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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問14

問題・正答・学習用解説

問題

事務所ビルの飲料用受水槽に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    塩素による腐食の発生を防ぐため、ステンレス鋼板製の受水槽は、水面上部(気相部)には水面下部(液相部)より耐食性の高いステンレス鋼材を用いた。
  2. (2)
    断水時におけるBCP対策等のため、受水槽の容量を1日予想給水量の2倍に設定したので、塩素滅菌装置を設置した。
  3. (3)
    水槽内における藻類の増殖を防ぐため、屋外に設置するFRP製の受水槽は、水槽照度率(水槽内照度[lx]水槽外照度[lx]×100)\displaystyle \left(\dfrac{\text{水槽内照度[lx]}}{\text{水槽外照度[lx]}}\times100\right)[%]が10%以下のものを用いた。
  4. (4)
    水槽内の滞留水による死水ができないようにするため、大容量の受水槽内には迂回壁を設けた。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。FRPは繊維で補強したプラスチックで、軽く、受水槽にも用いられます。しかし、槽の内部へ光が入りすぎると藻類が光合成をして増えるおそれがあります。そのため、防藻のための水槽照度率は0.1%以下とするのが適切であり、10%以下という本肢の値では光を十分に遮れません。
水槽照度率は、外の明るさに対して中の明るさが何%かを表す数値です。式はEinEout×100\displaystyle \frac{E_{\mathrm{in}}}{E_{\mathrm{out}}}\times100で、内外の照度の単位lxは割り算で相殺されます。0.1%は外の1000分の1、10%は10分の1なので、本肢は適切な値の100倍の割合まで光を許してしまいます。
例えば、計算例として槽外を10,000lxとすると、0.1%に対応する槽内照度は10lx、10%なら1000lxです。実際の遮光性は所定の試験条件で確認しますが、この例で桁の違いが理解できます。飲用水をためる設備では、容量だけでなく、光、汚れ、滞留、消毒効果の維持まで考える必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。ステンレスは腐食に強い材料ですが、どんな環境でも腐食しないわけではありません。水面より上では、塩素を含む湿った環境や結露などにより局部的な腐食が問題になるため、気相部により耐食性の高い鋼種を用います。水に浸かっている部分より上が厳しい条件になる場合がある点が要所です。「水に触れないから材料性能を下げてよい」と単純に判断せず、槽内の環境を区別します。

選択肢2

(2)適当です。BCPは災害などの際にも事業を続けるための計画です。断水対策として2日分相当の水をためると、通常使用時には水の入替えに時間がかかり、消毒に必要な残留塩素が減りやすくなります。追加の塩素滅菌装置を設けるのは、その水質維持を考えた対策です。水を多くためれば安全性が一方向に高まるわけではなく、備蓄量の増加に伴う滞留と消毒の管理も必要になります。

選択肢3

(3)不適当です。藻類の増殖を抑えるための水槽照度率は0.1%以下であり、10%以下ではありません。百分率の0.1を小数の0.1と取り違えないようにします。0.1%は割合で0.001です。光を遮る構造や材料を選び、槽内に藻が増えにくい条件をつくります。ただし、遮光だけで水質管理が完了するわけではなく、清掃、外部からの汚水や虫の侵入防止、残留塩素の確認なども必要です。

選択肢4

(4)適当です。迂回壁は、入った水がすぐ近くの出口へ抜ける短絡を防ぎ、槽の広い範囲を通るように流路をつくる壁です。大きな槽でも、水が一部しか流れなければ、隅に長く残る水が生じます。この滞留した水が死水と呼ばれる状態です。容量を大きくするだけでは水の新鮮さを保てないので、入口と出口の配置や迂回壁で入替えを促します。流れを妨げてためるための壁ではありません。

周辺知識

受水槽は、水道から供給された水を一度ため、建物へ安定して送るための設備です。使用が集中する時間と水道から補給できる量の違いを調整し、断水時の備えにもなります。一方、水が槽内にある時間が長くなるため、配水管から来た時の品質を維持する設計と管理が必要です。
衛生上の問題は、「外から入る」「中で増える」「長く残る」に分けると分かりやすくなります。汚水や虫の侵入は蓋や通気口などで防ぎ、藻類の増殖は光を遮って抑え、滞留は流入口・流出口と迂回壁で改善します。残留塩素の減少には、水の入替えや適切な消毒管理で対応します。
また、材料選びでは水中だけでなく水面上の環境も確認します。金属は水、酸素、塩分などの組合せで腐食の起こり方が変わります。FRPは金属と異なる材料上の利点がありますが、遮光性などの確認が必要です。どの材料でも、長所を一つ知っただけで衛生性能全体が確保されると考えず、使用環境と維持管理までつなげて判断しましょう。