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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問3

問題・正答・学習用解説

問題

図-1のような水平荷重Pを受けるラーメンにおいて、Pを増大させたとき、そのラーメンは、図-2のような崩壊機構を示した。ラーメンの崩壊荷重Pu\displaystyle P_uの値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、柱、梁の全塑性モーメントの値は、それぞれ400kN・m、200kN・mとする。問3の図1

選択肢

  1. (1)
    225kN
  2. (2)
    300kN
  3. (3)
    375kN
  4. (4)
    500kN

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

崩壊荷重はPu=375 kN\displaystyle P_u=375\,\mathrm{kN}です。全塑性モーメントMp\displaystyle M_pは、断面全体が曲げへの抵抗を発揮し、それ以上ほとんどモーメントを増やさずに回転できる状態の値です。図2の黒丸は、この回転が集中する塑性ヒンジを表します。
梁が水平方向へ小さくδ\displaystyle \deltaだけ移動すると考えます。左柱の高さは8 m\displaystyle 8\,\mathrm{m}、右柱は2 m\displaystyle 2\,\mathrm{m}なので、柱の回転角はそれぞれδ8\displaystyle \frac{\delta}{8}、δ2\displaystyle \frac{\delta}{2}です。右の6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}は地盤の段差であり、右柱の高さではありません。梁はほぼ水平のまま移動するため、左右の柱頭側のヒンジも、それぞれの柱と同じ大きさの相対回転を生じます。
柱脚は柱の400 kN⋅m\displaystyle 400\,\mathrm{kN\cdot m}、柱頭側は弱い梁の200 kN⋅m\displaystyle 200\,\mathrm{kN\cdot m}を使います。外力の仕事と4個のヒンジが消費する仕事を等しくすると、
Puδ=(400+200)δ8+(400+200)δ2P_u\delta=\frac{(400+200)\delta}{8}+\frac{(400+200)\delta}{2}
よってPu=75+300=375 kN\displaystyle P_u=75+300=375\,\mathrm{kN}です。短い右柱は同じ水平移動でも大きく回転し、必要な仕事の多くを受け持ちます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)225 kN\displaystyle 225\,\mathrm{kN}では、水平移動δ\displaystyle \deltaに対する外力の仕事が225δ\displaystyle 225\deltaにしかならず、図2の4ヒンジに必要な375δ\displaystyle 375\deltaを満たせません。与えられた崩壊機構では、左側の柱脚と梁端に75δ\displaystyle 75\delta、右側の柱脚と梁端に300δ\displaystyle 300\deltaが必要です。柱の高さを同じにしたり、段差の6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}を右柱の高さとしたりすると別の値になります。寸法は全高8 m\displaystyle 8\,\mathrm{m}と右柱2 m\displaystyle 2\,\mathrm{m}に分けて読みます。

選択肢2

(2)300 kN\displaystyle 300\,\mathrm{kN}は、右側の2ヒンジだけを数えた400+2002\displaystyle \frac{400+200}{2}に相当します。しかし、梁全体が右へ動くと、高さ8 m\displaystyle 8\,\mathrm{m}の左柱も傾き、左柱脚と左梁端の黒丸も回転します。その仕事は(400+200)δ8=75δ\displaystyle \frac{(400+200)\delta}{8}=75\deltaで、0にはできません。回転の小さい側も含めて足すことが必要です。図の黒丸を一つずつ数え、各位置の抵抗モーメントと回転角を対応させてください。

選択肢3

(3)375 kN\displaystyle 375\,\mathrm{kN}なら、外力の仕事と、図に示された4個の塑性ヒンジの仕事が一致します。δ\displaystyle \deltaの単位をm\displaystyle \mathrm{m}にすれば、モーメントはkN⋅m\displaystyle \mathrm{kN\cdot m}、回転角は無次元なので、各ヒンジの仕事もkN⋅m\displaystyle \mathrm{kN\cdot m}となります。最後にδ\displaystyle \deltaを割るため、求める荷重の単位はkN\displaystyle \mathrm{kN}です。梁の長さ8 m\displaystyle 8\,\mathrm{m}は本問のこの水平移動機構では直接式へ現れませんが、柱高の8 m\displaystyle 8\,\mathrm{m}と混同しないように読み分けます。

選択肢4

(4)4個のヒンジすべてに柱の400 kN⋅m\displaystyle 400\,\mathrm{kN\cdot m}を用いると、
400+4008+400+4002=500 kN\frac{400+400}{8}+\frac{400+400}{2}=500\,\mathrm{kN}
になります。しかし、柱頭では接続する梁の全塑性モーメントが200 kN⋅m\displaystyle 200\,\mathrm{kN\cdot m}と小さく、梁端側が先に塑性化します。柱と梁が接する位置だからといって、一律に柱の値を使うことはできません。どの部材の断面に回転が集中するかを、両者の耐力と対応させます。

周辺知識

弾性状態の梁や柱は、曲げる力を増やすほど、元へ戻ろうとする抵抗も増えます。しかし鋼などの材料が降伏して断面全体へ広がると、抵抗モーメントはほぼ頭打ちとなり、回転が増えやすくなります。この部分を計算上のヒンジとして扱います。最初から自由に回転するピン接合とは違い、塑性ヒンジにはMp\displaystyle M_pという抵抗が残っています。
複数の塑性ヒンジができ、骨組全体が形を変え続けられる組合せになると、崩壊機構となります。その荷重を求める際には、小さな仮の動きを与え、外から入る仕事と内部で消費される仕事を比べます。水平力の仕事は力×水平移動\displaystyle \text{力}\times\text{水平移動}、ヒンジの仕事はモーメント×相対回転角\displaystyle \text{モーメント}\times\text{相対回転角}です。回転角が小さいとき、柱の水平移動は高さ×回転角\displaystyle \text{高さ}\times\text{回転角}なので、角度をδh\displaystyle \frac{\delta}{h}と置けます。
ここで使う角度はラジアンで、長さ同士の比として無次元になります。図から動き方を読み、各部の角度を一つの移動量δ\displaystyle \deltaで表せば、最後にδ\displaystyle \deltaが消えます。ただし任意に選んだ機構がいつも真の崩壊荷重を与えるとは限りません。本問では崩壊機構が図2として指定されているため、その機構の仕事のつり合いを計算しています。