学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の屋根や庇に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。水平の庇は、上方から入る日射を遮るのに有効です。北緯35度付近の夏の南中時には、太陽が南の高い位置にあるため、南面の窓は水平庇で日射を遮りやすくなります。一方、午後遅くの西日は低い角度から窓へ差し込むため、同じような庇では日射が庇の下をくぐりやすくなります。したがって、一般に西面の方が水平庇の日射遮蔽効果を期待できるという比較は逆です。
庇の下にいる人を想像すると、頭上に近い太陽は庇で隠せても、横から低く差す夕日は顔に当たりやすいことが分かります。西面では、外付けのブラインドやスクリーンなど、低い角度の光に対応する対策も検討します。実際の遮蔽は庇の出、窓との高さ関係、太陽の方位で変わるため、西面の庇が全く役立たないという意味ではありません。他の選択肢は、排水不良への備え、雪を落とす空間がない敷地への対応、開口への雨掛かりを減らす工夫として適切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。陸屋根は見た目が平らでも、排水口へ水を流す勾配が必要です。防水層があっても、落ち葉等で排水口が詰まれば水位が上がり、立上りや開口などから漏水するおそれがあります。複数のルーフドレンを設けたり、通常の排水経路が機能しないときに水を逃がすオーバーフロー管を設けたりすることは有効です。排水の予備経路を設けるとともに、点検や清掃ができる計画にすることが重要です。
選択肢2
(2)適当です。スノーダクト方式では、雪を敷地の外へ滑り落とすのでなく、屋根上に保持し、融けた水を屋根の内側の排水経路へ導きます。隣地との間が狭く、落雪を堆積させる場所を確保できない都市部で有効です。ただし無落雪は、雪の重さや維持管理を考えなくてよいという意味ではありません。積雪荷重に耐える構造、排水部の凍結や詰まりへの対応を検討し、融雪水を安全に処理する必要があります。
選択肢3
(3)適当です。霧除け庇は、窓や出入口などの上に設ける小さな庇です。雨が開口部へ直接かかる量を減らし、窓枠まわりから水が入りにくい状態をつくります。雨仕舞いは、防水材で完全にふさぐことだけでなく、水をかけにくくし、流れた水を外へ逃がす形を工夫することです。小庇があっても横殴りの雨は届くため、水切りや接合部の処理を併用します。庇一つで全ての防水が不要になるわけではありません。
選択肢4
(4)不適当です。夏の南面では太陽高度が高く、水平庇の影が窓面を覆いやすくなります。西面に強い日射が入る夕方は太陽が低く、庇の下から光が入りやすいため、水平庇だけで遮るには不利です。南面では、夏の高い日射を遮り、冬の低い日射を取り入れる季節の使い分けも可能です。西面には、外付けスクリーン等で窓の前を覆う方法などを合わせ、方位と時間帯に合う対策を検討します。
周辺知識
屋根や庇は、建物へ入る日射、雨、雪を調整する境界です。それぞれ動き方が異なるため、同じ形で全てを処理できるとは限りません。日射は太陽の方位と高度に従って直線的に入り、雨は風で斜めに吹き付け、雪は屋根に積もって荷重となり、融けると水として流れます。設計では、物がどう動くかを想像して形と経路を考えます。
南中時の太陽高度は、北緯35度の地点では夏至ごろ約78度、冬至ごろ約32度です。夏は高く冬は低いという差があるので、南面の庇は季節に応じて働きます。ただし、これは南中時の値であり、一日中同じ高さではありません。西面の日射対策でこの値をそのまま使わず、午後の方位と高度を確認します。
雨水は、入口をふさぐ防水と、たまる前に逃がす排水を組み合わせます。通常の排水口が詰まる場合も考え、予備の経路を確保することで被害を抑えます。屋根の耐久性は仕上げ材の性能だけで決まらず、点検・清掃や凍結への対応を続けられるかにも関係します。