学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
計画供用期間の級が「標準」の建築物に使用するコンクリートの計画調合に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。粒が角張り、実積率の小さい粗骨材は、粒同士が引っ掛かりやすく、隙間も多い材料です。同じスランプ、つまり同程度の流れやすさを得ようとすると、一般に必要な単位水量は増える方向になります。「単位水量を小さくした」という説明は、この関係を逆にしています。
実積率は、容器に骨材を詰めたとき、容器全体の体積のうち石そのものが占める割合です。例えば実積率60%なら、残りの約40%は粒と粒の間の隙間です。この値が小さければ隙間が多く、それを満たし、粒を動きやすくするセメントペーストなどがより必要になります。
ただし、水を増やせばよいという意味ではありません。セメント量を変えずに水だけ増やすと、水セメント比が上がり、強度や耐久性を損なうおそれがあります。必要な流動性を確保しながら、骨材の粒形・粒度、混和剤、水とセメントの量を含めて調合を見直します。本問は骨材の性質が必要水量へ及ぼす方向を問うています。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:設計基準強度は構造上必要な強度、耐久設計基準強度は長く使うために必要な強度です。両方を満たすには、大きいほうを採用します。さらに、標準的に養生した試験体と実際の構造体の強度差を考慮する構造体強度補正値を加え、調合管理強度とします。例えば二つの基準強度が24と27、補正値が3なら、調合管理強度は30です。平均を取って25.5にするのではなく、厳しい要求を満たしたうえで補正する考え方です。
選択肢2
選択肢2:水セメント比は、水の質量をセメントの質量で割った割合です。本問の計画供用期間「標準」、普通ポルトランドセメントを使う普通コンクリートでは、最大65%とする取扱いは適当です。セメント300kgに対して水195kgなら65%になります。ただし、上限以内であればどの建物にも十分という意味ではなく、必要な強度などに応じて、さらに小さな値を採用する場合があります。最大値は越えてはいけない境界であり、必ず採用する目標値ではありません。
選択肢3
選択肢3:角張った粒は丸みのある粒より動くときに引っ掛かりやすく、実積率が小さい骨材は詰めたときの隙間が多くなります。そのため、同じスランプを得るための単位水量は、通常は増える方向です。本肢の「小さくした」が不適当です。単位水量とはコンクリート1m³中の水の質量で、単位はです。骨材の実積率は体積の詰まり方、水セメント比は材料の質量比なので、どちらも百分率で表せるからといって同じ性質の値と考えないようにします。
選択肢4
選択肢4:本問の条件では、普通コンクリートの単位セメント量の最小値を270とする取扱いは適当です。これは出来上がるコンクリート1m³に含めるセメントの質量の下限を示します。セメントペーストは骨材同士を結び付け、隙間を満たす役割があるため、圧縮強度の数字だけでなく、施工しやすさや緻密さの確保にも必要です。270kgを入れれば必ず合格ということではなく、水セメント比、必要強度、単位水量などの条件も同時に満たします。
周辺知識
コンクリートは、石に相当する粗骨材、砂に相当する細骨材、セメント、水などを混ぜた材料です。石と砂の間をセメントと水のペーストが満たし、セメントの水和反応によって固まります。水が蒸発するだけで固まる材料ではないため、必要な水分を保つ養生も重要です。
調合では「打ち込める柔らかさ」と「固まった後の強さ・耐久性」を同時に満たします。スランプは固まる前の軟らかさの目安であり、大きければ必ず強いという関係はありません。水を増やすと流れやすくなる一方、余分な水が残す空隙によって強度や緻密さが下がるおそれがあります。
数字の役割を整理すると、単位水量・単位セメント量は1m³に入れる材料の質量、水セメント比は両者の比、調合管理強度は満たすべき強度の基準です。どれか一つだけを調整して終わりにはできません。骨材の形が変わった場合にも、必要な流動性とこれらの品質条件を一緒に確認するのが調合設計です。