学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問17
問題・正答・学習用解説
問題
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。同じ電力を送る場合、配電電圧を低くすると電流が大きくなります。そのため、200Vは400Vより細い電線を使えるのではなく、一般に太い電線が必要となる方向です。電線は大きな電流を流すと発熱するので、許容できる電流や電圧降下を考えて断面積を選びます。
簡単な単相・力率1の例で、20kWを送るとします。より、200Vの場合と400Vの場合の電流を順に計算します。
電圧を半分にすると電流は2倍になります。同じ抵抗の電線を使った場合、発熱損失は電流の二乗に比例するため4倍です。三相の場合も、同じ条件なら電圧と電流の反比例関係は同じです。
高い電圧で配電すれば電流を抑えやすいことが、大きな動力設備で400V配電を用いる理由の一つです。ただし、実際の電線選定では絶縁、敷設方法、周囲温度、距離なども考えるため、電圧だけで断面積を自動的に決めるわけではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。SPDは、雷などによる瞬間的な過大電圧を抑え、機器に大きな電圧が加わるのを防ぐ装置です。建物へ直撃する雷だけでなく、近くへの落雷が電源線や通信線に異常電圧を生じさせる場合にも対策が必要です。通常の過負荷を扱う遮断器とは役割が異なります。またSPD一つで建物の雷保護が全て完成するわけではなく、受雷部、接地、等電位化などと組み合わせて使います。
選択肢2
(2)不適当です。同じ容量の負荷へ同じ条件で電力を送るなら、200Vでは400Vの約2倍の電流が必要です。電流が大きいほど発熱や電圧降下が増えるので、より小さい断面積の電線を使えるという説明は逆です。「電圧が低いから弱い電気であり、細い線でよい」と考えないようにします。送る仕事の量である電力を固定すると、低い電圧を補うために電流を増やす必要があると捉えます。
選択肢3
(3)適当です。スターデルタ始動は、始動時だけ巻線をスター結線にして各巻線に加わる電圧を下げ、回転が上がった後にデルタ結線へ切り替える方法です。直入れ始動の大きな始動電流を抑えられます。一方、始動トルクも小さくなるため、どの負荷にも無条件で適するわけではありません。電流を小さくする利点と、重い機械を動かし始める力が低下する条件を一緒に理解します。
選択肢4
(4)適当です。構造体の鉄骨は、所定の電気的な連続性などを確保すれば、雷電流を地面へ導く引き下げ導線として利用できます。単に金属でできているだけでなく、接合部も含めて電流が安全に流れる経路であることが必要です。途中で切れたり抵抗が大きかったりすると、火花や発熱を生じるおそれがあります。構造上のつながりと、雷電流を流す電気的なつながりの両方を確認します。
周辺知識
電気の基本量を、水の流れにたとえて考えると入口の理解に役立ちます。電圧は流れを押す差、電流は流れる量、抵抗は流れにくさに対応します。同じ電力を送るとき、押す力を大きくすれば少ない流れで済むという考え方が、高い電圧による電流低減につながります。ただし交流の位相や雷の瞬間的な現象まで水のたとえで説明できるわけではありません。
電線の抵抗は同じ材質・長さなら断面積が大きいほど小さくなります。太い線は許容電流を確保するだけでなく、電圧降下や損失も抑えます。負荷の定格電流だけでなく、電動機の始動時に一時的に増える電流も設備計画へ影響します。
雷保護は、雷を受け止める、電流を地面へ流す、機器間の電位差を抑える、配線から侵入する過電圧を抑えるという複数の対策から成ります。引き下げ導線とSPDは別の段階を担当します。装置名を一つずつ暗記するより、雷の電流や電圧がどこを通って機器へ影響するかをたどると役割が分かります。