学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
室内の温熱環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。コールドドラフトは、冷たい窓の近くで冷やされた空気が下へ降り、床の近くを流れることで、足元などに寒さを感じる現象です。空気は冷えると密度が大きくなり、周囲の暖かい空気より重くなるため下降します。このように空気そのものが移動して熱を運ぶ仕組みは「対流」であり、設問の「放射熱伝達」とは異なります。
放射による寒さは、人体と冷たい窓との間で熱のやり取りが起こり、人体から正味の熱が多く失われることによって生じます。こちらは空気が流れなくても起こります。冬に窓際で感じる寒さには、この放射の影響とコールドドラフトが同時に含まれる場合があります。したがって、窓際が寒いという結果だけで同じ現象と考えず、「冷気が流れてくるのか」「冷たい面へ熱を失うのか」で分けることが大切です。窓の断熱性能を上げて室内側表面を暖かく保つ対策は、両方の原因を弱めることにつながります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。原因となる熱の移動を取り違えています。窓で冷やされた空気が下降し、床をはうように移動するのがコールドドラフトで、対流に分類します。冷たい窓へ人体の熱が放射で奪われる現象も寒さの原因ですが、空気の下降流とは別です。空調の温度設定を上げても窓が冷たいままなら足元の流れが続くことがあり、窓そのものの断熱を改善する理由になります。
選択肢2
(2)適当です。潜熱とは、水が蒸発するように状態を変えるときの熱です。汗が蒸発すると皮膚から熱を奪います。室温が高くなると、人体と空気や周囲の面との温度差が小さくなり、対流や放射では熱を逃がしにくくなります。その分、蒸発による放熱への依存が増え、総発熱量に対する潜熱の比率が大きくなります。汗をかいた量ではなく、実際に蒸発できるかが放熱には重要です。
選択肢3
(3)適当です。PMVは、温度や湿度、気流、放射、着衣、活動量から集団の平均的な全身の温冷感を予測します。しかし、全身の平均が中立でも、頭だけ暑い、足元だけ寒い、片側の窓だけ冷たいという不快さは残ります。均一な環境を主な対象とする指標だけで、そのような局所的不快を十分説明できるとは限りません。PMVの確認と、上下温度差や放射の偏りの確認を組み合わせます。
選択肢4
(4)適当です。椅子に座った人では、床上0.1mはくるぶし付近、1.1mは頭付近の高さです。その温度差を3℃以内に抑える目安は、暖かい空気が上にたまり、頭は暑いのに足は冷える状態を避けるためです。室内の一点で測った温度が快適でも、体の上下で感じ方が違う場合があります。立っている人の頭の高さとは測定位置が異なるので、「椅座位」という条件も一緒に読み取ります。
周辺知識
人体は活動で生まれた熱を、対流、放射、蒸発などによって周囲へ逃がしています。室内環境を考えるときは、温度計の示す空気温度だけでなく、それぞれの熱の逃げ道を確認すると理解が深まります。例えば、同じ20℃の室でも、大きな窓が冷えている部屋と、壁や床が暖かい部屋では、人体から失われる放射の熱が違うため、体感が変わります。
対流には、扇風機のような機械で生じる流れと、温度差で自然に生じる流れがあります。コールドドラフトは後者の代表です。暖房した部屋で暖気が上へ集まることも、密度の違いによる空気の移動で説明できます。
また、汗の蒸発は湿度の影響を受けます。蒸し暑いと空気が水蒸気を受け取りにくくなり、汗をかいても冷えにくくなります。温熱環境の改善は単に設定温度を変えることではなく、窓の表面温度、空気の流れ、湿度、体の上下の温度差を、生活する人の位置で整えることだと捉えましょう。