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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問1

問題・正答・学習用解説

問題

図のような集中荷重Pを受ける梁A及びBの荷重点に生じるたわみδAとδBとの比として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、梁A及びBは同一断面で、全長にわたって等質等断面の弾性部材とし、自重は無視する。問1の図1
δA\displaystyle \delta_AδB\displaystyle \delta_B
1.41
2.81
3.161
4.321

選択肢

  1. (1)
    4:1
  2. (2)
    8:1
  3. (3)
    16:1
  4. (4)
    32:1

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

たわみの比はδA:δB=16:1\displaystyle \delta_A:\delta_B=16:1です。たわみは、荷重によって梁が元の位置から下がる量です。Aは左端の位置と回転を止めた片持梁、Bは両端で上下移動を止め、回転は許す単純支持梁です。どちらも全長はl\displaystyle lで、Bの中央荷重から支点までがl2\displaystyle \frac{l}{2}です。
材料の曲がりにくさを表すヤング係数をE\displaystyle E、断面の形による曲がりにくさを表す断面二次モーメントをI\displaystyle Iとします。先端集中荷重を受ける片持梁はδA=Pl33EI\displaystyle \delta_A=\frac{Pl^3}{3EI}、中央集中荷重を受ける単純支持梁はδB=Pl348EI\displaystyle \delta_B=\frac{Pl^3}{48EI}。共通のPl3EI\displaystyle \frac{Pl^3}{EI}を消すと、次のとおりです。
(13):(148)=16:1(\frac{1}{3}):(\frac{1}{48})=16:1
係数の違いは、支え方による曲げモーメントの違いから生まれます。Aの最大値は固定端のPl\displaystyle Pl、Bの反力は左右P2\displaystyle \frac{P}{2}ずつなので中央の最大値は、次のとおりです。
(P2)(l2)=Pl4(\frac{P}{2})(\frac{l}{2})=\frac{Pl}{4}
両者の曲げモーメントは三角形状に分布し、蓄えられる曲げのエネルギーはその値の2乗に比例するため、同じP\displaystyle Pに対するたわみは42=16\displaystyle 4^2=16倍違います。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)最大曲げモーメントの比ならPl:(Pl4)=4:1\displaystyle Pl:(\frac{Pl}{4})=4:1です。しかし、たわみは一か所の曲げモーメントだけでは決まりません。梁全体で生じた曲がりの積み重ねを、荷重点の移動として評価する必要があります。本問では曲げのエネルギーがモーメントの2乗に比例することまで考えると16倍です。曲げ応力度の比較と、変形量の比較とでは、同じ図を使っていても求める量が違います。

選択肢2

(2)AとBはどちらも全長l\displaystyle lであり、Bの長さを単純にl2\displaystyle \frac{l}{2}へ置き換えて片持梁の式を使うことはできません。Bの中央は対称性によって傾きが0になりますが、そこで上下位置が固定されているわけではないからです。正しい単純支持梁の式を使うと、BのたわみはAの116\displaystyle \frac{1}{16}になります。8:1\displaystyle 8:1ではBのたわみを実際の2倍に評価しており、支点と中央の変形条件を満たす解にはなりません。

選択肢3

(3)16:1\displaystyle 16:1なら、片持梁の係数13\displaystyle \frac{1}{3}と、中央荷重を受ける単純支持梁の係数148\displaystyle \frac{1}{48}の両方と一致します。どちらの式も力P\displaystyle Pと長さの3乗に比例し、曲げ剛性EI\displaystyle EIに反比例するため、同じ材料・断面・全長・荷重という条件で比を取ると係数だけが残ります。単位も両方とも長さです。Aが大きくたわむという図からの見通しと、16倍という計算結果を結び付けましょう。

選択肢4

(4)32:1\displaystyle 32:1は正しい比の2倍です。Bを中央で左右に分けて考えるときには、左右の変形エネルギーを両方加える必要がありますが、中央の荷重P\displaystyle Pがする仕事を二重に数えるわけではありません。Bには中央という一つの荷重点があり、その下がり量も一つです。P2\displaystyle \frac{P}{2}という支点反力と、P\displaystyle Pという中央荷重の役割を分けて扱うと、余分な2倍を入れずにδB=Pl348EI\displaystyle \delta_B=\frac{Pl^3}{48EI}へつながります。

周辺知識

曲げの式を理解するために、「力をゆっくり増やして梁をたわませる」と考えます。最初は力もたわみも0で、弾性範囲では力に比例してたわみます。最終的な力がP\displaystyle P、たわみがδ\displaystyle \deltaなら、途中の平均的な力はP2\displaystyle \frac{P}{2}なので、外から与えた仕事はPδ2\displaystyle \frac{P\delta}{2}です。これが梁の内部に、元へ戻ろうとするエネルギーとして蓄えられます。
長さdx\displaystyle dxの小部分に曲げモーメントM\displaystyle Mが作用すると、そのエネルギーはM2dx2EI\displaystyle \frac{M^2dx}{2EI}です。積分は、この小部分を梁全体で足す記号です。AではM\displaystyle Mが0からPl\displaystyle Plまで直線的に変わります。直線的に変わる量の2乗の平均は最大値の2乗の3分の1なので、全体のエネルギーはP2l36EI\displaystyle \frac{P^2l^3}{6EI}。これをPδA2\displaystyle \frac{P\delta_A}{2}と等しくすると片持梁の式が得られます。
Bも左右の三角形を合わせた全長はl\displaystyle lで、最大値だけがPl4\displaystyle \frac{Pl}{4}です。そのためエネルギーはAの116\displaystyle \frac{1}{16}になります。式を暗記するときも、荷重位置・全長・支点の回転条件を一緒に記憶すると、別の梁へ誤用するのを防げます。