学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問21
問題・正答・学習用解説
問題
断熱工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。発泡プラスチック断熱材を黒色のシートで密着して覆うと、日射を吸収して温度が上がり、熱もこもりやすくなります。その結果、断熱材が反ったり変形したりするおそれがあります。屋外保管では、直射日光や雨を避け、覆いの色や材料との隙間・通気にも配慮します。
断熱材は熱を伝えにくい材料ですが、どれほど高温になっても変形しない材料ではありません。黒い表面は一般に日射を吸収しやすく、覆いを密着させると空気が流れて熱を逃がすことも難しくなります。「断熱材だから熱に強い」「シートで覆えば方法は問わない」という二つの思い込みを避けます。
材料が変形すると、設置時に隙間ができ、建物の断熱層を連続させにくくなります。施工前の保管方法が、完成後の断熱性能にも影響するのです。他の選択肢は、欠落部分を隙間なく補修し、防湿層を所定の側へ連続させ、隠れる前に確認する対応です。材料を守ることと、施工後の層を途切れさせないことを一続きに考えましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:黒色シートを断熱材へ密着させた保管方法が不適当です。黒い覆いが日射で高温になり、その熱が材料へ伝わってこもると、発泡プラスチックが変形するおそれがあります。覆いで雨や紫外線を遮ることは必要ですが、熱をためない色や掛け方、材料との隙間などを考慮します。保管中に反った板を無理に施工すると、継目や下地との間に隙間が残りやすくなります。施工する瞬間の作業だけでなく、搬入から保管まで品質管理の対象であることを示す肢です。
選択肢2
選択肢2:型枠を外した後に断熱材が欠けた部分は、同じ断熱材を使って隙間なく補修する本肢の方法が適当です。仕上げに支障がない条件も確認しています。コンクリートだけが露出した部分を残すと、その部分が熱を通しやすい経路になり、表面温度の低下や結露の原因にもなります。補修では面積を埋めるだけでなく、周囲との継目や厚さ、取付け状態を整えます。全体の大部分に断熱材があっても、一部の欠損が建物の性能に影響するため放置できません。
選択肢3
選択肢3:無機繊維系断熱材にはグラスウールやロックウールなどがあり、繊維の間の空気によって熱を伝えにくくします。本肢のように、天井下地で隠れる前に、断熱材間の隙間と室内側の防湿層を目視確認する対応は適当です。防湿層は室内の水蒸気が断熱層の冷たい部分へ入り込むことを抑えます。材料が入っているという確認だけでは、継目の隙間や表裏の誤りを見落とします。見える段階で連続性と向きを確かめ、手直しできる時期に検査することが重要です。
選択肢4
選択肢4:別張りのポリエチレンフィルムの継目を木下地のある部分で30mm以上重ねる本肢の納まりは適当です。下地のある位置なら、重ねた部分を固定・押さえやすく、継目が開くことを防げます。支えのない空中でフィルム同士を重ねただけでは、たわみや施工中の力で隙間が生じるおそれがあります。防湿層は小さな切れ目からも湿気が入り得るため、重ね幅だけでなく所定の固定や取合い処理も必要です。断熱材と防湿フィルムは別の役割を持つ層として確認します。
周辺知識
断熱層は熱の移動を抑え、防湿層は水蒸気の入り方を抑えます。この二つは同じ機能ではありません。繊維系断熱材が十分な厚さで入っていても、防湿層に隙間があると室内の湿気が冷たい側へ入り、内部で結露する場合があります。断熱材の厚さと、防湿層の連続性を別々に確認します。
断熱の欠損部分は、暖かい室内と冷たい外側をつなぐ熱の通り道になりやすくなります。厚い上着を着ても、途中に穴があればそこから冷えることに似ています。断熱材を詰め込めばよいというものでもなく、製品に合った厚さと形を保ち、隙間なく施工することが必要です。
保管段階では、雨、日射、熱、荷重などから材料を守ります。完成後は壁や天井の中に隠れるため、施工中に向き、隙間、継目、欠損を確認します。保管、取付け、補修、隠蔽前の検査が一つの流れになると理解すれば、本問の四つの作業がすべて最終的な断熱性能に関係することが分かります。