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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

表に示す条件をもつ室A、B、Cにおける残響時間の大小関係として、最も適当なものは、次のうちどれか。
室名室容積(m3\displaystyle \mathrm{m^3})室内表面積(m2\displaystyle \mathrm{m^2})平均吸音率
A1,0007500.2
B1,5001,0000.3
C3,0001,5000.2

選択肢

  1. (1)
    A> B> C
  2. (2)
    A> C> B
  3. (3)
    C> A> B
  4. (4)
    C> B> A

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)のC>A>Bです。残響時間は、音源を止めた後に室内の音が減衰する速さを表す時間です。セイビンの残響式T=0.161VA\displaystyle T=\frac{0.161V}{A}では、V\displaystyle Vが室容積m3\displaystyle \mathrm{m^3}、A=Sαˉ\displaystyle A=S\bar\alphaが等価吸音面積m2\displaystyle \mathrm{m^2}です。S\displaystyle Sは室内表面積、αˉ\displaystyle \bar\alphaは平均吸音率で、壁や天井がどれほど音を吸収するかを全体として表します。
各室について、吸音面積を求めてから、室容積をそれで割ります。室Aは次のとおりです。
A=750×0.2=150 m2VA=1000150≒6.67\begin{aligned}A&=750\times0.2\\[4pt]&=150\,\mathrm{m^2}\\[4pt]\frac{V}{A}&=\frac{1000}{150}\fallingdotseq6.67\end{aligned}
室Bは次のとおりです。
A=1000×0.3=300 m2VA=1500300=5\begin{aligned}A&=1000\times0.3\\[4pt]&=300\,\mathrm{m^2}\\[4pt]\frac{V}{A}&=\frac{1500}{300}=5\end{aligned}
室Cは次のとおりです。
A=1500×0.2=300 m2VA=3000300=10\begin{aligned}A&=1500\times0.2\\[4pt]&=300\,\mathrm{m^2}\\[4pt]\frac{V}{A}&=\frac{3000}{300}=10\end{aligned}
共通の係数0.161を掛けても順位は変わらず、10、6.67、5の順、つまりC>A>Bとなります。
実際の時間まで求めると、Aは約1.07秒、Bは約0.81秒、Cは約1.61秒です。室容積が大きいほど長く、吸音面積が大きいほど短いという二つの影響を、割り算で同時に評価します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。Cを最短としている点が誤りです。Cは室内表面積が1500 m2\displaystyle 1500\,\mathrm{m^2}と大きくても、平均吸音率0.2を掛けた吸音面積は300 m2\displaystyle 300\,\mathrm{m^2}です。室容積3000 m3\displaystyle 3000\,\mathrm{m^3}をこれで割ると10となり、3室で最大です。壁や天井の面積が大きいという理由だけで残響が短いとは決まりません。音が広がる空間の大きさである容積と、音が失われる吸音面積の割合で判断します。

選択肢2

(2)不適当です。Bが最短である点は正しいですが、AとCの順が逆です。AのVA\displaystyle \frac{V}{A}は約6.67、Cは10なので、Cのほうが長くなります。両室の平均吸音率は0.2で同じですが、容積と表面積の組合せが異なります。「吸音率が同じだから残響も同じ」とせず、まず表面積を掛けて吸音面積を求め、次に容積をその吸音面積で割るという計算の順を全室でそろえます。

選択肢3

(3)適当です。Cの残響時間が約1.61秒、Aが約1.07秒、Bが約0.81秒なのでC>A>Bです。大小だけなら、共通係数0.161を省いてVSαˉ\displaystyle \frac{V}{S\bar\alpha}を比較すれば十分です。ただし、求めた10、6.67、5という数値をそのまま秒数と呼ばないようにします。共通係数を省くのは順位を求めるための計算上の工夫であり、残響時間そのものを算出したわけではありません。

選択肢4

(4)不適当です。Cが最長であることは合っていますが、BとAが逆です。BはAより容積が1.5倍ですが、吸音面積は300 m2\displaystyle 300\,\mathrm{m^2}でAの150 m2\displaystyle 150\,\mathrm{m^2}の2倍です。そのため残響時間の比は1.52=0.75\displaystyle \frac{1.5}{2}=0.75となり、Bのほうが短くなります。この比で考える方法なら、容積増加の影響より吸音面積増加の影響が大きいと理解できます。容積だけを比べると結論を誤ります。

周辺知識

残響は、音が壁や天井で何度も反射しながら徐々に弱くなる現象です。大きな空間では反射する面へ届くまでの道のりが長くなり、音が失われる機会が相対的に少なくなるため、同じ吸音面積なら残響が長くなります。一方、よく吸音する面を増やせば、一回の反射で失われるエネルギーが増え、早く静かになります。
等価吸音面積は、実際の面積に吸音率を掛けた量です。吸音率0.2の面が100 m2\displaystyle 100\,\mathrm{m^2}あると、完全に吸収する面20 m2\displaystyle 20\,\mathrm{m^2}分に相当すると考えます。複数の材料があれば各面のSiαi\displaystyle S_i\alpha_iを足します。平均吸音率を使う場合は、面積に応じた平均であることが前提です。
残響時間は短いほど常に良いわけではありません。授業や放送では言葉の明瞭さが重要ですが、音楽では適度な響きが演奏を豊かにします。またセイビン式は音がよく拡散する室内を想定した近似です。極端な形状や吸音の偏りでは、この計算だけで響きの全てを説明できないため、用途や音の分布も確認します。