学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅲ(法規) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。脱落によって重大な危害を生じるおそれがあるものとして定められた天井は、『特定天井』です。『強化天井』は、防火に関する別の性能を表す用語なので、名称を取り違えています。
特定天井の規定が扱うのは、地震等で天井が外れ、下にいる人に当たる危険です。例えば高く広い空間の天井が一度に落ちれば、建物の柱やはりが壊れなくても重大な被害が起こります。そのため、所定の高さ、面積等により対象となる天井について、支持する部分や接合部等を含めて、安全な構造を求めます。『特定』は天井の材料が特に強いという意味ではなく、法令の条件で特別に対象を定めているという意味です。
一方、強化天井は、火災による火熱を遮る性能を持つ天井として、一定の間仕切壁等の防火上の取扱いに関わります。こちらは火災の熱が天井裏等へ及ぶことを抑える目的です。同じ天井という部位でも、落下と火災では防ぐ危険が違います。法規の用語は、日常語の強そうな印象で選ばず、何の性能を、どの条文のために定義したものかを確認します。特定天井と強化天井のどちらか一つの性能を満たしても、他方の規定へ自動的に適合するわけではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。重大な危害のおそれがある脱落を防ぐために定める天井は特定天井です。強化天井は防火性能に関わる別の用語です。つられた天井を支える部品が地震で壊れ、天井が落ちる問題と、室内の火災の熱を天井で遮る問題を分けます。『強化』の方が安全そうという言葉の印象ではなく、条文が対象とする危険から名称を選びます。骨組の構造計算を済ませた建物でも、該当する特定天井の落下対策は別に必要です。
選択肢2
(2)適当です。建築基準関係規定には、建築基準法とその命令だけでなく、他の法律のうち政令で指定された規定も含まれます。特定都市河川浸水被害対策法第10条等のうち、建物の敷地、構造、設備に関わるものも対象です。建物が安全に建てられるかを確認する際には、浸水への対策等の他法の条件も関係するためです。他法の全ての条文が入るという意味ではなく、指定された規定と、その建築物に関係する事項の範囲を確認します。
選択肢3
(3)適当です。建物の自重や載せる物・人等の荷重を支える最下階の床版は、構造耐力上主要な部分に含まれます。床版は面状に広がる床の構造部分で、そこに載った荷重をはりや地盤等へ伝えます。最下階だから役割が小さいとはいえません。なお、防火上の『主要構造部』の定義では最下階の床等を除く扱いがありますが、本肢は荷重を支える『構造耐力上主要な部分』を問うています。目的が違う二つの定義を混同しないことが重要です。
選択肢4
(4)適当です。通常の火災の加熱を受けたとき、加熱開始から1時間、反対側へ火炎を出さない遮炎性能について大臣認定を受けた防火戸は、特定防火設備に当たります。遮炎は炎を通さない性能であり、表面温度を低く保つ遮熱とは別です。一般の防火設備の20分の遮炎と、特定防火設備の1時間を区別します。鋼製の戸だから自動的に特定防火設備になるのではなく、求める性能と、告示の構造方法または認定等の条件を確認します。
周辺知識
法令の似た用語は、目的を付けて覚えると整理できます。『主要構造部』は主に防火上の扱いに使う区分で、壁、柱、床、はり、屋根、階段等から、構造上重要でない部分等を除きます。『構造耐力上主要な部分』は、重さや地震・風等の力を支える部分の区分です。同じ床でも、最下階の床のように二つの定義で扱いが異なる場合があります。
防火性能も、炎を通さない遮炎、熱を伝えにくくする遮熱、荷重を支えたまま損傷しない非損傷等に分けます。防火戸の1時間の遮炎性能を見て、その戸が1時間ずっと冷たいという意味に読んではいけません。何を防ぐ性能かと、何分間求めるかを合わせて確認します。
建築確認で見る規定の範囲も、建築基準法だけではありません。建築基準関係規定には、政令で指定された他法の建築物に関わる条件が含まれます。一方、建物に関係しそうな法律の全条文が確認対象になるわけでもありません。条文の名称を丸ごと暗記するより、定義が使われる場面、対象とする部分、求める性能や手続を対応させると、似た用語への置き換えに気付きやすくなります。