学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
高層の分譲集合住宅の新築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。長期修繕計画は、30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上を設定します。設問は30年間としている点だけなら期間の条件に合いますが、その間の大規模修繕工事を1回だけとしているため不適当です。期間の長さと工事を含む回数の両方を確認します。
マンションでは、外壁、防水、設備などがそれぞれの速度で劣化します。最初の大規模修繕だけを見込むと、二回目の工事や設備の更新が近づいたとき、修繕積立金が不足するおそれがあります。例えば説明用に12年目と24年目に大規模修繕を見込む計画なら、30年間に二回入ります。一方、工事周期を長く設定する場合は、二回分が入るよう計画期間自体を延ばす必要があります。12年という数字は例であり、全ての建物へ一律に適用する周期ではありません。
計画は、工事費だけでなく調査・診断や積立金も関連させ、必要な費用を長期に準備するためのものです。未来の工事内容が完全に確定するという意味ではなく、実際の劣化や費用の変化を踏まえて見直します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。分譲集合住宅では同じ時期に入居が始まるため、住戸の広さや価格帯が一様だと、家族構成や年齢層も偏ることがあります。多様な住戸平面を用意し、保育所や高齢者の通所施設を低層部に設けることは、異なる世代の生活を支える計画です。ただし平面を変えるだけで人口構成を完全に決められるわけではありません。地域の需要、施設の運営、出入口の安全や住宅部分との管理区分も合わせて検討します。
選択肢2
(2)適当です。受変電設備や非常用発電機が浸水すると、住戸が高層階にあってもエレベーター、給水ポンプ等が止まり、生活を続けにくくなります。浸水想定1.5mという敷地条件を踏まえ、水の侵入を防ぐ境界を設定し、重要設備を屋上等の低リスクの位置へ置くことは有効です。ただしハザードマップの想定値を絶対に超えない水位と考えてはいけません。扉、配管等の侵入口や設備へ至る電源系統も含めて対策を検討します。
選択肢3
(3)不適当です。30年以上という期間と、大規模修繕工事2回を含む期間以上という条件を同時に満たす必要があります。30年の数字だけを合わせ、一回の工事しか計上しないと、将来必要な費用を過小に見込むおそれがあります。修繕積立金は毎月の負担と将来の支出をつなぐものなので、工事の周期と金額を長期に整理します。工事周期を延ばす場合も、二回分を見込まなくてよいという意味にはなりません。
選択肢4
(4)適当です。長期優良住宅では、長く使える構造に加え、生活の変化へ対応する可変性も重要です。躯体天井高さは、構造体として確保される上下の空間で、仕上げ後に見える天井高さとは区別します。構造体の間に余裕があれば、床下や天井内の配管等を調整し、間取りを変えやすくなります。ただし高さだけで自由に変更できるわけではなく、耐力壁、配管の経路、共用部分との関係等も考慮して措置を講じます。
周辺知識
マンションは、購入時の住戸だけでなく、共用部分を住民が長期間維持する仕組みまで含めて考える必要があります。廊下、外壁、屋根、エレベーター、給排水設備等の修繕は、各住戸が別々に決めて実施できるものではありません。長期修繕計画によって時期と費用を見通し、修繕積立金を準備し、調査結果に基づいて合意形成します。
「長持ちする材料を使う」と「修繕が不要になる」は同じではありません。耐久性のある材料でも、接合部や設備機器には点検・更新が必要です。劣化が軽い段階で対応する方が、大きな損傷になるまで待つより負担を抑えられる場合もあります。ただし、必要な工事は実際の調査に基づいて判断します。
高層住宅では、住戸の高さだけで災害への強さを判断できません。低い位置の電気設備が被災すると、建物全体が影響を受けます。また、長期間の居住では、子どもの成長や高齢化で必要な間取りと地域施設が変わります。災害時の機能継続、将来の変更、修繕資金を一体に計画することが、長く住み続けられる住宅を支えます。