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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅰ(計画) 問2

問題・正答・学習用解説

問題

日本の歴史的な建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    宇佐神宮本殿(大分県)は、独立した前殿と後殿を切妻造り・平入りとし、両殿を相の間でつないだ、八幡造りの建築物である。
  2. (2)
    円覚寺舎利殿(神奈川県)は、内部を化粧屋根裏とし、柱上に組物を置かず、挿肘木で軒荷重を支える、大仏様の建築物である。
  3. (3)
    箱木家住宅(兵庫県)は、屋根を棟束で支え、柱間が長く、内法高の低い、現存最古級の一つと推定されている民家である。
  4. (4)
    妙喜庵待庵(京都府)は、二畳隅炉に次の間をもつ、16 世紀末頃に建てられたと推定されている草庵風茶室である。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。円覚寺舎利殿は「禅宗様」の代表例です。禅宗様は、中世に禅宗とともに中国から伝わった建築の形式で、扇状に広がる垂木、輪郭に曲線をもつ花頭窓、柱の上だけでなく柱間にも並ぶ組物などが特徴です。設問にある、柱へ挿し込んだ肘木で軒を支える「大仏様」の説明とは異なります。
屋根の軒を深く出すと、屋根の重さを建物の外側まで支える必要があります。木造寺院では、その力を柱へ伝えるため、短い木材などを重ねた組物や、柱に挿し込む肘木を用います。大仏様では大きな建築を合理的に支える挿肘木などが目立ち、東大寺南大門が代表例です。一方、円覚寺舎利殿は、細かい部材の配置や反りのある軒がまとまった禅宗様の建築です。化粧屋根裏という、屋根を支える部材を室内から見せる扱いだけで様式を決めず、複数の特徴を合わせます。他の選択肢は、神社本殿、古い民家、小さな茶室という異なる用途と、その構成が対応しています。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。宇佐神宮の八幡造りは、前殿と後殿という前後二つの殿を相の間でつなぐ構成です。切妻造りは、二つの傾斜面を山形に合わせた屋根です。平入りは、山形の三角形が見える妻側ではなく、屋根の棟と平行な側に入口を設けることをいいます。二棟の屋根が前後に並び、その間がつながる姿を思い浮かべると理解できます。入口の向きと屋根の数・並びは、神社本殿の形式を区別する重要な手掛かりです。

選択肢2

(2)不適当です。円覚寺舎利殿は禅宗様であり、大仏様ではありません。禅宗様では、柱間にも組物を配する詰組や、放射状の扇垂木、花頭窓などを組み合わせて確認します。設問の挿肘木は、柱へ差し込んだ横材によって軒の荷重を受ける大仏様の特徴です。様式名は宗教名や大きさの印象だけで決めず、力を受ける木材の配置に着目しましょう。小さい建物でも、軒や窓の細部に様式の特徴が現れます。

選択肢3

(3)適当です。箱木家住宅は「千年家」として知られ、現存する最古級の民家の一つです。棟束は、屋根の頂部を通る棟木を下から支える短い垂直材をいいます。内法高は、室内の開口などの上下の内側で測る高さで、低い内法は古い民家の空間を理解する特徴になります。「千年家」という呼び名をそのまま厳密な築年数と読まず、部材や構法の調査から古さが検討されている建物として理解します。

選択肢4

(4)適当です。待庵は、妙喜庵にある二畳の小さな草庵風茶室です。草庵風とは、豪華な座敷の格式を強調するのでなく、簡素な素材や小さな空間によって茶の湯に集中する雰囲気をつくる方向です。隅炉は畳の隅に設ける炉で、湯を沸かす動作と客の位置が密接に関係します。二畳という限られた面積でも、次の間などと組み合わせ、出入りや準備、もてなしの動作を成立させています。

周辺知識

歴史的建築は「年代、用途、平面、屋根と軒の構造」を組み合わせて学ぶと、名前だけの暗記から抜け出せます。神社本殿なら、祭神をまつる場所の構成や入口の向きが重要です。寺院なら、仏像や舎利をまつる内部空間を、柱や軒の構造がどう囲むかに着目します。民家なら生活と作業の場、茶室なら客と亭主の動作が、空間の形に影響しています。
組物は、柱上などに木の部材を重ねて、屋根からの力を支える仕組みです。垂木は屋根面を支える細長い材で、軒先ではその並びが見えます。扇垂木は扇の骨のように放射状に並びます。「化粧」は本来、見せることを意識して仕上げるという意味なので、化粧屋根裏は、天井で隠さず屋根裏の部材を意匠として見せる扱いです。
ただし、一つの特徴だけで建物の様式を断定するのは危険です。後世の改修や複数様式の影響もあるため、軒の支え方、窓、柱、空間構成をまとめて確認します。本問では、円覚寺舎利殿と禅宗様の対応を押さえ、大仏様の代表例と比較することが中心です。