学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
静定トラスは、一つの部材が降伏すると塑性崩壊する。図のような集中荷重Pを受けるトラスの塑性崩壊荷重として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、各部材は、断面積をA、材料の降伏応力度をσyとし、断面二次モーメントは十分に大きく、座屈は考慮しないものとする。また、全ての部材の自重は無視する。
選択肢
- (1)
3Aσy - (2)
32Aσy - (3)
6Aσy - (4)
62Aσy
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
崩壊荷重はP=6Aσyです。Aは各部材の断面積、σyは鋼材が降伏し始める応力度です。軸方向力Nによる応力度はANなので、各部材は引張り・圧縮とも、力の絶対値がAσyに達すると降伏します。本問では座屈しない条件があるため、まず最大の軸方向力を探します。 左下の支点回りに、3個の荷重が作るモーメントはPl+P(2l)+P(3l)=6Plです。上下の支点の距離はlなので、上の支点の水平反力はl6Pl=6P。上の支点に接続する水平材も、この反力とつり合う引張力6Pを受けます。 自由端側から節点のつり合いを順に解くと、上弦材の軸力は先端側からP,3P,6P、斜材の絶対値は2P,22P,32Pです。最大斜材力でも約4.24Pなので、最大は壁際の上弦材の6Pです。よってA6P=σyからP=6Aσy。荷重3個の合計3Pをそのまま部材の軸力とするのではなく、転倒作用を伝える力を追うことが必要です。 各選択肢の解説
選択肢1
(1)この値では、荷重の合計は3P=Aσyになりますが、最も大きい部材軸力は合計荷重ではなく6Pです。P=3Aσyを代入すると壁際の上弦材には2Aσyが必要となり、降伏軸力の2倍に達してしまいます。横へ長く張り出すトラスは、荷重による回転作用を上下に離れた力で受け止めます。そのため、ある部材の軸方向力が鉛直荷重の合計より大きくなっても不思議ではありません。 選択肢2
(2)これは最大斜材力32Pだけを降伏軸力Aσyに等しくした値です。しかし、32≈4.24に対し、上弦材の係数は6なので、上弦材の方が先に降伏します。この荷重を上弦材へ代入すると、軸力は2Aσyとなり、既に降伏値を超えます。斜材は角度による力の増幅があるため目立ちますが、最終判断には水平材を含む全部材の軸力を比較する必要があります。 選択肢3
(3)P=6Aσyなら、壁際の上弦材がちょうどAσyに達します。同時点で最大斜材力は(632)Aσy≈0.707Aσyで、まだ降伏値より小さくなります。これにより支配部材を確認できます。断面積をmm2、降伏応力度をN/mm2にすればAσyの単位はNとなり、6で割ったPも力の単位です。静定トラスで、座屈を除外するという与条件の下での結果です。 選択肢4
(4)壁際の上弦材は水平なので、求めた6Pがそのまま部材方向の軸力です。ここへさらに2を掛ける必要はありません。2は45度の斜材で、鉛直成分や水平成分から部材方向の力へ戻すときに現れます。この選択肢の荷重では、最大の上弦材力も2Aσyにとどまり、どの部材も降伏しません。部材の向きと、求めている力の方向を区別しましょう。 周辺知識
トラスは、細い部材を主に三角形へ組んだ骨組です。接合部を自由に回転できるピン、荷重を節点にだけ作用する力として理想化すると、各部材は主に軸方向の引張り・圧縮を受けます。節点を一つ取り出し、左右・上下の力がそれぞれ0になる条件を使えば、未知の部材力を順に求められます。
45度の斜材の力をNとすると、鉛直成分も水平成分も2Nです。本問の最初の区画では、先にある3個の下向き荷重を支える鉛直成分が3Pなので、斜材の絶対値は32Pです。一方、曲げモーメントに相当する回転作用は、上下に離れた弦材の押し引きへ変換されます。トラスの高さが低いほど同じ回転作用を受け持つ軸力が大きくなるのは、てこの腕が短くなるためです。 実物の圧縮部材では、材料が降伏する前に横へ曲がる座屈も問題になります。したがって通常は、引張りの降伏、圧縮の座屈、接合部の耐力などを別々に確認します。本問は断面二次モーメントが十分に大きく、座屈が生じないと指定しているので、軸力を降伏値と比較できます。与条件が変われば、最も危険な部材が変わる可能性があります。