学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
図は、冬期において、定常状態にある外壁の内部及び周囲の温度分布を示したものである。次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、図中の屋外温度 、室内温度 及び材料の厚さdの条件は変わらないものとする。
選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。図の壁では、外側に材料ア、室内側に材料イがあり、冬なので熱は暖かい室内から寒い屋外へ流れます。熱伝導率は、材料の中を熱が通りやすい程度です。イの熱伝導率を小さくすると、イが熱を通しにくくなり、室内から外側のアへ届く熱が減ります。その結果、アは屋外側の温度に近づいて冷えるため、「アの各部分の温度が上がる」は逆です。
定常状態とは、時間がたっても各位置の温度が変わらない状態です。このとき壁の途中に熱がたまり続けないので、各層を通る熱流は同じです。単位面積当たりの熱抵抗を、内外温度差をとすると、熱流密度は次の式で求めます。
イの抵抗が増すとが減り、屋外からア内部までの温度上昇分も小さくなります。こうして式からも、アの温度が下がると確認できます。断熱を強化すれば壁の全箇所が暖かくなるわけではなく、断熱層のどちら側かで変化が違う点が要所です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。図では両材料の厚さが同じで、アのほうが層内の温度差が大きくなっています。定常状態では通る熱流が等しいため、温度差が大きい層ほど熱を通す際の抵抗が大きいと判断できます。より、同じ厚さで抵抗が大きいことは、熱伝導率が小さいことを意味します。図の線の傾きだけを暗記せず、「同じ熱流」「同じ厚さ」という比較条件と結び付けて読みます。
選択肢2
(2)適当です。外側のアの熱伝導率を大きくすると、アの熱抵抗が減り、壁全体を通って屋外へ逃げる熱流が増えます。室内温度は一定なので、室内からイの各位置までに生じる温度降下が大きくなり、イの温度は低くなります。コートの外側の保温性が悪くなると内側も冷えやすくなる様子に近いですが、本問では人体の発熱ではなく、室内外の温度を固定して考えている点に注意します。
選択肢3
(3)不適当です。室内側のイを熱が通りにくくすると、外側のアは暖かい室内から受け取る熱が少なくなります。アの温度は上がるのではなく下がります。室内表面は暖かくなりやすくても、断熱層より屋外側が同時に暖かくなるとは限りません。これは内断熱で室内側表面の結露を抑えられても、壁内部の温度分布や水蒸気の移動を別に検討する必要がある理由にもつながります。
選択肢4
(4)適当です。一次元の定常伝熱で、材料の厚さや表面の熱伝達条件が同じなら、アとイの順序を替えても抵抗の合計は同じです。したがって熱流密度も室内表面温度も変わらず、室内表面結露の防止効果は生じません。ただし、壁の内部の各位置の温度や、時間とともに変化する蓄熱の影響まで同じになるわけではありません。本肢は「室内表面」「定常状態」という範囲での判断です。
周辺知識
壁の熱の流れは、熱抵抗を直列につないだものとして考えると整理できます。材料ごとの抵抗に、室内外の表面で空気と熱をやり取りする抵抗も加えます。厚さの単位はm、熱伝導率は、熱抵抗はです。内外温度差を、合計した熱抵抗で割ると、を毎秒何Jの熱が通るかを表すが求まります。
各層での温度差はなので、抵抗の大きい層ほど温度分布の落差を多く受け持ちます。階段の総高さをいくつかの段に分けるようなもので、全体の温度差が固定されていても、どの層で大きく下がるかは変わります。
結露は、その位置の温度と空気に含まれる水蒸気の量の組合せで決まります。室内表面結露は部屋に面した表面、内部結露は壁の内部で起こる現象です。本問の材料順序の入替えで室内表面温度が変わらなくても、内部の温度分布は変わるため、結露の場所を区別して考える習慣を付けましょう。