学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
図のような断面積が一定で長さが3lの部材において、a、b及びcの位置における断面の図心にそれぞれ軸方向力P、P及び2Pが矢印の向きに作用するとき、「a-b間の軸力」と「cの軸方向変位」との組合せとして、正しいものは、次のうちどれか。ただし、部材は全長にわたって等質等断面の弾性部材とし、自重は無視する。また、部材の断面積をA、ヤング係数をEとする。
選択肢
- (1)
P:AE2lP - (2)
P:AE3lP - (3)
2P:AE2lP - (4)
2P:AE3lP
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正しい組合せはNab=P、δc=AE3Plです。軸方向力Nは、棒を長さ方向へ引っ張る、または押し縮める内部の力です。途中を切り、その下側に作用する力を合計すると、切断面が受け持つ力を求められます。 区間abの下には、b点の上向きPとc点の下向き2Pがあります。差し引き下向きPなので、切断面は上向きPで支え、abには引張力Pが生じます。区間bcの下には下向き2Pだけなので、bcの引張力は2Pです。一方、固定端からaまでの区間では、下側の上向きP+Pと下向き2Pがつり合い、軸方向力は0です。 長さlの棒の伸びはAENlです。したがって、c点の下がり量は上から各区間の伸びを足して δc=0+AEPl+AE2Pl=AE3Pl となります。力の合計が0でも、途中の区間には引張力があり、棒全体は伸びます。固定端の反力が0であることと、c点が動かないことは同じ意味ではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)Nab=Pは正しい値です。しかし、δc=AE2Plはbcだけの伸びに相当し、abの伸びAEPlを落としています。c点はbcの下端なので、bc自身が伸びるだけでなく、その上端bがabの伸びによって下がった分も一緒に移動します。上からつながった棒の端の変位は、各区間の伸び縮みを符号付きで合計して求めます。本問ではabもbcも引張りなので、二つを足します。 選択肢2
(2)abの引張力Pと、c点の下向き変位AE3Plが両方正しい組合せです。途中の位置も確認すると、固定端からaまでは伸びないのでaの変位は0、bはAEPl下がり、cはそこからさらにAE2Pl下がります。荷重点ごとに軸方向力が変化するため、一本の棒全体に一様なPや2Pが作用していると扱わないことが大切です。区間別の力と変形を対応させます。 選択肢3
(3)2Pは区間bcの軸方向力であり、区間abの値ではありません。abを切る場合には、c点の下向き2Pに加えて、b点の上向きPも下側の部分へ作用しています。この上向き荷重を含めると差はPです。また、c点の変位はbcだけの伸びではなくabの伸びも含むため、AE2Plにはなりません。切断する位置と、変位を求める位置をそれぞれ図で確かめる必要があります。 選択肢4
(4)c点の変位AE3Plは正しいものの、Nab=2Pではab部分の力のつり合いに反します。もしabが下側の部分を上向き2Pで引くと、bの上向きPもあるため、上向き合計3Pと下向き2Pが一致しません。また、その誤った軸力を伸びの式へ入れると、abとbcの伸びの合計はAE4Plとなり、この選択肢内でも整合しなくなります。 周辺知識
棒の伸びの式は、応力度とひずみから組み立てられます。応力度σ=ANは、断面の単位面積あたりが受け持つ力です。たとえば同じ力で引いても、細い棒ほど各部分への負担が大きくなります。ひずみε=lΔlは、元の長さに対する伸びの割合です。弾性範囲ではσ=Eεという比例関係があり、これらをつなぐとΔl=AENlが得られます。 式から、力が2倍なら伸びも2倍、長さが2倍なら伸びも2倍、面積やヤング係数が2倍なら伸びは半分と分かります。力をN、長さをmm、面積をmm2、ヤング係数をN/mm2にそろえると、伸びの単位はmmです。単位が混ざったまま代入しないようにします。 本問のように途中に荷重がある場合、軸方向力は区間ごとに異なります。最初に力のつり合いで各区間のNを求め、次に各区間の変形を求め、最後に足すという順序です。圧縮の区間があれば、その縮みは引張りによる伸びと反対の符号で足します。全体の外力の合計だけでは、内部の力の分布や変形は分かりません。