学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋コンクリート構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
クリープによるたわみを減らすため、圧縮側の鉄筋を減らすという記述が誤りです。クリープは、コンクリートへ一定の力が長く作用すると、時間とともに変形が増える現象です。梁の圧縮側が次第に縮むと曲がりが大きくなり、床や梁の長期たわみが増えます。
圧縮側の鉄筋は、コンクリートと付着して一緒に変形し、圧縮力の一部を分担します。鋼材は常温の通常の応力度範囲では、コンクリートのような大きなクリープを生じないため、圧縮鉄筋を確保することは時間に伴う縮みを抑える側に働きます。引張鉄筋量を同じにしたまま圧縮鉄筋を減らせば、コンクリートの変形を抑える効果は小さくなり、目的と逆です。
たわみを減らす方法としては、必要な圧縮鉄筋を増すことや、部材の曲げ剛性を高めることなどを考えます。ただし配筋を変更すれば曲げ耐力や定着、施工のしやすさも変わるため、全体を確認します。長期たわみの問題を、荷重をかけた直後の弾性たわみや、破壊時の強さだけで判断しないことが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)梁せいと引張鉄筋量を変えずに幅を広げると、同じ引張鉄筋力をより広いコンクリートで受け止められます。引張鉄筋比や平均せん断応力度も小さくなり、圧縮側の負担や急なせん断・付着の破壊に対する余裕を得やすくなります。そのため、曲げ降伏する梁の靱性を高める方法として適切です。主筋を増やして曲げ耐力だけを大きくする場合とは異なり、周囲のコンクリート側の余裕を増す対策です。
選択肢2
(2)圧縮鉄筋は、コンクリートの圧縮変形を分担し、クリープによる曲がりの増加を抑えます。これを減らすと、長く荷重が作用した際に圧縮側が縮むのを抑える効果が弱くなるため、たわみを減らすという目的に合いません。圧縮鉄筋は破壊時の耐力のためだけにあるのではなく、使用中の長期変形にも役立ちます。梁の上側か下側かは曲げの向きで変わるので、本問では「圧縮側」という役割で判断します。
選択肢3
(3)通常の耐力壁では、梁や柱の主筋に比べて付着割裂が支配的な破壊となりにくく、所定の構造細目等を満たす一般的な設計では、付着割裂破壊の検討を省略する扱いができます。壁の広い範囲へ配筋と力が分散し、梁・柱のように限られた主筋へ大きな付着要求が集中する状況とは異なります。ただし、鉄筋の定着や継手、特殊な端部・開口部まで無条件に検討不要となる意味ではありません。
選択肢4
(4)フィーレンディール架構は、斜材を使わず、柱と上下の梁を剛接した格子で力を渡す構造です。下階の柱が抜けると、その上の荷重を周囲へ運ぶため、上下の梁に軸方向の押し引きも生じます。床を伸び縮みしない剛床とすると、その軸変形や力の分担を適切に表せない場合があります。剛床を仮定せず、梁の軸力を含めて断面算定する記述は、実際の荷重経路に合わせた適切な扱いです。
周辺知識
荷重をかけた直後の弾性変形と、何か月・何年も荷重を支えた後の変形は同じではありません。コンクリートではクリープに加え、乾燥による収縮やひび割れによる剛性低下が長期たわみに影響します。床が過度に下がると、仕上げのひび割れ、排水勾配の不足、建具の開閉不良など、破壊に至らなくても使用上の支障が生じます。
鉄筋とコンクリートが一緒に変形することが、長期の力の分担にも効きます。圧縮コンクリートが縮もうとすると圧縮鉄筋がそれを抑え、時間とともに力の分担が変わります。したがって、鉄筋をどちら側へどれだけ入れるかは、終局耐力だけでなく使用性にも関係します。
また、骨組の形が変わると梁の役割も変わります。普通の床梁として鉛直曲げだけを受けると想定していた部材が、柱抜けの上では建物全体をまたぐ大きな格子梁の弦材となり、軸力も負担します。実際の力の経路に合うモデルを選ぶことが、材料の計算式を正しく使う前提です。