm」ではなく「地面から60cm」としているので、地面から60〜100cmの部分を処置の範囲から外してしまいます。引算の結果だけ覚えて測定の出発点を変えてはいけません。建築の寸法は、同じ60cmでも基準面が違うと全く別の位置を示します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。山形プレートは土台と柱を接合する金物です。大壁造の耐力壁では構造用合板が柱などを覆い、周囲の釘で力を伝えます。金物のため合板を切り欠くと、その付近の力の伝達や釘配置が変わるため、周辺へ釘を増し打ちする本肢の対応は適当です。ただし、任意の大きさに合板を切って釘を増やせば全て元の性能へ戻るという意味ではありません。認められた納まりや仕様に従い、金物と面材の両方が所定の働きをできるよう施工します。
選択肢2
選択肢2:適当です。木材は含まれる水分が減ると収縮し、方向によって縮み方も異なります。含水率の高い材料をそのまま組み立てると、使用中の乾燥で反り、隙間、接合部の緩みなどが生じる原因になります。特記がない場合に搬入時含水率15%以下の製材を合格とする本肢は適当です。測定方法や位置もそろえ、表面だけの乾きで判断しません。搬入時に乾いていても、現場で雨にさらせば水分が増えるため、保管中の雨養生や地面から離した置き方も必要です。
選択肢3
選択肢3:不適当です。基準は地面から1m以内であり、地面から60cm以内ではありません。40cmの基礎立上りを差し引いた60cmは、基礎上端から1mの高さまでに残る距離です。例えば地面から80cmの柱の部分は、本来の1m以内に含まれますが、本肢の60cm以内では外れてしまいます。測定の基準面を明示して図を描けば、取り違えが分かります。防腐・防蟻は材料や構法に応じた有効な措置として行い、基礎が高いという理由だけで地面基準の範囲を変更しません。
選択肢4
選択肢4:適当です。床勝ち仕様は、床の下地合板を先に張り、その上などへ壁の面材を納める構成です。壁の合板と土台、柱などとの接合条件が、床合板を挟まない場合と異なり得ます。壁倍率は耐力壁が水平力に抵抗する性能を表す倍率で、合板の厚さだけでなく釘の種類、間隔、縁の納まりなどを含む仕様に対応します。そのため本肢のように床勝ち仕様で認められる条件を確認します。同じ合板を使ったから同じ壁倍率と判断せず、力を伝える接合まで一致させます。
周辺知識
木造では、材料の乾燥状態、腐朽やシロアリへの抵抗、面材や金物の接合が建物の性能に関わります。木材は天然材料であり、施工後も湿度に応じて水分や寸法が変わります。乾燥した材料を選び、雨から守り、水がたまりにくく乾きやすい納まりにすることが、変形や劣化の抑制につながります。
耐力壁は合板一枚だけで働くものではありません。合板が受けた力を周囲の釘から柱や土台へ伝え、柱脚や土台の接合を通じて基礎へ渡します。釘の増し打ちや床勝ち仕様の確認は、この力の伝達を適切に保つための施工条件です。材料名が同じでも接合の仕様が違えば性能も同じとは限りません。
寸法を読むときは、基準面と対象範囲を先に決めます。地面から1mと、基礎上端から1mは違う範囲です。基礎の高さを差し引く場合は、計算後の距離をどこから測るかまで保持する必要があります。この考え方は、かぶり、埋設深さ、手すり高さなどにも共通します。数字を単独で覚えず、測る二点を言葉や図で確認しましょう。