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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問16

問題・正答・学習用解説

問題

病院及び保育所の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    急性期病院において、病棟部門に比べ、医療機器の更新や機能拡充が必要な診療部門には、隣接したところに増築が可能な空地を確保した。
  2. (2)
    病院の感染症病室において、廊下に対して室内を陽圧に保ち、外部の汚染空気を室内には流入させずに無菌に近い状態が確保できるようにした。
  3. (3)
    保育所において、それぞれの子どもの生活リズムを尊重するため、食事のための空間は保育室と分けて計画した。
  4. (4)
    保育所において、子どもがトイレに行くのが間に合わずに失敗することを減らすために、保育室間ごとにトイレを設置した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。感染源となる空気を病室の外へ漏らさないための感染症病室では、一般に室内を廊下より低い圧力、すなわち陰圧に保ちます。空気は圧力の高い側から低い側へ流れるため、廊下から病室へ向かう流れをつくれば、病室内の空気が周囲へ流出することを抑えられます。設問の陽圧では、病室から廊下へ空気が流れやすくなり、目的と逆です。
陽圧にするのは、周囲の空気から室内の患者を守る必要がある無菌治療室などの考え方です。清浄な空気を供給し、外から汚染空気が入りにくくします。「室内の感染源を外へ出さない」と「外の汚染を室内へ入れない」は、守る側が逆なので、必要な空気の向きも逆になります。
実際の感染対策は感染経路に応じて行い、全ての感染症に陰圧室が一律に必要という意味ではありません。また、陰圧にするだけで完結せず、換気、排気の処理、扉の運用等を組み合わせます。本問は、感染性の空気を封じ込める病室と、患者を外部から保護する部屋の目的の違いを判断する問題です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。急性期病院では、画像診断装置などの医療機器の更新や、新たな診療機能への対応が比較的頻繁に起こります。診療部門に隣接して増築できる空地を確保すれば、機能を拡充しやすくなります。ただし空地があるだけでは十分ではなく、既存部門との接続、搬入経路、設備容量等も検討します。病棟を通り抜けて機器を運ぶような計画を避け、病院を使い続けながら更新できる余地を用意することが重要です。

選択肢2

(2)不適当です。空気感染等の感染源を周囲へ漏らさない病室は、廊下より陰圧とするのが基本です。陽圧にすると室内の空気が外へ出やすくなるため、感染の拡散防止という目的に反します。無菌治療室等のように外の汚染から患者を保護する場合には、清浄空気を供給して陽圧を保つ考え方を使います。病室という名称だけで決めず、「どちら側をどちらから守るか」を確認して、空気の流れる矢印を描くと整理できます。

選択肢3

(3)適当です。保育では、同じ年齢でも空腹になる時刻や眠くなる時刻が完全にはそろいません。食事の場所を保育室と分けると、食べ終わった子ども、遊ぶ子ども、休む子どもを一斉に移動させずに対応しやすくなります。また、食事の準備・片付けのために遊びを中断することを減らせます。分けた空間の間を職員が見守れることや、安全な移動、衛生的な配膳の経路も合わせて計画する必要があります。

選択肢4

(4)適当です。幼い子どもは、排泄のタイミングを予測したり、長い距離を我慢して移動したりすることが難しい場合があります。保育室の近くへトイレを分散配置すれば、間に合わず失敗することを減らし、自分で行こうとする行動も支えます。職員が付き添う時間や保育室を離れる負担も抑えられます。ただし近ければよいだけでなく、臭い、清掃、手洗い、見守りとプライバシーを両立する配置を検討します。

周辺知識

病院と保育所に共通するのは、利用者の状態に応じて環境を調整することです。病院では、患者の病状や感染経路によって必要な空気環境が異なります。保育所では、子ども一人ひとりの発達や生活リズムによって、食事、睡眠、排泄のタイミングが異なります。建物の管理がしやすいという理由だけで、全員へ同じ動き方を求めないことが重要です。
圧力の正負は、基準となる相手との比較です。陰圧室は「空気がない部屋」ではなく、廊下等より少し圧力が低い部屋です。排気と給気のバランス等を調整して、必要な向きの空気の流れをつくります。扉を開けたままにすればその関係は保ちにくくなるため、建築設備と実際の運用の両方が必要です。
また、施設は完成時の使い方のままではありません。医療技術が変われば診療室の設備が変わり、保育の活動も状況に応じて変わります。増築の余地、動線の短さ、活動を分けられる場所などを確保し、利用者の負担を増やさず変化へ対応できる計画を考えます。