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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

住宅の作品名(設計者、建設地)とその特徴に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    バラガン自邸(ルイス・バラガン、メキシコ)は、庭と分かち難く結びついた内部空間をもち、居間の奥には庭に面して大きな窓を設け、積極的に外部を内部に取り込んだ住宅である。
  2. (2)
    夏の家(E.G.アスプルンド、スウェーデン)は、切妻屋根の2 棟が組み合わさった形状であり、主棟に対し、居間棟をずらして配置することで、主棟にあるホール(食堂)からも海を見渡せるようにした住宅である。
  3. (3)
    ガラスの家(フィリップ・ジョンソン、アメリカ)は、南北全面を半透明のガラスブロック壁とし、間仕切り壁にガラスやパンチングメタルを使うことで、内部まで明るい一塊の空間とした住宅である。
  4. (4)
    バワ自邸[Number11](ジェフリー・バワ、スリランカ)は、4 軒長屋を改造・改築することにより、路地を長い回廊に置き換え、アプローチから建築物の深部に至るまでに坪庭が随所に設けられた住宅である。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。フィリップ・ジョンソンのアメリカの「ガラスの家」は、透明なガラスを周囲に用い、室内から外の風景を広く見渡せる住宅です。南北を半透明のガラスブロック壁とする設問の説明は、ピエール・シャローらによるパリの「ガラスの家」に対応します。同じ日本語名で呼ばれる別の住宅を取り違えています。
透明な板ガラスは、光とともに景色や視線を通します。これに対し、半透明のガラスブロックは光を拡散して通し、向こう側の像をはっきり見せにくくします。どちらもガラスを使うので明るい空間をつくれますが、外部とのつながり方が異なります。ジョンソンの住宅は周囲の風景を見るための建物として理解すると、透明な外周という特徴を思い出せます。
他の住宅も、外部を取り込む方法が違います。バラガン自邸は庭へ向く大きな窓、アスプルンドの夏の家は眺望を得る棟のずらし、バワ自邸は奥へ進む回廊と点在する小さな庭です。「外へ開く」という共通語で済ませず、どこにどんな開口や空間を置いたかを対応させて読みます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。バラガン自邸では、居間の大きな窓を通じて庭の緑が内部の空間体験に深く関わります。ただし街路側へ同じように全面開放しているわけではなく、外部との関係を場所ごとに選んでいます。庭に向かう視線を大きく開き、街路からの視線等は抑えることで、落ち着いた内部空間をつくります。窓を外観の模様としてだけでなく、室内で何を見て過ごすかから計画した住宅として理解できます。

選択肢2

(2)適当です。アスプルンドの夏の家は、切妻屋根をもつ二つの棟を組み合わせ、主棟と居間棟の位置をずらしています。棟を一直線にそろえると、手前の部屋や壁が奥の部屋からの眺めを遮ることがあります。ずらすことで、主棟のホール、すなわち食堂からも海への視線を確保します。部屋の面積を増やすだけでなく、位置関係を変えて外部の景観を共有する工夫です。平面上で視線がどこを通るかを考えると特徴が分かります。

選択肢3

(3)不適当です。ジョンソンのガラスの家は、透明なガラスの外周によって周囲の風景とつながる住宅です。半透明のガラスブロックやガラス・パンチングメタル等の間仕切りの説明は、シャローらのパリのガラスの家に対応します。ガラスブロックは光を通しながら視線を調整するため、透明な外周とは空間の性格が異なります。作品名だけでなく、ジョンソン・アメリカ・透明、シャロー・フランス・ガラスブロックという対応で区別します。

選択肢4

(4)適当です。バワのNumber11は、四軒の長屋を段階的に取り込んで改造・改築した住宅です。奥へ続く回廊と、空へ開く小さな庭を組み合わせることで、密集した敷地の深部にも光や外部の気配を届けます。広い庭を建物の外側へ一つ置く方法とは異なり、小さな外部空間を内部の移動に沿って分散させる構成です。歩くにつれて狭い場所と広い場所、明るい場所等が変化し、奥行きのある住空間をつくっています。

周辺知識

住宅の「内と外のつながり」には、視線、光、風、人の出入りという別々の要素があります。透明な窓は視線を通しても、閉めていれば人や風は通しません。半透明のガラスは光を通しながら像をぼかします。中庭は建物の奥に外部をつくり、棟をずらす配置は別の部屋からの視線を通します。外部を取り込むという言葉を、具体的な働きに分解して考えます。
バラガン自邸とジョンソンの住宅はどちらも庭や風景が重要ですが、その囲い方は同じではありません。外部に向かう範囲を絞る方法と、透明な外周で広く景色を見せる方法があります。また、バワ自邸のように街路から奥へ深い敷地では、外周の窓だけに頼らず、庭や上方からの光が大きな役割をもちます。
実例問題では、名前の似た作品や同じ材料を使う作品が混同されやすくなります。作品名、設計者、所在地を確認したうえで、「窓は透明か」「庭は外側か内部か」「部屋や棟がどう並ぶか」を思い出します。写真の印象だけでなく、人が座った位置や歩く経路から景色がどう見えるかまで想像すると、平面の工夫を理解できます。