学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
事務所ビルの計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。ディスプレイは、それ自体が文字や図の明るさをつくる表示装置です。紙のように外から強く照らせば見やすくなるとは限りません。画面に照明や窓が映り込むと、文字と背景の明暗差が分かりにくくなり、まぶしさも生じます。そのため、画面に相当する鉛直面の照度を机上の水平面より高くすることを、見やすさのための基本方針とするのは不適当です。
水平面照度は机の上のような面に届く光の量、鉛直面照度は垂直に立つ面に届く光の量です。机上の書類やキーボードには必要な明るさを確保しながら、画面への不要な入射光や光源の映り込みを抑えます。例えば照明器具の位置を変え、窓にブラインドを設け、ディスプレイの向きを調整する方法があります。
画面だけを明るくして周囲を真っ暗にするとよい、という意味でもありません。画面と周辺の極端な明暗差も目の負担になります。画面の設定、机上の作業、周囲の明るさを合わせ、反射やまぶしさの少ない視環境をつくります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。センターコアは、階段、エレベーター、便所、設備スペース等を平面の中央へまとめる形式です。の大きな基準階では、中央に共用機能をまとめ、外周にまとまった執務空間を確保しやすくなります。フレキシビリティは、入居者や仕事の変化に応じて使い方を変えやすいことです。コアの周囲を分割して利用する計画にも対応しやすくなりますが、避難経路や執務空間の奥行き等は別途確認する必要があります。
選択肢2
(2)適当です。ABWは、作業内容に応じて働く場所を選ぶ考え方です。一人で集中する仕事、複数人で話す仕事、オンライン会議などは必要な音環境や設備が異なります。したがって、席を固定しないだけでなく、集中席、小会議室、協働の場所等を用意することが重要です。事務所外の場所も含めて選択できる働き方であり、全員を毎日同じ開放的な空間へ集めることとは違います。運用や情報管理と空間計画を合わせます。
選択肢3
(3)適当です。一つしかない直通階段が火や煙で使えなくなると、上階の人が取り残されるおそれがあります。階段から離れた位置に退避区画を設け、火や煙から一時的に身を守り、外部から救出できる開口を確保することは安全性の改善に役立ちます。ただし単に窓のある部屋を設ければ十分ではありません。区画の性能、収容人数、外部からの救出条件等を確認します。また、適用される法令上の階段設置義務をこれだけで免除するものではありません。
選択肢4
(4)不適当です。画面へ強く光を当てると、表面反射や映り込みによって表示が見えにくくなることがあります。紙は照らして読むものですが、ディスプレイは自ら表示の明暗をつくるため、同じ方法で扱えません。鉛直面照度を水平面より高くするのでなく、机上に必要な明るさを確保しつつ画面へ不要な光を入れない計画が基本です。照明、窓、画面、視線の位置関係を調整し、文字と背景のコントラストを保ちます。
周辺知識
事務所計画では、効率を床面積だけで評価しないことが大切です。同じ面積でも、集中できない、会話の場所がない、画面が見えにくい、避難しにくい場合は、働く環境として十分ではありません。共用機能をまとめるコアの配置、業務に合う場所の種類、光と音、非常時の安全を同時に整えます。
照度は面に届く光の量で、単位はlxです。一方、人が見て感じる面の明るさには、反射率や画面自体の発光が関係します。したがって照度を大きくすれば、必ず読みやすさが向上するわけではありません。黒い画面に窓が白く映ると文字が見にくい経験を思い浮かべると、位置関係の重要性が分かります。
ABWを導入する場合は、利用者が作業に適した場所を実際に選べる必要があります。静かな席が常に不足する、会議の声が集中席へ届く、といった状態では目的を達成しません。また、可変的な家具配置でも、避難経路や退避区画への経路をふさがないことが必要です。日常の自由度と非常時の分かりやすさを両立させる計画を考えます。