資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問20

問題・正答・学習用解説

問題

環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    我が国における「ZEBReady」は、再生可能エネルギーによる削減分を除いて、基準となる一次エネルギー消費量から50 %以上の省エネルギー化を達成した建築物と定義されている。
  2. (2)
    建築物の省エネルギー基準における一次エネルギー消費性能の評価指標BEIは、「評価建築物の省エネルギー量の合計」を「評価建築物の基準となる一次エネルギー消費量」で除した値と定義されている。
  3. (3)
    建築物の省エネルギー基準における外皮性能の評価指標PAL*(パルスター)は、その値が小さいほど建築物の外皮の熱性能が高いと判断される。
  4. (4)
    冷凍機に使用されている代替フロン(HFC)は、温室効果ガスの一種であり、モントリオール議定書のキガリ改正(2016 年)により生産及び消費量の段階的削減が求められている。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

正解は(2)です。BEIは、設計した建物が使うと計算された一次エネルギー消費量を、基準となる建物の一次エネルギー消費量で割った値です。分子は「削減した量」ではなく「消費する量」です。本肢は省エネルギー量、すなわち減らした分を分子にしており、定義が違います。
例えば、基準消費量を100、設計消費量を60とすれば、BEI=60100=0.6\displaystyle \mathrm{BEI}=\frac{60}{100}=0.6です。削減量は100−60=40\displaystyle 100-60=40で、削減率は40100=0.4\displaystyle \frac{40}{100}=0.4、40%となります。BEIは小さいほど消費が少なく優れ、削減率は大きいほど省エネが進んでいます。両者は、同じ評価範囲と条件なら削減率=1−BEI\displaystyle \text{削減率}=1-\mathrm{BEI}の関係になります。
50%削減の例ではBEIも0.5となるため、数字だけを見ると取り違えに気付きにくい点に注意します。分子が何を意味するかを文章で確かめましょう。また、一次エネルギーは電気やガスなどを共通の基準へ換算して扱う量で、電気料金そのものや実際の請求書の使用量を直接割る指標ではありません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。ZEB Readyは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで差し引く前の段階で、基準から50%以上の省エネを達成する建物です。断熱や日射遮蔽で必要な熱を減らし、設備効率を上げて使うエネルギー自体を抑えることが中心です。発電を多く設置して帳尻を合わせるだけでは、この要件を満たしたことになりません。「再生可能エネルギーを除く」という比較範囲が重要です。

選択肢2

(2)不適当です。BEIの分子は設計一次エネルギー消費量で、削減量ではありません。基準100に対して設計80ならBEIは0.8、削減率は20%です。良い建物ほどBEIは下がりますが、削減率は上がります。指標の増減方向まで理解すると、分子・分母を取り違えにくくなります。ただし実際の計算では評価対象の設備や除外する用途などの条件があるので、同じ評価範囲で比較することが前提です。

選択肢3

(3)適当です。PAL*は、外壁や窓などの影響を受けやすい建物の周囲部分について、床面積当たりの年間熱負荷を評価する指標です。熱負荷は室内を所定の状態に保つために除去・供給する必要のある熱で、小さいほど外皮が熱的に優れていると判断します。設備の消費電力そのものではありません。窓の日射遮蔽や断熱を改善して必要な冷暖房の熱を減らすことが、この指標の改善につながります。

選択肢4

(4)適当です。HFCは従来のフロンの代替として使われ、オゾン層破壊の問題を避ける一方で、強い温室効果を持つ物質が含まれます。そのため2016年のキガリ改正で、生産と消費の段階的削減が求められました。「代替」という名称は環境影響が全てなくなったことを意味しません。冷凍機の運転電力を減らす対策に加え、冷媒の漏えいを防ぎ、適切に回収することも温暖化対策になります。

周辺知識

省エネルギーを考える順序は、必要な負荷を減らす、必要な分を効率よく処理する、再生可能エネルギーを利用する、と整理できます。断熱や日射遮蔽は最初の段階、高効率の空調や照明は次の段階、太陽光発電は最後の段階に対応します。ZEBの評価は、こうした省エネと創エネを分けて確認するため、単に発電量だけを増やせばよい仕組みではありません。
一次エネルギー評価では、建物で使う電気を、その供給に必要な一次エネルギーへ換算して、ガスなどと共通に比較します。エネルギーの種類によって、建物へ届く前の変換の事情が異なるためです。BEIは基準に対する比なので、単位を持たない値になります。
また、消費エネルギーと温室効果ガスは関連しますが同じ量ではありません。電力や燃料を使うことによる排出に加え、冷媒そのものが漏れて生じる影響もあります。PAL*で負荷、BEIで設備を含む消費性能、冷媒管理で漏えいの影響を確認するように、評価対象を区別して組み合わせると、環境対策の全体像を捉えられます。