学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
プレキャスト鉄筋コンクリート工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
選択肢1が不適当です。耐力壁の水平接合部に使う敷モルタルの圧縮強度は、部材コンクリートの品質基準強度以上を確保するように管理します。「設計基準強度以上」とした本肢では、品質基準強度の方が高い場合に必要な強さを満たせません。
設計基準強度は、構造計算で必要とする圧縮強度の基準です。品質基準強度は、構造上の要求と耐久性のための要求などから定める品質の基準で、両者が必ず同じ値とは限りません。敷モルタルは、上下のプレキャスト部材の間へ敷き、接触をそろえて荷重を伝える材料です。その部分が弱ければ、部材本体が強くても接合部が弱点になります。
例えば設計基準強度24、品質基準強度30という条件なら、敷モルタルが26では前者を満たしても後者には足りません。これは二つの基準の違いを示す例です。本肢は現場水中養生した供試体を材齢28日で調べるという条件を示していますが、試験方法が適切でも比較対象を誤れば判定は適切になりません。「いつ、どの養生の試料で測り、どの強度と比べるか」を一組で読むことが要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:不適当です。敷モルタルは耐力壁の下で荷重を受け渡す接合材料なので、比較する基準は部材コンクリートの品質基準強度です。設計基準強度だけを満たしても、品質基準強度がそれより高い場合には不足します。敷く材料だから高さを調整できればよい、ということではありません。部材の下面全体へ適切に充填し、必要な圧縮強度を持って力を伝える必要があります。現場水中養生・材齢28日という条件と、品質基準強度以上という判定条件を組み合わせて確認します。
選択肢2
選択肢2:適当です。加熱養生は、製作したコンクリートを暖め、強度の発現を促す方法です。ただし打込み直後から急に温度を上げると、材料の膨張や水分の移動などで組織を損ねる恐れがあります。前養生を3時間行い、1時間に18℃の割合で温度を上げる本肢は、所定の管理の範囲にある適当な扱いです。前養生は加熱前の待機・養生、上昇勾配は温度を上げる速さです。最高温度だけでなく、そこへ達するまでの速さや冷ます過程も管理します。早く熱くすればよいという工程ではありません。
選択肢3
選択肢3:適当です。板状の部材を水平のまま吊ると、自重によって曲がり、その一面へ引張りが生じやすくなります。製作台であるベッドを70〜80度まで起こしてから吊れば、板を寝かせたまま持ち上げるときの曲げを小さくできます。本肢の条件で脱型時所要強度9とする扱いは適当です。脱型時所要強度は型から外す段階で必要な強度で、完成した建物で要求される強度そのものではありません。吊り位置や部材形状に応じた計画が前提で、角度の数字だけで安全を保証しません。
選択肢4
選択肢4:適当です。搬入車両からクレーンで直接部材を受け取り、そのまま組み立てると、仮置きや再度の吊上げを減らせます。保管中の破損や荷崩れの機会を減らし、現場の置場も節約できる方法です。ただし、車両の到着、組立て順序、クレーンの位置と能力、吊具、作業範囲を合わせて計画する必要があります。予定がずれても無理に吊るという意味ではありません。工場製作の順番から現場で据える順番までをつなげ、部材が安全に移動できる工程を整えます。
周辺知識
プレキャスト部材は、工場でつくり、型から外し、運び、現場で吊って組み立てます。各段階で支え方が変わるので、完成時の強度だけでなく、脱型や吊上げ時に必要な強度も確認します。薄い板を水平に持つ場合と縦に持つ場合で曲がりやすさが違うことが、脱型方法に関係します。
加熱養生は、限られた製作時間の中で必要な強度を得るために使いますが、温度を上げる速さまで管理する必要があります。熱を受けた表面と内部の差、硬化が十分でない時期の変形などを考えます。強度を早く得ることと、材料を傷めず品質を保つことを両立させます。
組立て後は、部材間の接合が連続した力の流れをつくります。敷モルタルの充填不足や強度不足があれば、接触が偏ったり接合部がつぶれたりする原因になります。工場の部材本体、施工時の取扱い、現場の接合部を別々に確認しながら、最後に一体の建物として機能するように整えることが、この工法の品質管理の中心です。