学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問9
問題・正答・学習用解説
問題
型枠工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。高さが3.5mを超えるパイプサポートを型枠支保工の支柱に使う場合、水平つなぎは高さ2m以内ごとに二方向へ設けます。「3.5m」は追加の安定措置が必要になる支柱の高さであり、つなぎ材を設ける間隔ではありません。本肢では、この二つの数字が入れ替わっています。
パイプサポートは、床や梁の型枠を下から支える伸縮式の鋼製支柱です。固まる前のコンクリート、型枠、作業員や資材の重さを受けます。細長い支柱は、鋼材が押し潰される前に横へ曲がり、急に支える力を失うことがあります。この現象を座屈といいます。
中間に水平つなぎを設けると、支柱が自由に横へ曲がれる長さを短くできます。さらに二方向につなぐのは、縦横どちらへ倒れる動きも抑えるためです。つなぎ全体が一緒に動いてしまっては効果がないので、その変位を防ぐ措置も必要です。数字だけでなく、「長い支柱の横移動を途中で止める」という目的から理解しましょう。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:キャンバーは、荷重で下へたわむことを見越して、あらかじめ中央を少し上へ反らせておく形状です。短いスパンでは荷重によるたわみが小さく、むくりが残りやすくなります。上面の仕上がり高さだけを一定にすると、上へ反ったデッキ部分ではコンクリート厚さが薄くなるため注意が必要です。例えば下面が想定より10mm高ければ、その部分の厚さは同じだけ減ります。型枠の天端とコンクリート上面の両方を確認し、必要なスラブ厚を確保します。
選択肢2
選択肢2:せき板は、コンクリートに直接接して形をつくる板です。木材の成分などの影響で、その接触面だけ硬化が悪くなる場合があります。現場でセメントペーストを塗り、2〜3日後に剥がして接触面の状態を調べる方法は、この相性を確かめる簡易な確認です。ペーストはセメントと水を練ったものなので、実際の硬化反応に近い状態を試せます。板の見た目がきれいかだけでは判断できない、化学的な硬化阻害を確かめる点に意味があります。
選択肢3
選択肢3:支柱高さ3.5m超に対し、水平つなぎは高さ2m以内ごとに二方向へ設け、つなぎ材の変位も防ぎます。3.5m間隔では、必要な中間拘束が不足するため不適当です。一本だけが倒れないようにするだけでなく、支柱群がまとまって横へ動くことも防ぐ必要があります。水平つなぎを付けたという事実だけでなく、間隔、方向、端部の固定を確認します。細長い定規を縦に押すと途中で曲がりやすいことを思い浮かべると、中間を押さえる理由が分かります。
選択肢4
選択肢4:腰壁は窓の下にある低い壁です。その上端は通常の壁のように上階まで型枠で囲まれていないため、隣の柱や壁からコンクリートを打つと、上端から押し出されて盛り上がることがあります。端部にふたを設けるのは、この押出しを抑えるためです。一方、全面を見えなくすると中まで詰まったか確認しにくいので、それ以外の開口で充填状況を点検します。形状の保持と内部の確認を同時に満たす納まりであり、本肢の対応は適当です。
周辺知識
型枠工事は、完成時の形をつくる「せき板」と、その重さや圧力を受ける「支保工」を組み合わせた工事です。コンクリートがまだ液状に近い段階では、床の型枠には下向きの重さ、壁の型枠には横向きの圧力が作用します。完成した鉄筋コンクリートの強さを、打設直後から期待することはできません。
支保工では、支柱の材料強度だけでなく、長さと横方向の拘束が安定性を左右します。同じ太さの棒でも長いほど曲がりやすいため、中間で横移動を止める必要があります。水平つなぎを設けても、接合が緩かったり、全体を固定していなかったりすれば、必要な安定を確保できません。
仕上がりの品質には、板の形状、反り、コンクリートとの相性も関係します。むくりが残ると床厚が変わり、せき板の成分が不適切だと表面だけ硬化不良になる場合があります。型枠を見るときは、「倒れないか」「寸法が合うか」「表面が正常に固まるか」という三つの観点に分けると、検討する内容が整理できます。