学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問16
問題・正答・学習用解説
問題
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。力率は、有効電力を皮相電力で割った値です。有効電力は照明、熱、動力などへ実際に変わる電力で、単位はWです。皮相電力は交流の電圧と電流の実効値の積で表す電源側の容量で、単位はVAです。本肢は皮相電力有効電力としており、分子と分母を逆にしています。
例えば、有効電力100W、皮相電力125VAなら、力率は、すなわち80%です。設問の順に割るととなり、力率の意味と合いません。交流では、コイルなどが電源とエネルギーをやり取りするため、電流が流れていても、その全てが平均的な仕事に変わるとは限らないのです。
力率が低いと、同じ有効電力を使うにも大きな電流が必要になり、電線や変圧器への負担、配線の発熱損失が増えます。ただし、80%という力率を、機器が受け取った電力の20%を熱として無駄に捨てているという効率の意味で読んではいけません。力率と機器効率は、それぞれ比較している量が異なります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。正しい定義は次のとおりです。
有効電力皮相電力
皮相電力125VAのうち有効電力が100Wなら力率0.8となり、電源や電線の容量に対してどれほど有効な電力を送っているかを表します。交流の電圧と電流の波形が正弦波の場合には、位相差をとしてでも表されます。分母を有効電力にした逆数は力率ではありません。WとVAの単位を含めて意味を確認します。
選択肢2
(2)適当です。需要率は、取り付けた設備の総容量のうち、最も多く使う時でも実際にはどれほど使うかを示します。設備合計100kW、最大需要60kWならです。全ての照明や機械が同時に最大で使われるとは限らないので、設備容量を合計しただけでは電力の実際のピークは分かりません。最大需要を分子にし、設備総容量を分母にする点が、平均を使う負荷率と異なります。
選択肢3
(3)適当です。負荷率は、ある期間の平均需要を、その期間の最大需要で割った値です。平均40kW、最大80kWなら0.5です。短時間だけ大きなピークがあると低くなり、ほぼ一定の電力を使えば1に近づきます。設備が何kW取り付けられているかではなく、実際の使い方の時間的な平らさを表します。最大需要を抑えたり使用時刻を分散したりすると、同じ総使用量でも負荷率が変わります。
選択肢4
(4)適当です。不等率は、個々の負荷の最大需要の合計を、系統全体の最大需要で割ります。各負荷のピーク時刻が違えば、個別最大を足した値より全体の同時最大は小さくなります。例えば各40kWの最大を持つ2系統でも、合成した最大が60kWならです。通常1以上で、需要率や負荷率のように一般に1以下となる比とは分子・分母の関係が違います。
周辺知識
電気設備の比率は、暗記した順序が逆になりやすいので、具体的な一日の使用状況で整理しましょう。学校に合計100kW分の設備があり、その日に最も多く使ったときが60kW、平均が30kWなら、需要率は、負荷率はです。前者は設備の備えに対するピーク、後者はピークに対する平均です。
別の校舎と合わせるとき、それぞれの最大が同じ時刻とは限りません。個別最大の合計と全体最大の比が不等率です。「何を同時に使うか」が受電設備の容量を考える手掛かりになります。
一方、力率は時間帯の使い方を表す比ではなく、交流の有効電力と皮相電力の関係です。さらに、電力量kWhは電力kWを時間について積み重ねた総量です。平均30kWを10時間使えば300kWhとなります。設備容量、最大需要、平均需要、電力量、力率を別々の量として捉えると、ピークを下げる対策と使用量を減らす対策の違いまで理解できます。