資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問28

問題・正答・学習用解説

問題

コンクリートに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    コンクリートの引張強度は、一般に、圧縮強度が大きいほど大きい。
  2. (2)
    コンクリートの中性化速度は、一般に、圧縮強度が大きいほど遅い。
  3. (3)
    乾燥収縮によるコンクリートのひび割れは、一般に、単位水量が大きいほど発生しやすい。
  4. (4)
    水和熱及び乾燥収縮によるコンクリートのひび割れは、一般に、単位セメント量が小さいほど発生しやすい。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

単位セメント量が小さいほど、水和熱や乾燥収縮によるひび割れが生じやすいという記述が逆です。単位セメント量は、コンクリート1 m3\displaystyle 1\,\mathrm{m^3}に含まれるセメントの質量です。一般にこの量が多いほど、セメントと水の反応による発熱や、セメントペースト部分の収縮の影響が大きくなります。
セメントは水と反応する水和によって硬化し、その際に熱を出します。厚い部材では内部の熱が逃げにくく、温度が上がった後に冷える過程で縮もうとします。この収縮が地盤や既に固まった部分などに拘束されると、コンクリートへ引張応力が生じます。コンクリートの引張強度を超えると、温度ひび割れにつながります。
乾燥収縮でも、自由に縮めるなら変形するだけですが、周囲に拘束されると引張応力が発生します。単位水量やペースト量が多い調合は、この収縮の影響を増やしやすくなります。ただしセメントを減らせばよいという単独の判断ではなく、必要な強度、施工性、耐久性を確保しながら調合と養生を計画します。ひび割れは、縮もうとする性質と、それを妨げる拘束の組合せで理解します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)圧縮強度が高いコンクリートほど、一般に引張強度も大きくなる傾向があります。ただしコンクリートは圧縮に比べて引張りに弱く、両者が同じ割合で増えるわけではありません。圧縮強度が2倍になったから引張強度も必ず2倍と計算することはできません。高強度コンクリートでも、曲げによる引張側のひび割れや、拘束された温度・乾燥収縮の検討は必要です。強くなる傾向と、引張りを無視できることを区別します。

選択肢2

(2)同様の材料・環境条件では、圧縮強度の高い緻密なコンクリートほど二酸化炭素が内部へ入りにくく、中性化の進み方は一般に遅くなります。中性化は、コンクリートの高いアルカリ性が二酸化炭素との反応で失われる現象です。ただしセメントの種類、養生、ひび割れ、湿度なども速度に影響します。圧縮強度だけで耐久性を完全に決めるのではなく、水や気体の侵入しやすさと、鉄筋までのかぶり厚さも考えます。

選択肢3

(3)単位水量はコンクリート1 m3\displaystyle 1\,\mathrm{m^3}に使う水の質量です。一般にこれが多いほど、硬化後の乾燥に伴う収縮が大きくなり、拘束された場合にひび割れが生じやすくなります。水を増やすと打込みやすく感じても、硬化後の品質には不利となる場合があります。所要の流動性は、骨材や混和剤なども利用して確保します。単位水量と、水の質量をセメントの質量で割る水セメント比は別の指標なので、混同しないことが大切です。

選択肢4

(4)一般に単位セメント量が多いほど、水和に伴う発熱とペースト部分の収縮の影響が増し、条件によってひび割れが生じやすくなります。「小さいほど」とした点が誤りです。特に厚い部材では内部の温度上昇とその後の冷却を考えます。ただしひび割れは調合だけで一律に決まらず、部材寸法、拘束、温度差、養生などにも左右されます。必要強度を確保した上で、熱の発生と逃げ方、収縮を妨げる条件を合わせて検討します。

周辺知識

コンクリートを調合するときは、砂・砂利などの骨材のすき間を、セメントと水のペーストが満たすと考えられます。骨材は体積の多くを占め、ペーストに比べて乾燥収縮が小さいため、適切な骨材量や粒度も収縮の抑制に関わります。
水セメント比は強度や緻密さに大きく影響し、単位水量や単位セメント量は体積当たりの水・ペーストの量に関係します。同じ水セメント比でも、両方の量を増やせばペーストが増えるため、乾燥収縮や水和熱の条件は同じとは限りません。似た調合指標でも何を比較しているかが違います。
ひび割れは、材料が伸ばされる応力と、その時点の引張強度との関係で生じます。乾燥や冷却は材料を縮ませますが、周囲がその動きを止めると材料は引っ張られます。打設区画や順序、養生、目地、温度管理などは、この収縮と拘束を調整する方法です。強度試験の合格だけでなく、完成した構造の中でどのように変形するかを考える必要があります。