学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
限界耐力計算によって安全性が確かめられた建築物に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、高さが4mを超える建築物とする。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。限界耐力計算によって安全性を確かめる場合、鉄骨の柱脚をアンカーボルト等で基礎へ緊結する施行令第66条の仕様規定は、適用除外となります。本肢は、その方法による緊結を必ず行うものとしているため、計算ルートに応じた規定の適用を取り違えています。
柱脚は柱の最も下の、基礎とつながる部分です。柱が受ける横力や引抜き力等を基礎へ伝える重要な場所で、通常はアンカーボルト等でつなぐ仕様を定めます。しかし、限界耐力計算では、建物が地震でどの程度変形し、どの状態まで安全を保つかを計算する方法に応じて、一部の具体的な構造方法の規定を適用しない扱いがあります。
ただし、柱を基礎にただ置けばよいという意味ではありません。計算で想定した力の伝達や支持条件を実際の構造で確保する必要があります。除外されるのは、その条文が定める具体的な仕様の義務です。一方、コンクリートの養生のような材料の品質や耐久性等を確保する規定は残ります。正しい材料ができているという前提が崩れれば、どれほど詳しく計算しても結果を信頼できないためです。計算方法、適用を残す規定、除外する仕様を分けることが判断の要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。限界耐力計算では、鉄骨の圧縮材のうち柱の有効細長比を200以下とする仕様規定は適用除外です。有効細長比は、部材の支え方を考慮した長さを断面の曲がりにくさに関係する寸法で割り、座屈しやすさを表す指標です。座屈は、圧縮された細長い部材が横へ曲がって耐える力を失う現象です。200という仕様の上限を一律に守らなくてもよいだけで、座屈を考慮せず柱の安全を計算してよいという意味ではありません。
選択肢2
(2)適当です。限界耐力計算では、はりを複筋とし、あばら筋をはり丈の4分の3以下等の間隔で置く当該仕様規定は適用除外です。複筋ばりは上下に主要な鉄筋を持つはり、あばら筋はそれらを囲み、主にせん断等に対応する鉄筋です。仕様の具体的な配置を一律に要求しない一方、実際の配筋で必要な曲げ・せん断耐力や変形能力を確保します。『あばら筋が不要』と短く読み替えず、計算ルートでその条文の適用が変わることを理解します。
選択肢3
(3)適当です。コンクリートを適切に硬化させる養生は、限界耐力計算の場合も必要です。原則として打込み中と打込み後5日間、温度を2℃以上に保ち、乾燥や振動等で凝結・硬化を妨げないようにします。セメントと水の反応で強度が育つ過程を守るためです。計算で採用した強度を現場のコンクリートが発揮できなければ、安全の前提が崩れます。寸法や配筋の一部の仕様を計算で置き換えることと、材料の品質を確保する施工を省くことは異なります。
選択肢4
(4)誤りです。柱脚を所定のアンカーボルト等で基礎へ緊結する仕様規定は、限界耐力計算の場合には適用除外です。保有水平耐力計算等で適用される規定を、そのまま同じと考えてはいけません。柱脚は建物の力を基礎へ渡す重要部なので、採用する計算の支持条件や力の伝達を実際に確保することは必要です。法定の特定の方法が必須ではないという結論を、どんな接続でも安全という意味へ広げないようにします。
周辺知識
限界耐力計算は、地震時の建物の損傷を抑える段階と、倒壊等を防ぐ限界の段階を確認する方法です。建物がどの程度変形し、そのときにどれだけの力に耐えるかを考えます。こうした計算方法を採るとき、一部の寸法や配筋、接合方法の仕様規定を除く扱いがありますが、法令が定める範囲に限られます。
構造の仕様規定は、決められた材料や寸法等を守ることで安全を確保するための具体的なルールです。一方、耐久性等関係規定は、材料が劣化せず、設計で想定する性質を保つ等の基本となる条件です。コンクリートの養生を省けば、設計基準強度を持つという計算の前提自体が成り立たなくなるため、計算を詳しくしても代わりにはなりません。
柱脚の接合、鉄骨柱の座屈、はりの配筋は、それぞれ違う壊れ方に関わります。接合では力が基礎へ伝わるか、座屈では圧縮材が横へ折れ曲がらないか、配筋では曲げやせん断等に耐えるかを考えます。仕様が適用除外になった場合も、この物理的な危険は消えません。試験では『規定の適用の有無』と『実際に安全を確保する必要』を分けて説明できることが大切です。