学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
各種建築物のゾーニング計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。ICUは集中治療室で、呼吸や循環などの状態が不安定な重症患者に対し、継続的な観察と高度な治療を行う場所です。手術直後の重症患者の受入れや緊急対応が必要なため、手術部や救急部などと近接し、患者や医療機器を迅速に移動できることが重要です。「出入りが多いから手術部から離す」という計画は、必要な医療上の連携を弱めます。
例えば、手術を終えた患者が人工呼吸器等を使いながらICUへ移る場面では、長い廊下や複雑な移動は負担になります。急変時に医療者が集まる速さや、再び手術が必要になった場合の搬送も考えます。静かな環境や出入りの管理は必要ですが、それは手術部から遠ざけることではなく、管理された出入口や動線の整理、遮音等によって確保します。
ゾーニングは、部屋を用途ごとに色分けするだけの作業ではありません。近づけたい関係と分けたい関係を、利用者、物の移動、時間帯、安全性から判断します。他の三つは、利用者の違いへの対応や、収蔵品を安全に扱うための近接配置として適切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。市庁舎では、窓口を利用する市民、勤務する職員、物品を搬入する人、議会関係者で、訪れる目的や時間帯が異なります。入口を分けると、市民を分かりやすく案内しながら、執務部分の管理や閉庁時間の利用に対応しやすくなります。ただし入口を増やすだけでは案内が複雑になるため、誰がどこから入るかを明確にします。議会や会議の時間に、一部の区画だけを利用可能にする管理にも役立つ計画です。
選択肢2
(2)適当です。義務教育学校には、小学校段階から中学校段階まで、体格や運動能力の差が大きい児童生徒がいます。低学年の子どもが遊ぶ場所に大きな生徒が高速で走り込むと、衝突等の危険が高まります。専用の運動広場を設ければ、安心して遊べる場所を確保しやすくなります。年齢を完全に分離するという意味ではなく、安全な日常の居場所を確保したうえで、交流する機会や場所も計画できます。
選択肢3
(3)適当です。博物館の研究では、収蔵品を取り出して観察、計測、記録することがあります。収蔵部門と研究部門が遠いと、資料の搬送回数や距離が増え、破損、紛失、温湿度の変化等のリスクが増します。両者を近づければ、職員の作業効率を高めながら資料を安全に扱えます。来館者の動線とは分け、搬送できる扉幅や作業場所を確保することも必要です。単に研究室の住所を近くするのでなく、資料が移る経路を考えます。
選択肢4
(4)不適当です。ICUは、手術部等との連携が密接な集中治療の場です。一般病棟のように落ち着いて療養する場所という印象だけで、手術部から離してはいけません。重症患者の搬送距離を短くし、医療者や機器が速やかに移動できることを重視します。不要な人の通り抜けを防ぐことと、必要な医療上の出入りをしやすくすることは両立させるべき条件です。管理された近接配置によって両方を確保します。
周辺知識
ゾーニングを考える第一歩は、利用者と活動を具体的に書き出すことです。市庁舎なら窓口利用と議会、学校なら低学年の遊びと高学年の運動、博物館なら公開展示と収蔵品の研究、病院なら一般療養と集中治療、という違いがあります。用途が似ている部屋でも、利用時間、静けさ、衛生、出入りの管理などの条件が違う場合があります。
次に、部屋同士を「よく行き来する」「物を運ぶ」「一緒に管理する」「離したい」に分けます。よく行き来する関係は近接が有利ですが、来客が職員専用部分を横切るような経路は整理が必要です。近いことと自由に通れることは同じではなく、隣接していても管理扉や前室を設けて出入りを制御できます。
最後に、実際の動作へ置き換えて確認します。収蔵品を載せた台車が曲がれるか、患者をベッドで安全に運べるか、低学年の子どもを教員が見守れるか、といった条件です。施設名に付いた「病院」「学校」だけで計画を決めず、その場所で誰が何をし、どんな支援が必要かを考えると、適切な近接と分離を判断できます。