学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
地業工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。場所打ちコンクリート杭の鉄筋かごで、主筋が太いことを理由に主筋と帯筋を溶接してはいけません。主筋は建物の力を受ける重要な鉄筋です。局所的に強く加熱すると材質や断面の状態に悪影響が生じるおそれがあり、「溶接したうえに鉄線も巻いたから丈夫」とは判断できません。
鉄筋かごは、縦方向の主筋を、周囲を囲む帯筋などでまとめた立体的な骨組みです。通常は所定の鉄線結束などで組み立て、吊上げや建込みのときにも形が崩れないよう補強します。構造上重要な主筋への安易な溶接と、設計・施工方法が定められた補強材の接合は区別する必要があります。
この問題では、杭を正しい位置まで入れるだけでなく、地盤を改良した後の環境性能、基礎の支持面、鉄筋の性能を守ることも問われています。選択肢1〜3は、材料や地盤の条件を実物・試験で確認した対応です。選択肢4だけが、太い鉄筋なら加熱してもよいという根拠のない判断を加えています。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:セメント系固化材は、土と混ぜて化学反応を起こし、地盤を固くする材料です。使用する材料や土の性質によっては、六価クロムが水へ溶け出す可能性があります。そこで、実際に使う予定の固化材と現場の土を組み合わせて試験します。材料単体の資料だけでは、その現場での反応を確かめたことにはなりません。強度が十分でも環境基準を満たすとは限らないため、地盤改良では「荷重を支える性能」と「有害物質の溶出」を別の確認項目にします。
選択肢2
選択肢2:直接基礎は、杭を介さず基礎の底面で地盤に荷重を伝えます。支持面が浅層地盤改良によって強固で良質になっている本肢では、その表面に直接捨てコンクリートを打つ地肌地業を採用できます。捨てコンクリートは、墨出しや鉄筋・型枠の施工をしやすくする平らな下地です。砂利を敷く工程を省けるのは、支持面の状態が適切だからです。軟らかい未改良の土や、乱されて泥状になった面にも同じ方法を無条件で使える、という意味ではありません。
選択肢3
選択肢3:オーガーは回転しながら地面を掘る器具です。硬い地盤に入ると回転抵抗が増し、駆動する電動機の電流値にも変化が現れます。ただし、大きな石などでも抵抗は変わるため、電流だけで支持地盤と断定できません。地層を示す土質柱状図や硬さの目安であるN値、実際に排出された土の種類を重ね合わせて判断します。事前調査の「この深さにこの地層があるはず」という予測を、施工時の機械の反応と実物の土の両方で確認する方法です。
選択肢4
選択肢4:主筋と帯筋は鉄線などの所定の方法で結合し、主筋の性能を損なわないように組み立てます。鉄筋が太くても、溶接熱による影響がなくなるわけではありません。後から鉄線で結束しても、すでに加えた熱の影響を取り消すことはできないため、本肢は不適当です。かごの変形を防ぐ必要があるなら、補強リングなどを含めた適切な組立て方法を検討します。「組立て時に形が保てること」と「完成後に必要な構造性能が保たれること」の両方を満たします。
周辺知識
地業とは、基礎の下で建物の荷重を地盤へ安全に伝えるための工事です。杭をつくる工事、砂利を敷いて締め固める工事、地盤を改良する工事などが含まれます。建物の柱や梁が丈夫でも、その下の地盤が大きく沈んだり、支持力が足りなかったりすれば、建物全体に支障が生じます。
地中の工事は、完成すると見えなくなる点が大きな特徴です。支持層への到達、孔底の状態、鉄筋の組立て、コンクリートの施工などを、その都度記録して確かめます。写真、施工深さ、電流値、土質資料といった異なる情報を残すのは、後から杭の外観を見て確認することが難しいためです。
試験の役割も分けて考えましょう。六価クロム溶出試験は環境への影響、地盤の強度確認は荷重を支える能力、鉄筋の検査は材料と配置の適否を調べます。一つに合格しても、他が自動的に合格になるわけではありません。「何を守るための確認なのか」を各試験に対応させると、似た名称の検査も混同しにくくなります。