学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問27
問題・正答・学習用解説
問題
木材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
繊維飽和点から気乾状態へ乾燥する間、木材の弾性係数が小さくなるという記述が逆です。弾性係数は、同じ応力度に対してどれだけ変形しにくいかを表す値です。この範囲では、一般に含水率が低くなるほど弾性係数は大きくなります。
木材の水分は、細胞の空間にある自由水と、細胞壁に含まれる結合水に分けられます。繊維飽和点は、自由水がほぼなくなり、細胞壁が水分で満たされた状態です。そこから乾燥すると細胞壁の水分が減り、寸法が縮むとともに、一般に強度や弾性係数が増す方向へ変わります。気乾状態は、その場所の空気の温湿度とほぼつり合った水分状態です。
したがって生材から乾燥材へ向かう全ての範囲を、同じ単純な関係として扱うのではなく、細胞壁の水分が変化する範囲を見ます。また、乾燥すれば品質が必ず向上するわけではなく、乾燥割れや反りが生じることもあります。材料としての一般的な性質の変化と、実際の部材に生じる欠点を分けて理解する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)繊維飽和点以下で含水率が下がると、細胞壁の結合水が減り、一般に弾性係数は大きくなります。記述の「小さくなる」は逆です。弾性係数が大きい材料ほど、同じ形状・荷重での弾性的な変形は小さくなります。ただし木材は繊維に平行か直角かでも性質が大きく違い、節や割れなどの影響も受けます。水分だけから個々の木材の性能を断定せず、同じ方向や品質条件での一般的な傾向を述べた問題として読みます。
選択肢2
(2)積雪は短期の荷重組合せでも、地震や瞬間的な強風に比べて長く作用することがあります。木材の強度や変形は荷重が続く時間の影響を受けるため、積雪時の短期許容応力度は通常の短期値を所定の割合で低減します。短期という名称が同じでも、作用時間の性質まで同じではありません。荷重を受けた直後に耐えられるかだけでなく、数日以上続く荷重に対して性能を保つかという違いを反映した扱いです。
選択肢3
(3)熱伝導率は、温度差があるとき材料の中をどれだけ熱が伝わりやすいかを表します。木材は内部に空隙を持ち、一般に普通コンクリートより熱伝導率が小さいため、熱を伝えにくい材料です。同じ室温でも木の床がコンクリートより冷たく感じにくいことにも関係します。ただし断熱性能は厚さや含水率、繊維方向などにも影響されます。また、熱を伝えにくいことと、燃えないことや耐火構造の条件を満たすことは別です。
選択肢4
(4)木材腐朽菌が活動するには、酸素、適した温度、水分、栄養源が必要です。どれか一つを欠けば腐朽の進行を防げるという考え方は適切です。建築物では木材自体が栄養源となり、酸素や温度を完全に制御することも難しいため、雨漏り・結露・地面からの湿気を防いで乾いた状態を保つことが特に重要です。表面だけが一時的に乾いていても内部が湿っている場合があるため、水の侵入と排出の経路を考えます。
周辺知識
木材の含水率は、木材に含まれる水の質量を、完全に乾かした木材の質量で割り、百分率で表したものです。分母が乾燥木材の質量なので、生材では100%を超えることもあり、「全体の質量に占める水分の割合」とは定義が違います。
木材は方向によって性質が違う材料です。繊維方向には比較的強く、繊維と直角方向ではめり込みや割裂などが問題になります。乾燥による収縮も方向で違い、それが反りや割れの原因になります。設計では樹種名だけでなく、等級、含水状態、繊維方向、節や欠点などに応じた性能を使います。
長期間の荷重で変形が増えるクリープや、湿潤による性能低下・腐朽も木造の計画に関わります。梁の強さが足りていても長期のたわみが問題になる場合があり、また部材が湿れば当初の品質を保てない可能性があります。材料選定、乾燥、雨仕舞、防湿・換気、点検できる構造をつなげて考えることが、木材の長所を長く使うために必要です。