学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨工事における溶融亜鉛めっきに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
選択肢4が不適当です。M20の溶融亜鉛めっき高力ボルトだからという理由で、通常のM20高力ボルトより孔を1mm大きくする扱いにはしません。通常の高力ボルト孔径は、呼び径20mmに2mmを加えた22mmを基準とし、めっきの有無だけで23mmへ変えないことが判断点です。
M20はねじの呼び径、F8TとF10Tはボルトの強度区分です。強度区分の数字が違っても、それがそのまま孔径の加算値を表すわけではありません。溶融亜鉛めっきは、鋼材を溶けた亜鉛へ浸して表面に保護層をつくり、腐食を抑える処理です。
めっきによって摩擦面の性質やボルトの施工条件に配慮が必要になりますが、だから全ての寸法を自由に大きくするのではありません。孔を大きくすると位置のずれや断面の欠損などにも影響します。所定の孔径と加工精度を守り、めっき高力ボルトに対応した締付け方法、摩擦面の処理を用います。「材料の表面処理」「ボルトの強度区分」「呼び径」「孔径」は関連していても別の項目なので、何を示す記号かを分けて読みます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。一次締めは本締め前の段階で、重ねた板を密着させ、ナット回転法などの出発点をそろえるために行います。M16は約100N・m、M20とM22は約150N・mのトルクとする本肢は適当です。トルクは回そうとする力の大きさで、力Nと腕の長さmの積として表します。一次締めを省くと、板を密着させるだけの回転が本締めの回転に混ざり、必要な軸力を得にくくなります。本締めと別の役割を持つ準備の工程として理解します。
選択肢2
選択肢2:適当です。ナット回転法は、一次締め後の状態からナットを所定の角度だけ回し、必要な締付けを得る方法です。回転量が不足しているものは、基準とする回転量まで追締めします。例えば必要な回転に達する前で止まっていれば、印などで不足量を確認して締め足します。ただし、既に回し過ぎたものを緩めて同じように扱うこととは異なります。締付けには順序と検査が必要で、ナットが動かなくなった感触だけで合否を決めません。始点と回転量を確認できる管理が重要です。
選択肢3
選択肢3:適当です。摩擦接合では、ボルトが鋼板を強く押し付け、面と面の摩擦で力を伝えます。溶融亜鉛めっき面をそのまま使うと必要な摩擦性能を得にくいため、りん酸塩処理などによってすべり係数0.40以上を確保します。すべり係数は、押し付ける力に対してどの程度すべりに抵抗できるかを表す指標です。防錆のためのめっきと、接合で力を伝えるための摩擦面処理は目的が違います。腐食しにくいから摩擦接合としても自動的に適当、とは判断しません。
選択肢4
選択肢4:不適当です。F8TのめっきボルトとF10Tのボルトは強度区分や施工仕様に違いがありますが、同じM20について孔径を1mm増す根拠にはなりません。通常のM20高力ボルト孔は22mmを基準とし、所定の加工精度で管理します。めっきがあると入れにくそうだから23mmにする、という自己判断は不適切です。孔を設けると鋼材の断面も減るため、施工の通しやすさだけを優先しません。径、孔径、接合仕様を図面や基準に照らして確認します。
周辺知識
高力ボルトの摩擦接合は、ボルトの軸力と接触面の摩擦性能を組み合わせて力を伝えます。二枚の紙を手で強く挟むとずれにくくなることに似ています。ただし実際の鋼材接合では、必要な力を計算し、面の処理と締付けを所定の方法で管理します。表面が滑りやすければ、強いボルトを使っただけでは十分ではありません。
溶融亜鉛めっきは腐食対策ですが、接合部では摩擦面やねじの状態にも影響します。そのため対応したボルト、締付け方法、表面処理を一組で採用します。普通の高力ボルトの施工方法を部分的に混ぜ、都合のよい寸法だけ変更することはできません。
一次締め、本締め、検査は異なる段階です。一次締めで接触と出発点を整え、本締めで必要な締付けを行い、印や回転量などから施工結果を確かめます。一方、孔あけはその前の製作段階の管理です。完成後に適切な摩擦接合となるためには、加工寸法から面処理、締付けまでの条件が連続してそろう必要があります。