学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問24
問題・正答・学習用解説
問題
建築工事に関する用語とその説明の組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。| 用語 | 説明 | |
|---|---|---|
| 1. | ミルシート | 製鋼所で発行する、鋼材の化学成分、機械的性質などの試験結果が記されており、その材料がJIS等に適合していることを保証する規格品証明書 |
| 2. | ブリーディング | フレッシュコンクリート及びフレッシュモルタルにおいて、固体材料の沈降又は分離によって、練混ぜ水の一部が遊離して上昇する現象 |
| 3. | チョーキング | 塗膜が熱、紫外線、風雨などによって劣化し、塗膜の表面から粉化していく現象 |
| 4. | ボイリング | 掘削底面下方に被圧地下水を有する帯水層がある場合に、被圧地下水の圧力により掘削底面が持ち上がる現象 |
選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。記述されている、被圧地下水の圧力によって掘削底面が持ち上がる現象は「盤ぶくれ」です。ボイリングは、砂質地盤などで上向きの浸透水の力が砂粒を押し上げ、水と砂が沸き立つように動く現象を指します。どちらも地下水が関係しますが、土の動き方が異なります。
被圧地下水は、透水しにくい層などによって圧力を持った状態の地下水です。その上を掘って土の重さが減ると、下からの水圧に抵抗する力が不足し、底の地盤が一体的に持ち上がることがあります。これが盤ぶくれの基本的な仕組みです。
ボイリングでは、水が砂の粒の間を上へ流れ、その流れによる力が粒を支える重さに対抗します。強い上向き流れによって砂粒同士が押し合う力が弱まり、地盤が不安定になります。用語を「底が危ない現象」とだけ覚えると混同するため、水圧で底の層が持ち上がるのか、浸透流で砂粒が動くのかを区別します。選択肢1〜3は、それぞれの材料証明や劣化・分離現象の説明として適当です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:ミルシートは、製鋼所が発行する鋼材の検査証明書で、化学成分や引張強さなどの試験結果を示します。本肢の説明は適当です。鋼材の規格や材質を確認する資料ですが、現場では書類だけ見るのでなく、実際に納入された鋼材の表示や識別情報と対応することを確かめます。別の鋼材の証明書があっても、目の前の部材の品質は証明できません。また、材料製造時の証明であり、その後の加工や溶接、組立てまで自動的に合格とするものではありません。
選択肢2
選択肢2:ブリーディングは、まだ固まっていないコンクリートやモルタルの中で固体が沈み、水の一部が上へ分離する現象です。本肢の説明は適当です。表面に浮いた水は、雨水が入ったとは限らず、材料内部から上がってきた場合があります。過度な分離は、鉄筋下面の空隙や表面・打継ぎ部の品質などに影響します。水が見えたからそのままこてで押し込めばよいということではなく、打込みや仕上げの時期、養生の開始を適切に判断する必要があります。
選択肢3
選択肢3:チョーキングは、塗膜が紫外線や熱、風雨などで劣化し、表面が粉状になる現象です。本肢の説明は適当です。塗膜中で顔料などを結び付けている成分が劣化し、触ると手に粉が付くことがあります。単なる付着したほこりと区別して、既存塗膜の劣化状態を確認する手掛かりにします。塗替えの際に粉化した層を残すと、新しい塗膜が安定した面に付着できないおそれがあります。外観の汚れだけでなく、次の塗装の下地として適切かを調べる必要があります。
選択肢4
選択肢4:説明はボイリングではなく盤ぶくれなので不適当です。下方の帯水層にある被圧地下水が、掘削底の層を押し上げる状態を述べています。ボイリングは、砂質地盤などで上向きにしみ出す水の流れが砂粒を浮き上がらせる現象です。さらに、軟らかい粘性土が外側から底へ回り込むヒービングとも区別します。地下工事では、同じ底面の盛上りや不安定でも原因が違えば対策も変わるため、地層の種類と地下水の流れ・圧力を確認することが重要です。
周辺知識
専門用語を理解するときは、「対象」「起きること」「原因」の三つに分けると整理しやすくなります。ブリーディングはフレッシュコンクリートで水が上へ分離する現象、チョーキングは既存塗膜が劣化して粉になる現象です。ミルシートだけは現象ではなく、鋼材の品質を確認する書類です。
地下工事の三つの不安定現象も区別しましょう。ヒービングは軟弱な粘性土の回り込み、ボイリングは砂質土での上向きの浸透流、盤ぶくれは下方の被圧水による底の押上げが基本です。水が存在するだけで全部をボイリングと呼ぶことはできません。土質と水の作用の仕方まで確認します。
対策を考えるときも、原因の把握が先です。地中の水圧を下げる必要があるのか、土の回り込みを抑える必要があるのかで方法が変わります。仕上材なら、表面の粉を除去するのか、水分の分離を管理するのかが異なります。用語を具体的な現象や確認作業へ置き換えれば、名称の暗記だけよりも実際の施工と結び付きます。