学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
公立小学校・中学校等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。小学校の児童が使用する、両側に居室がある廊下には、建築基準法施行令により2.3m以上の幅が必要です。移動等円滑化誘導基準の1.8mを満たすだけでは、別に適用される学校の廊下幅の基準を満たしません。設問の1.8mは、必要な2.3mより0.5m不足します。
複数の基準が適用される場合、好きな一つを選ぶのではなく、全てを満たす必要があります。バリアフリーに関する幅は、車椅子のすれ違い等を考える一方、学校の廊下幅は、多数の児童生徒が教室から同時に出入りする状況も踏まえています。廊下の両側に教室等があれば、両方から人が合流するため、一方側だけに居室がある場合と条件が違います。
公立図書館と一体に整備されても、小学校として使う廊下の条件がなくなるわけではありません。他の選択肢は、教職員の連携、聴覚障害のある児童生徒の学習への配慮、木質化に伴う音環境の調整として適切です。学校の計画では、学びやすさをつくる工夫と、安全を守る基準を合わせて確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。施設一体型の義務教育学校では、小学校段階と中学校段階の教育をつなげることが重要です。共同の職員室を設けると、教職員が日常的に相談し、児童生徒の状況や学習上の課題を共有しやすくなります。会議のときだけ顔を合わせる場合より、段階をまたぐ連携を支えられます。ただし単に大きな部屋へ机を集めるのでなく、打合せ、個別相談、事務作業の場所を確保し、情報の扱いにも配慮する必要があります。
選択肢2
(2)適当です。聴覚障害のある児童生徒の発音・発語の学習では、口の形や動きを鏡で見て確かめることが役立つ場合があります。流し台は、練習後の手洗いやうがい等の衛生に対応します。必要な設備を教室内や周辺で使えるようにすることで、学習活動を続けやすくなります。ただし全員に同じ練習方法を強いるという意味ではありません。一人ひとりの学習方法やコミュニケーション手段に合わせて環境を整えます。
選択肢3
(3)不適当です。小学校の児童用で両側に居室がある廊下は、2.3m以上が必要です。1.8mという値をバリアフリーの誘導基準から選んでも、学校の廊下に適用される別の基準を下回ることはできません。条件の異なる数値を混ぜないよう、用途、利用者、両側居室かどうかを確認します。図書館との複合化により来館者も加わるため、必要幅の確保に加え、児童の動線と一般利用者の動線、管理範囲も整理します。
選択肢4
(4)適当です。木の表面は温かみのある印象を与えますが、通常の平滑な木板そのものは音を多く吸収する材料ではありません。教室を反射の多い面で囲むと、声が長く残って次の言葉と重なり、聞き取りにくくなることがあります。孔あき板と背後の空気層や吸音材等を適切に組み合わせれば、木質の表情を保ちながら吸音を確保できます。穴の形や背後の構成によって効果は変わるため、見た目だけでなく音響性能を確認します。
周辺知識
学校は、一人の使いやすさと、多人数が同時に使う状況を両方考える建物です。授業の終わりには多くの児童生徒が廊下へ出ます。図書館等との複合施設では、一般来館者が別の時間帯にも出入りします。通行幅だけでなく、合流点、出入口、見守り、学校部分を閉じる管理の仕方まで計画します。
音環境も学習のしやすさへ直接影響します。残響は、声を出すのを止めた後も、反射によって音が室内に残ることです。音が長く残りすぎると、先生の次の言葉と前の言葉が重なります。聴覚に困難のある児童生徒にとっては特に負担になり得るため、吸音、騒音の低減、視覚的な情報などを組み合わせます。
木質化は材料の印象だけで評価せず、清掃、安全、耐久性、音の反射等を確認します。同様に、鏡や流し台も設けただけで終わらず、必要な動作空間や位置を考えます。法令上の最低条件を守ったうえで、教育内容と利用者の違いに合う場所をつくることが、学校計画の基本です。