学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。ガス圧接部の中心軸の偏心量は、鉄筋径の5分の1以下が基準です。本肢の4分の1はそれより大きく、しかも、この偏心過大への処置は再加熱による修正ではありません。不良な圧接部を切り取り、再圧接する必要があります。判定基準と補修方法の二段階で確認する問題です。
偏心とは、つなぐ二本の鉄筋の中心線が横へずれている状態です。鉄筋径を仮に20mmとすれば、基準は 以下ですが、4分の1の偏心は次のとおりです。
分母の数字が小さい4分の1のほうが、ずれ量は大きくなることに注意します。
圧接では鉄筋の端を加熱して押し付け、一体の継手にします。外観の異常には、偏心、折れ曲がり、ふくらみ不足など種類があり、すべて同じ方法で直せるわけではありません。「熱をかければ形を直せそう」という感覚で処置を選ばず、不良の種類に対応した方法を用いることが、継手の力を伝える性能を守ります。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:鉄筋中心軸の偏心量の基準は鉄筋径の5分の1以下です。4分の1は0.25倍、5分の1は0.20倍なので、本肢は許容値を超えます。偏心が過大な圧接部は切り取って再圧接するため、「再加熱して修正した」という処置も適切ではありません。偏心は中心線の横ずれであり、中心線が接合部で角度を持つ折れ曲がりとは異なります。検査では、どの形状項目が不良なのかを特定してから、対応する補修方法と再検査を選びます。
選択肢2
選択肢2:梁の下端筋は、梁の下側に配置する長手方向の鉄筋です。打込み中に沈んだり型枠に接触したりすると、鉄筋を覆うコンクリートの厚さである「かぶり」が不足します。本肢のように、端部から約0.5m、その他を約1.5m間隔として鋼製スペーサーを配置する取扱いは適当です。スペーサーは単なる仮置きの台ではなく、施工中の荷重を受けながら鉄筋を所定の位置に保つ部材です。配置後にも、作業員の移動やコンクリート打込みでずれないか確認します。
選択肢3
選択肢3:スパイラル筋は、らせん状に連続して巻く鉄筋で、内部の主筋やコンクリートを囲むように配置します。外側寸法を所定の寸法から±5mm以内に加工する取扱いは適当です。例えば指定外側寸法が400mmなら、395〜405mmがこの寸法管理の範囲です。大きく作りすぎるとかぶりが減り、小さく作りすぎると内部の主筋配置などに影響します。「外側寸法」なのか、鉄筋の中心線の寸法なのかを区別し、測る位置を同じにして検査することも大切です。
選択肢4
選択肢4:本肢は、片持ちでない小梁の下端筋、鉄筋種別SD345、普通コンクリート、特記なしという条件です。この場合の直線定着を20dとする扱いは適当です。dは鉄筋の呼び名の数値なので、D19なら になります。定着とは、鉄筋の力を周囲のコンクリートへ伝えるため、支持する部材の中へ十分に埋め込むことです。この20dを、片持ち梁や柱、大梁の主筋など別の条件へそのまま使わないようにします。
周辺知識
鉄筋工事の寸法は、それぞれ役割が違います。かぶり厚さは鉄筋を火やさびから守るコンクリートの厚さ、鉄筋のあきはコンクリートが回り込むための隙間、定着長さは鉄筋の力を周囲へ伝えるための埋込み長さです。見た目が整っていても、これらの寸法が不足すれば必要な性能を得られません。
継手は鉄筋同士をつなぐ場所で、定着は鉄筋の端からコンクリートへ力を渡す部分です。ガス圧接継手では、二本の鉄筋が一直線で連続したように働くことが求められます。中心線が大きくずれると、まっすぐ引っ張るだけでなく余計な曲げも生じるため、偏心の管理が必要になります。
数値を覚える際は、割合と実寸を一度対応させると理解しやすくなります。5分の1は直径の20%、20dは呼び径の20倍です。前者は許せるずれの上限、後者は必要な長さを表すので、同じ鉄筋径に関する数字でも意味が違います。部位、鉄筋種別、コンクリート強度など、適用条件を数値と一緒に確認しましょう。