学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。冷却塔は、冷房設備などが集めた熱を、屋外の空気へ捨てる装置です。開放式では冷やしたい循環水と空気が直接接触し、水の一部が蒸発する際に熱を奪います。密閉式では循環水を管の中に通し、管の外側の散布水や空気を介して冷やすため、熱は管壁などを経由して移動します。
この違いから、同じ冷却能力で比較すると、一般に開放式のほうが熱交換しやすく、送風機動力は小さくなります。本肢は「開放式のほうが大きい」としており、比較が逆です。送風機動力は、必要な空気量と、それを通す際の抵抗に関係します。密閉式では熱交換器を介する構成も含め、同じ熱を捨てるために必要な仕事が大きくなる傾向があります。
ただし、開放式があらゆる点で優れているわけではありません。循環水が外気に直接触れるため、水の汚れや蒸発に伴う濃縮の管理が必要です。密閉式は循環水を汚れから守りやすい利点があります。動力の比較と、水質管理上の長所を分けて理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。冷暖同時型は、ある室を冷房しながら別の室を暖房できる方式です。冷房室から取り出した熱を暖房室へ運べば、屋外へ捨てる熱を減らし、暖房の熱として再利用できます。例えば日射の強い南側で冷房、日射の少ない北側で暖房が必要な時期に有効です。ただし、全ての室で冷房だけを行う場合などには同じ熱回収の機会はありません。混在運転という条件が省エネ効果の理由です。
選択肢2
(2)不適当です。開放式は水と空気を直接触れさせて冷却するため、同じ冷却能力の密閉式と比べて、一般に送風機動力は小さくなります。密閉式の「閉じている」という言葉から、空気を送る仕事が少ないと連想しないようにします。閉じているのは主に冷却対象の循環水の回路です。外側では空気や散布水を動かす必要があり、熱交換器を通して熱を捨てる構成を確認することが大切です。
選択肢3
(3)適当です。水蓄熱槽は、夜間などに冷やした水や温めた水をため、必要な時間に利用する設備です。昼間の冷房負荷が一時的に大きくても、熱源機の出力に蓄えた分を加えられるため、熱源機を最大負荷と同じ容量にする必要を減らせます。水槽は熱を新しく生み出す装置ではなく、作る時刻と使う時刻を分けるものです。蓄えられる熱量と、何時間使うかを合わせて容量を検討します。
選択肢4
(4)適当です。モジュール型は、小さな熱源機を複数組み合わせて必要な台数だけ動かします。負荷が小さいときに全台を弱く動かす代わりに、一部の機器を効率のよい範囲で運転できます。例えば4台分の最大能力を備え、半分程度の負荷なら2台を中心に運転する考え方です。実際の効率は機器の特性と制御によりますが、負荷変動に応じた台数制御が効率的な運転を可能にします。
周辺知識
空調の省エネルギーには、熱を再利用する方法、熱をためる方法、必要な能力に合わせて運転する方法があります。冷暖同時型の熱回収は「別の場所で使う」、蓄熱は「別の時間に使う」、モジュール運転は「必要な台数に分ける」という違いで整理できます。
熱源機の容量kWは、単位時間にどれほどの熱を処理できるかを示します。蓄熱量kWhは、どれほどの熱をためたかを示します。例えば100kWの冷却を3時間続けると、理想的には300kWh分の熱処理に相当します。容量と蓄熱量は速さと総量の違いがあり、同じ数字でも交換できません。実際には水槽からの熱損失や利用可能な温度差も考えます。
また、熱源機だけを高効率にしても、冷却塔の送風機や水を送るポンプの電力が増えれば、システム全体の節約は小さくなります。冷房室から熱源、冷却水、冷却塔、屋外まで、熱がどこを通り、そのために何を動かしているかを順にたどると、設備全体の省エネを理解できます。