学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
交通の面からみた都市計画に関する用語の説明として、最も不適当なものは、次のうちどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。自動車利用者に出発時間、経路、交通手段等の変更を促して混雑を緩和する手法は、TDM、すなわち交通需要マネジメントです。MaaSは、複数の交通手段を組み合わせ、移動の検索・予約・決済等を一括して利用できるサービスの考え方です。設問は、利用者の交通行動を調整するTDMの説明をMaaSとしているため不適当です。
例えば、朝の混雑を減らすため出勤時刻をずらす、車から鉄道へ切り替える、といった取組みはTDMです。一方、自宅から駅までのバス、鉄道、目的地近くの移動手段を一つのサービスで調べ、必要な予約や支払いをまとめるのがMaaSの例です。MaaSによって公共交通が使いやすくなり、結果として混雑緩和につながることはありますが、それは両者の定義が同じという意味ではありません。
残る用語は、TODが公共交通を中心にした街のつくり方、ITSが情報通信技術を使った交通支援、LRTが利用しやすい軌道交通です。略語を文字だけで覚えず、都市の配置、利用サービス、情報技術、車両と軌道という対象の違いを押さえます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。設問の内容はTDMです。渋滞は、道路の能力に対して同じ時刻に利用が集中すると発生しやすいため、時間や手段などの変更で需要を調整します。MaaSは、移動手段を利用者の目的に合わせて組み合わせ、検索・予約・決済等をまとめるサービスです。旅行で鉄道とバスを別々に調べる手間を減らす場面を考えると理解できます。混雑緩和への効果が重なる場合でも、中心となる仕組みは区別します。
選択肢2
(2)適当です。TODは、鉄道駅等の公共交通の拠点を中心に、住居、仕事、商業などを利用しやすく配置する都市開発です。駅から歩きやすい範囲に目的地があれば、移動のたびに自動車を使う必要を減らせます。ただ駅前に高い建物を建てるだけではなく、歩行経路、土地利用の組合せ、交通サービスを整えることが重要です。自動車を全面禁止する意味ではなく、公共交通を生活の基本的な選択肢にできる街を目指します。
選択肢3
(3)適当です。ITSは、情報通信技術によって交通の安全性や効率を高めるシステムです。道路や車両から交通状況を把握して利用者へ伝える、料金所の通過を円滑にする、運転を支援するなどの仕組みが関係します。交通量の変化を情報として把握できれば、適切な案内や制御につなげられます。道路を広げる工事そのものとは異なり、情報を集め、伝え、利用することで既存の交通システムを改善する考え方です。
選択肢4
(4)適当です。LRTは、車両と軌道・停留所を改善し、乗り降りや移動のしやすさを高めた軌道交通です。低床の車両は大きな段差を減らし、車椅子使用者やベビーカーを伴う人にも利用しやすくなります。定時性や速達性を確保するには、車両を新しくするだけでなく、軌道の扱い、交差点、停留所なども整える必要があります。単なる軽い車両の名称ではなく、交通システム全体としての改善を表しています。
周辺知識
交通の問題は、道路だけを見ても解決できません。住居と職場が遠く離れ、公共交通の乗継ぎが不便であれば、自動車利用が増えやすくなります。そこで街の配置を公共交通に合わせるTOD、利用する手続きをつなぐMaaS、混雑する時間帯の需要を調整するTDMなどを組み合わせます。それぞれが異なる段階の不便に対応しています。
学校への通学で考えると、駅から学校まで安全に歩ける街の構成はTODに関係します。鉄道とバスの時刻や運賃を一括して調べられる仕組みはMaaSに関係します。登校時刻をずらして混雑を分散する取組みはTDMの考え方です。情報通信を使って交通状況を把握・案内するのはITS、乗り降りしやすい新しい路面電車のシステムはLRTです。
これらは一つだけを選ぶ競争相手ではなく、同じ都市で併用できます。略語を覚える際には、具体的な利用場面を一つ対応させると、似た説明を見分けやすくなります。特に「便利になる」「渋滞が減る」という結果だけで分類せず、その結果を生む仕組みに注目しましょう。