学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
環境工学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。誘目性は、たくさんの物が見える中で、その色がどれほど人の注意を引くかという性質です。例えば、落ち着いた色の廊下に赤い消火器があると、視線がそちらへ向かいやすくなります。一般的な色相の比較では、赤や橙などの暖色は誘目性が高く、緑が最も高いとする本肢は不適当です。
ただし、「赤ならどんな場所でも最も目立つ」という絶対的な順位ではありません。赤い壁に赤い小さな標識を付ける場合と、白い壁に付ける場合とでは、背景との差が違います。色の明るさ、鮮やかさ、面積、周囲の色なども注意の向きやすさを変えます。本問は一般的な色相の傾向を問うものであり、背景条件を無視して緑を最上位に置けるわけではありません。また、注意を引くことと、細かな文字が読みやすいことは別です。目立つ見出しでも、背景との明るさの差が小さい文字は読みにくくなります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。放射は、物体が電磁波の形で熱をやり取りすることです。地面は上向きに熱を放射する一方、大気からの下向き放射も受けています。この差が実効放射です。晴れた夜は大気から戻る熱が少なく、地表が冷えやすくなります。「夜間放射」は地面から出た熱の全量ではなく、戻ってくる分を差し引いた正味の流出と理解します。雲がある夜との冷え方の違いにも関係します。
選択肢2
(2)適当です。日射による室内への熱の入り方には、窓を通り抜ける経路と、日射で熱くなった屋根や壁を通じて伝わる経路があります。冷房期の平均日射熱取得率は、これらを建物の外皮全体として評価する指標です。窓ガラスだけの遮熱性能と混同しないようにします。窓の庇を設ける対策も、屋根や壁からの侵入を抑える対策も、冷房負荷の減少につながります。
選択肢3
(3)適当です。騒音には低い音から高い音までが混ざり、同じ総合的な大きさでも不快さが異なります。NC値は周波数帯ごとの測定値を、室内騒音の評価用曲線と比較して求めます。全帯域の値を下回らせずに包み込める曲線のうち、最も小さい番号を採用する考え方です。平均を取って一つの大きな帯域を隠す方法ではないため、空調機の低い響きなども評価へ反映されます。
選択肢4
(4)不適当です。一般に誘目性が高いのは赤や橙などの暖色で、「緑が最も高い」という比較は誤りです。緑は安全や安心の表示に使われますが、その意味付けと目を引く強さは別の性質です。また、色の誘目性だけでは標識の良否は決まりません。遠くから見つける段階と、近づいて文字や形を読み取る段階を分け、背景との明るさの差や表示の大きさも併せて考えます。
周辺知識
環境工学の指標は、「何を、どの範囲で、どうまとめた数値か」を確かめると整理できます。夜間放射は熱の出入りの差、日射熱取得率は外皮を通して入る日射の熱、NC値は周波数帯別の騒音、誘目性は人の注意の向きやすさを扱います。同じ環境の評価でも対象が異なります。
色については、誘目性、視認性、可読性を区別しましょう。誘目性は目を引くこと、視認性は対象の存在や形を見分けやすいこと、可読性は文字を読み取りやすいことです。駅の案内板なら、まず標識を見つけ、次に矢印を判別し、最後に行き先を読むという流れに対応します。色相だけに頼らず、明るさの差、形、文字、配置を組み合わせると、色の見え方が異なる利用者にも伝わりやすくなります。赤と緑の違いだけで通行可否を示すより、文字や記号を添えるほうが情報を受け取りやすくなる、という設計上のつながりまで理解しておきます。