学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
建築物における防火・防災に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。火盛り期とは、室内で火災が大きく成長し、激しく燃えている段階です。燃える物の量が同じとき、空気が入りやすくなると燃焼に必要な酸素の供給が増え、一般に単位時間当たりに燃える量が多くなります。したがって燃料を早く使い切り、火盛り期の継続時間は短くなる方向です。本肢の「長くなる」は、この関係を逆にしています。
身近な例では、炭火へ空気を送ると強く燃えますが、同じ量の炭がいつまでも残るわけではありません。「火勢が強い」と「長時間続く」は別の性質です。概念的には、燃料の総量を1時間当たりに燃える量で割ったものが継続時間に対応するため、分母が大きくなると時間は短くなります。
ただし、開口を大きくすればあらゆる火災で際限なく燃焼が速くなる、という意味ではありません。酸素の供給で燃焼が制限される状況と、可燃物の表面積や燃え方で制限される状況があります。本問は一般的な傾向を比較しています。また、継続時間が短くても熱や炎が強まる場合があり、安全になるという結論にはなりません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。同じ量の可燃物でも、外気が流入する開口が大きいと酸素が供給されやすくなり、燃焼速度が増して火盛り期は一般に短くなります。燃料が増える場合と、空気が増える場合を区別しましょう。燃料の量を増やせば長時間化する可能性がありますが、本問は可燃物量を固定しています。「よく燃えるから長く燃える」と連想せず、燃料を消費する速さを考えると逆転を防げます。
選択肢2
(2)適当です。窓から噴き出した炎や高温の気流は上へ向かい、すぐ上の階の窓を通じて延焼するおそれがあります。上下階の開口の間に耐火性のある壁を確保するほか、バルコニーや庇で炎の経路を建物から遠ざける方法があります。これが層間で延焼を抑える考え方です。外観を全面ガラスにする場合なども、見た目だけでなく、上下階の間で火をどう止めるかを同時に計画します。
選択肢3
(3)適当です。冬の暖かい竪穴では、軽い空気が上へ流れる煙突効果が生じます。その圧力分布により下の階ほど竪穴へ向かう流れが強くなりやすく、火災室の煙も侵入しやすくなります。竪穴は階段や設備シャフトのように上下階をつなぐ空間です。階の扉や貫通部が開いていると煙の通り道になるため、区画の連続性が重要です。本肢の冬期・地下階なしという条件も圧力関係の判断に関わります。
選択肢4
(4)適当です。異種用途区画は、用途の異なる部分の間で火災が広がることを防ぐ区画です。例えば一つの建物に店舗と宿泊部分があれば、火を使う状況や可燃物、利用者が寝ているかなどの条件が違います。一方の火災が他方へ直ちに及ばないよう、原則として防火区画で分けます。単に案内上の区分を設けることではなく、壁や床、開口部の防火設備などで火災への抵抗を確保する考え方です。
周辺知識
建物火災では、燃料、酸素、熱の供給を分けて考えます。可燃物が多いほど潜在的な発熱量は大きくなりますが、その熱がどれほど速く放出されるかは換気条件などでも変わります。総量と速さは、浴槽の水量と蛇口の流量が別であるのと同じです。ただし火災では温度、煙、燃え広がりが互いに影響するので、単純な比例だけで全経過を予測できるわけではありません。
防火区画は、建物を火や煙が容易に連続して広がらない単位へ分ける仕組みです。面積を区切る考え方、竪穴を他の部分から分ける考え方、異なる用途を分ける考え方などがあります。壁があっても、配管が通る穴や開放された扉があれば性能は途切れます。
さらに、室内の区画を整えても、窓から屋外へ出た炎が上階へ回り込むことがあります。そこで層間の壁、庇、バルコニーなどによる外側の経路への対策も必要です。「壁で部屋を分ける」「上下の穴をふさぐ」「窓外の炎を抑える」と、火や煙の移動経路ごとに考えると各用語がつながります。