学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問19
問題・正答・学習用解説
問題
建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。エキスパンションジョイントは、建物同士や構造の部分同士が別々に動けるように設ける切れ目です。地震時には両側が同じ方向・同じ量だけ動くとは限らないので、そこを一本の硬い給水管でつなぐと、引っ張りや曲げを受けて破損するおそれがあります。原則として配管を通さず、やむを得ない場合には相対変位の小さい低層部を選び、変位に追従できる継手などを設けます。
高層部は一般に建物の揺れによる横移動が大きくなりやすいため、「低層部を避け高層部にする」という本肢は逆です。ここで重要なのは、一方の建物がどれだけ動くかだけでなく、両側の動きの差です。両側が逆向きに動けば、間の距離の変化はそれぞれの変位を合わせた大きさになる場合があります。
給水管が切れると水の供給が止まるだけでなく、漏水で電気設備や室内が損傷する可能性もあります。設備の耐震計画では、機器を落とさないことに加え、接続する配管や電線が建物の変形についていけることまで確認する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。1階の天井内で吊り支持された機器は、1階床に直接置かれた機器と支持条件が違い、上側の床や梁から揺れを受けます。本問では適用階の区分を中間階として、耐震クラスに対応する標準震度を用います。機器が目で見て何階の室内にあるかだけで決めないことが重要です。どの構造部分に支持され、その部分の地震動がどのように機器へ伝わるかを確認して設計条件を選びます。
選択肢2
(2)適当です。基礎免震では、建物下部の免震層で地盤から伝わる揺れを低減します。設問のエレベーターの設計用水平標準震度は、建物の高さにかかわらず全階で同じ値を用いる扱いです。ただし、これは規定に基づく設計上の値であり、実際の全ての場所が全く同じ揺れになるという意味ではありません。また、免震層をまたぐ配管などには大きな相対変位が生じ得るので、別途その動きへの対策が必要です。
選択肢3
(3)適当です。発電機は運転中に熱を出すため、冷却を続けないと長時間運転できません。大地震で断水した場合も使う設備では、水の補給に依存しない空冷式が望まれます。電力を生む機器でも、冷却水や燃料など別の供給が止まれば機能を失う点が重要です。ただし空冷式にも十分な給排気や放熱空間は必要です。水が不要であることと、周辺条件を何も考えずに運転できることは別です。
選択肢4
(4)不適当です。やむを得ずジョイントを渡る給水管は、変位が大きくなりやすい高層部を避け、できるだけ低層部に配置します。さらに、両側の相対変位を吸収できる可とう継手などで破断を防ぎます。「高い所へ逃がす」という浸水対策の発想を、揺れによる変形の対策に混同しないようにします。ここで避けたいのは水害ではなく、別々に動く構造部分の間で管が引き裂かれることです。
周辺知識
設備の地震被害は、大きく「力に耐えられない」「動きについていけない」「必要な供給が止まる」に分けて考えられます。機器が転倒する、吊り支持が壊れるという被害には、地震力に応じた支持や固定が必要です。一方、構造の切れ目で管が破断する被害には、硬く固定するだけでなく、変位を逃がす柔軟性が必要になります。
設計用地震力は、機器の重さと標準震度などから見積もる力です。標準震度は気象庁が発表する震度5や6と同じ意味ではなく、設計に使う係数です。設置階や支持条件、耐震クラスなどによって選びます。大きな重い機器ほど、同じ揺れに対して大きな力を受けるという基本も押さえます。
さらに、地震後に使い続ける設備では、燃料、電源、冷却、給排気、配管の全てが必要です。非常用発電機が倒れなくても、冷却が止まれば長く動かせません。建物の構造安全と、設備が働き続ける機能の安全をつなげて考えることが、災害後の事業継続にも関わります。