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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

コンクリート工事における品質管理及び検査に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    レディーミクストコンクリートの受入れ時の検査において、空気量及びスランプが許容差を超えたので、高性能AE減水剤の添加量を変更するとともに、水セメント比を変えて調合の調整を行った。
  2. (2)
    構造体コンクリート強度の判定において、標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度試験の1回の試験の結果が、調合管理強度以上であったので、合格とした。
  3. (3)
    普通ポルトランドセメントを用いたマスコンクリートの調合管理強度を定めるに当たって、特記がなく、コンクリートの打込みから材齢28日までの期間の予想平均養生温度が25℃を超えると予想されたので、構造体強度補正値を6N/mm²とした。
  4. (4)
    構造体コンクリートの各部材の位置について、設計図書に示された位置との差が±20mm以内であることを確認した。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

選択肢1が不適当です。受入れ時に空気量やスランプが許容差を外れた場合でも、水セメント比を勝手に変えて調整することはできません。水セメント比は、固まった後の強度や耐久性に関係する基本的な調合条件です。流れやすさの数字だけを合わせるために変えると、別の品質を損ねる恐れがあります。
水セメント比は、水の質量をセメントの質量で割った百分率です。例えば水180kg、セメント360kgなら次のように計算します。
180360×100=50 %\frac{180}{360}\times100=50\,\%
ここへ水を20kg増やすと200360×100≃55.6 %\displaystyle \frac{200}{360}\times100\simeq55.6\,\%となり、同じ調合とはいえません。一般に余分な水が増えると、硬化後の空隙が増え、強度や水の通りにくさに影響します。
高性能AE減水剤は、コンクリートの流動性や空気泡などを調整する混和剤ですが、その添加も所定の調合と製造・品質管理の範囲で行います。受入検査で外れたものを現場の判断で自由に作り直せるという意味ではありません。材料の状態や製造条件を確認し、受入れの可否と適切な是正を定めた手順で判断します。スランプ、空気量、強度は互いに関係しますが、一つの数値を合格にするため他の条件を崩さないことが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:不適当です。誤りは、水セメント比まで変えて調合を調整した点です。スランプはまだ固まらないコンクリートの沈み量、空気量は体積中の空気の割合で、受入れ時の性状を確認する項目です。水を増やせば流れやすくなる場合がありますが、硬化後に必要な強度や耐久性まで保証されません。混和剤を使う場合も、その種類や量、投入方法は品質管理の条件に従います。目の前の試験値だけを合わせるのではなく、承認された調合と全体の品質を保つ手順で対処します。

選択肢2

選択肢2:適当です。標準養生した供試体の材齢28日の試験結果を、調合管理強度と比べる本肢の判定方法では、その値以上なら合格です。標準養生は温度と水分を管理して試料の強度を育てる方法で、現場の部材と全く同じ温度履歴という意味ではありません。1回の試験結果は、所定の複数供試体から求める平均値として扱います。一本だけの都合のよい値を選ぶのではありません。養生方法、試験材齢、比較する基準を対応させることが、強度判定の基本です。

選択肢3

選択肢3:適当です。マスコンクリートは、部材が大きく、セメントの水和による熱が内部へたまりやすいコンクリートです。本肢の普通ポルトランドセメント、予想平均養生温度25℃超、特記なしという条件では、構造体強度補正値6N/mm2\displaystyle \mathrm{N}/\mathrm{mm}^{2}を用います。高温履歴を受けた実際の部材と、標準的な養生をした供試体では強度の伸び方が異なり得るため、必要な補正を見込みます。「暖かいほど常に長期強度も大きい」という単純な関係ではありません。セメントと温度の条件をそろえて値を選びます。

選択肢4

選択肢4:適当です。構造体各部材の設計位置に対する差を±20mm以内として確認する本肢は適当です。例えば設計した柱の中心位置から実際の中心が右へ15mmならこの位置の範囲内、25mmなら範囲外です。位置のずれは、隣の部材、設備の通り道、仕上げの納まりなどにも影響します。ただし、この位置の許容差は部材の断面寸法や傾きの許容差と同じではありません。位置が範囲内でも、断面不足など別の不良は別途確認します。検査対象となる寸法を明確に測ります。

周辺知識

コンクリートの品質は、練り混ぜた直後、硬化が進む途中、完成した構造体という段階ごとに確かめます。フレッシュ時にはスランプや空気量、強度の確認には所定の養生をした供試体、完成した部材では位置や寸法などを調べます。一つの試験だけで全てを判断することはできません。
強度にも、設計で必要とする基準と、調合を管理するための基準などがあります。実際の部材の温度履歴と供試体の養生条件の差を考え、必要な補正を見込んで製造時の目標を設定します。試験結果を比較するときは、どの養生方法、何日目、どの基準との比較かを必ずそろえます。数字が大きいというだけでは正しい判定になりません。
調合は水、セメント、骨材、混和剤、空気を組み合わせた条件です。水を足すと流れやすさだけでなく水セメント比も変わります。材料の一つを動かした影響が他の性能へ及ぶため、現場で独断に調整せず、所定の製造・品質管理の手順で対応します。受入れ、養生、強度、施工精度をつなげて確認することが、完成した建物の性能を確保する考え方です。