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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問15

問題・正答・学習用解説

問題

給排水衛生設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    公共下水道が合流式である地域においては、害虫や臭気等の侵入防止を目的として、雨水排水はトラップますを介して一般排水系統の敷地排水管に接続する。
  2. (2)
    管径200 mmの敷地排水管の排水ますは、起点、屈曲点、合流箇所、ますの間隔が24 m以内となるような位置等に設ける。
  3. (3)
    雨水排水管径の算定に用いる雨量に最大雨量の1 時間値を用いることは、10 分間値を用いた場合よりも排水管径は大きくなるので、局地的な集中豪雨への対策として有効である。
  4. (4)
    サイホン式雨水排水システムは、特殊な形状のルーフドレンによりサイホン現象を発生させ、多量の雨水を排水する方式で、一般に、従来方式に比較して雨水たてどいの口径を小さくすることができる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。集中豪雨への備えでは、短い時間にどれだけ激しく降るかが重要です。1時間に降った総量を1時間で平均すると、途中の10分間だけ非常に強く降ったピークがならされます。そのため、最大10分間雨量を1時間当たりの強さに換算した値のほうが、一般に最大1時間雨量より大きくなり、必要な排水管径も大きくなる方向です。本肢はこの大小関係を逆にしています。
例えば、10分間で20mm、その後50分間で10mm降った場合、1時間雨量は30mmです。しかし激しい10分間の降り方を1時間継続した強さへ換算すると、次のようになります。
20×6010=120 mm/h\begin{aligned}\frac{20\times60}{10}&=120\,\mathrm{mm/h}\end{aligned}
30 mm/h\displaystyle 30\,\mathrm{mm/h}を用いるより、120 mm/h\displaystyle 120\,\mathrm{mm/h}を用いるほうが短時間の流入に対応する大きな排水能力が必要です。
ただし、20mmという10分間の総量と30mmという1時間の総量を、そのまま比較してはいけません。時間の長さが違うので、まず同じmm/h\displaystyle \mathrm{mm/h}にそろえます。雨水管は雨が降っている間に流入を受けるため、平均化で見えなくなる短時間のピークを考慮することが肝心です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。合流式の公共下水道は、生活排水と雨水を同じ系統で流します。そのまま雨水管を接続すると、下水道側の臭気や害虫が雨水の入口へ戻る経路になり得ます。トラップますに水をため、その水で空気の通り道をふさぐことで逆流を抑えます。水の流れは通しながら臭気の経路を断つ仕組みです。汚水と雨水を別々に流す分流式とは接続条件が違うので、地域の方式を確認します。

選択肢2

(2)適当です。排水ますは、管の内部を点検したり、詰まりを清掃したりするための場所です。管径の120倍以内という間隔の考え方を、200mmに当てはめると200×120=24000 mm=24 m\displaystyle 200\times120=24000\,\mathrm{mm}=24\,\mathrm{m}になります。直線部分の間隔だけでなく、起点、曲がり、合流なども詰まりや確認の必要が生じやすい位置です。管が地中に埋まっていても管理できるように設けることが目的です。

選択肢3

(3)不適当です。1時間値は短時間の強雨を平均化するため、10分間の最大値を時間雨量へ換算した場合より、一般に小さな雨量強度になります。したがって、1時間値を用いたほうが管径が大きくなるという説明は逆です。10分で20mmなら時間換算120 mm/h\displaystyle 120\,\mathrm{mm/h}です。換算せずに「20は30より小さい」と比較しないようにします。排水設計では総雨量だけでなく、単位時間に入る水の量を考えます。

選択肢4

(4)適当です。サイホン式は、特殊なルーフドレンで空気の巻込みを抑えて管を満流にし、高さの差による圧力を利用して雨水を流します。従来の重力式では管内に空気を残して流すため、同じ条件で比較するとサイホン式は小さい管径で多くの水を排出できる場合があります。ただし、単に細い管へ交換すれば成立する方式ではありません。集水口、配管の高低差、圧力などを一体として設計する必要があります。

周辺知識

降雨量のmmは、降った水が流れ去らず平らな面にたまったときの深さです。面積1 m2\displaystyle 1\,\mathrm{m^2}に1mm降ると、体積は1×0.001=0.001 m3\displaystyle 1\times0.001=0.001\,\mathrm{m^3}、すなわち1Lです。したがって屋根100 m2\displaystyle 100\,\mathrm{m^2}に120 mm/h\displaystyle 120\,\mathrm{mm/h}の雨が降れば、単純計算で12,000 L/h\displaystyle 12{,}000\,\mathrm{L/h}、200 L/min\displaystyle 200\,\mathrm{L/min}の水が入ります。面積と雨量強度を掛けることで、管へ流れる量を見積もれます。
この計算では、集水面積を水平投影で扱う条件や流出の扱いなど、設計上の前提も確認します。また、実際の豪雨は一様に続かないため、短時間のピーク、ドレンの詰まり、あふれた場合の経路まで考えることが大切です。大きな総雨量と、短時間の激しい雨は別の問題です。
排水設備は、十分な流量を流す能力に加え、臭気を戻さないこと、点検と清掃ができることも必要です。トラップます、点検用のます、サイホン式のドレンは、それぞれ役割が異なります。水の入口から公共下水道までをたどり、各部品が何を解決するためにあるかで整理しましょう。