資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問8

問題・正答・学習用解説

問題

建築物に関する各部の寸法等の記述のうち、最も不適当なものは、次のうちどれか。

選択肢

  1. (1)
    地下駐車場の自動車の車路において、傾斜部の本勾配を18\displaystyle \dfrac{1}{8}とし、傾斜部の始まりと終わりのそれぞれに設けた長さ4mの緩和勾配を116\displaystyle \dfrac{1}{16}とした。
  2. (2)
    高等学校の配置計画において、400 mトラックを設けるための運動場の寸法を、120 m × 190 mとした。
  3. (3)
    ユニット型の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)において、トイレを除いた定員1 人の居室の内法寸法を、2.7 m × 3.6 mとした。
  4. (4)
    サービス付き高齢者向け住宅において、2階以上の階に設けるバルコニーには、床仕上げ面からコンクリート躯体の立上りを80 mm設けた上に、高さ1,200 mmの金属製手すりを設置し、手すり子間の内法寸法を100 mmとした。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。居室の内法寸法は、壁の内側から内側までの、実際に使える寸法です。本問の一人用居室の面積は、長方形なので縦と横を掛け、2.7×3.6=9.72 m2\displaystyle 2.7\times3.6=9.72\,\mathrm{m^2}と求めます。ユニット型特別養護老人ホームの一人用居室に求められる10.65 m2\displaystyle 10.65\,\mathrm{m^2}以上に足りません。トイレを除いた寸法という条件なので、便所の面積を足して不足を埋めることもできません。
不足面積は10.65−9.72=0.93 m2\displaystyle 10.65-9.72=0.93\,\mathrm{m^2}です。仮に短辺を2.7mのままにすれば、必要な長辺は10.652.7≈3.945 m\displaystyle \frac{10.65}{2.7}\approx3.945\,\mathrm mです。したがって、長辺3.6mのままでは不十分です。ただし、面積の基準を満たすだけで使いやすい居室になるわけではありません。ベッド、家具、車椅子、介助者の動作に必要な空間も確認します。
他の選択肢では、車路勾配の切替え、トラックの配置余地、手すりの高さと隙間をそれぞれ確認します。長さ、勾配、面積という異なる量を混同せず、設問がどの使い方を成立させようとしているかと結び付ける問題です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。勾配18\displaystyle \frac{1}{8}は、水平に8進むと高さが1変わる傾きで、百分率では12.5%です。緩和勾配116\displaystyle \frac{1}{16}は6.25%で、本勾配より緩くなっています。平らな車路から急に傾斜すると、車体の底部や前後が路面へ接触するおそれがあります。始まりと終わりに各4mの緩い部分を設けることで、車体の傾きの変化を和らげます。分母が大きいほど急なのではなく、同じ高さを変えるのに長い距離を使うため緩やかになります。

選択肢2

(2)適当です。400mトラックは、長方形の外周を走るのでなく、二つの直線と二つの曲線を組み合わせた周回路です。運動場には周回路の幅、内側のフィールド、外側の安全余地なども必要です。120 m×190 m\displaystyle 120\,\mathrm{m}\times190\,\mathrm{m}という寸法は、そのような400mトラックを配置する計画として適切です。単に運動場の周長が400m以上かを計算するのではありません。競走路の形とレーン幅、周辺での活動まで含めて収まるかを確認します。

選択肢3

(3)不適当です。2.7×3.6=9.72 m2\displaystyle 2.7\times3.6=9.72\,\mathrm{m^2}であり、一人用居室の基準10.65 m2\displaystyle 10.65\,\mathrm{m^2}以上を下回ります。内法寸法は壁の厚さを含めない寸法で、さらに本問はトイレを除いているため、計算対象は居室そのものです。居室はベッドを置けるだけでなく、車椅子や介助者が動き、本人の家具等も置いて生活する場所です。近い数字だからよいとせず、掛け算の結果を基準と比較して不足を判断します。

選択肢4

(4)適当です。80mmの立上りの上に1,200mmの手すりを設けるので、床から上端までは1,280mmです。立上りが低い場合に必要な床面から1,100mm以上という高さを確保できます。手すり子の内法100mmも、隙間110mm以下という転落防止上の基準に対応します。高さだけでなく、身体が抜ける隙間や足掛かりの位置を確認することが重要です。近くに踏み台となる家具等を置けば危険になるため、利用時の配置にも配慮します。

周辺知識

寸法問題では、最初に「どこからどこまで測るか」を確認します。内法は壁や枠の内側、壁芯は壁の中心線です。同じ図面上の数値でも、測り方が違えば実際に使える広さが変わります。居室面積、扉の有効幅、手すりの高さは、それぞれ指定された測定位置で判断します。トイレを含むか除くかも、面積の比較に直接影響します。
次に単位を確認します。mとmを掛けるとm2\displaystyle \mathrm{m^2}、勾配は高さを水平距離で割った比なので単位がありません。18\displaystyle \frac{1}{8}は0.125、すなわち12.5%です。「8度」という角度ではありません。車路では勾配そのものと、平坦部からの切替え方の両方が車体の接触に影響します。
基準値は設計の出発点です。面積が同じでも細長すぎる部屋では車椅子が回転できないことがあり、手すりが十分高くても足を掛けやすい物がそばにあれば転落の危険が増えます。数値の適否を確かめたうえで、ベッドから移る、車で通る、身体を支えるという実際の動作へ戻して考えることが大切です。