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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問25

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の工事請負契約又は監理業務委託契約に関する次の記述のうち、民間(七会)連合協定「工事請負契約約款」(令和5年(2023年)1月改正)又は四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」(令和2年(2020年)4月改正)に照らして、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    工事請負契約において、発注者は、監理者の意見に基づいて、受注者の現場代理人、主任技術者、監理技術者、監理技術者補佐、専門技術者及び従業員並びに下請負者及びその作業員のうちに、工事の施工又は管理について著しく適当でないと認められる者があるときは、受注者に対して、その理由を明示した書面をもって、必要な措置をとることを求めることができる。
  2. (2)
    工事請負契約において、発注者は、引き渡された契約の目的物に契約不適合があるときは、監理者に対し、書面をもって、目的物の修補又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
  3. (3)
    監理業務委託契約において、委託者は、受託者に債務の不履行があった場合(委託者の責めに帰すべき事由によるときを除く。)には、原則として、受託者に書面をもって、委託者が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、この契約の全部又は一部を解除することができる。
  4. (4)
    監理業務委託契約において、委託者及び受託者は、受託者が監理業務を行うに当たり協議をもって決定した事項については、原則として、速やかに書面を作成し、記名・押印する。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢2です。工事請負契約で、引き渡された建物が契約内容に適合しない場合、修補などの履行の追完を請求する相手は「受注者」です。本肢の「監理者に対し」が誤っています。工事を請け負い、契約に合う建物を完成・引渡しする義務を負うのは受注者だからです。
契約不適合とは、建物の種類、品質、数量などが契約で約束した内容と合わないことです。履行の追完は、その不足を後から補って、約束どおりの状態にすることを意味します。例えば契約で定めた性能に届かない施工部分を修補する場合、工事請負契約の相手へその対応を求めます。
監理者は、工事が設計図書に照らして適切か確認するなどの監理業務を担う立場です。監理業務に問題があれば別の責任が生じる可能性はありますが、それによって工事請負契約の追完請求先が監理者へ変わるわけではありません。まず「どの契約の」「どの義務について」「誰に請求するか」を整理します。二種類の契約が一問に並んでいるため、発注者・受注者と委託者・受託者を混同しないことが大切です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:施工や管理について著しく不適当な者がいる場合、発注者は監理者の意見に基づき、理由を明示した書面で受注者へ必要な措置を求めることができます。本肢は適当です。発注者が現場の作業員へ直接、雇用上の処分をするという意味ではありません。工事請負契約の相手である受注者へ、施工体制を適切にする対応を求めます。監理者の意見と理由の書面化を伴うのは、単なる好みで人員変更を求めることと区別し、問題点を明確にするためです。

選択肢2

選択肢2:「監理者に対し」を「受注者に対し」へ直します。工事目的物の修補や代替物の引渡しによる追完は、工事請負契約の義務を負う相手に求めます。監理者は工事を確認する立場だからといって、施工を請け負った当事者に代わるわけではありません。設計・監理に独自の不履行があれば、その契約や事実関係に応じて別に検討します。現場に関係する人をひとまとめにせず、約束した仕事と契約の相手を対応させると、この請求先の誤りを見つけられます。

選択肢3

選択肢3:債務の不履行は、契約で約束した義務が果たされないことです。本肢のように、委託者が相当の期間を定めて書面で履行を求め、その期間内にも履行がなければ原則として契約を解除する手順は適当です。「催告」は、義務を果たすよう正式に求めることをいいます。何も知らせず直ちに解除する原則ではなく、まず履行する機会を与えます。ただし、本肢の括弧書きのように委託者自身の責めに帰すべき事情による場合を除くなど、定められた条件も確認します。

選択肢4

選択肢4:監理業務で協議して決めた事項を、原則として速やかに書面化し記名・押印する本肢の取扱いは適当です。委託者は仕事を依頼する側、受託者はその業務を引き受ける側です。口頭だけでは、作業範囲、実施時期、費用などについて後から認識が食い違う場合があります。書面は、誰と誰が何を合意したかを確かめるための記録です。本問は指定された令和2年改正の約款に照らす問題なので、一般的な最近の電子手続の印象だけで、設問の書面化の扱いを否定しません。

周辺知識

建物をつくる際には、建築主が施工会社と結ぶ工事請負契約と、設計者や監理者へ業務を依頼する契約などが並行します。工事請負では発注者と受注者、業務委託では委託者と受託者という呼び方を使います。建築主が同じ人でも、相手と約束した仕事が異なるため、責任や請求の内容を分けて考えます。
契約の問題では、主語と相手を入れ替えただけで誤りになることがあります。建物を修補する義務を誰が負うか、監理業務の履行を誰へ求めるかを、契約関係の図にすると理解しやすくなります。監理者が現場の状況を把握していることと、受注者の工事義務を引き受けていることは同じではありません。
また、理由や合意を文書に残すことは、後で内容を確認するために役立ちます。必要な措置を求める書面、履行を催告する書面、協議結果の書面は、それぞれ目的が違います。誰が、誰へ、何を、どの条件で行うのかを一つずつ読むことで、長い約款の選択肢も整理して判断できます。