学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋コンクリート構造の許容応力度計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
梁上端筋の許容付着応力度を下端筋より大きくする記述が誤りです。付着応力度は、鉄筋表面から周囲のコンクリートへ長さ方向の力を伝える際に生じる単位面積あたりの力です。上端筋は打込み時に下側へ水や空気が集まりやすく、下端筋より付着に不利となるため、許容値を小さく扱います。
まだ固まっていないコンクリートでは、材料が沈み、水が上がるブリーディングが生じます。上の方にある水平鉄筋の下側へ水や微細な空隙が残ると、鉄筋の節とコンクリートのかみ合いが不十分になりやすくなります。鉄筋そのものが同じ材種・径でも、周囲のコンクリートの状態が異なるためです。
付着が弱い部分で同じ鉄筋力を伝えるには、より長い伝達範囲を確保するなどの配慮が必要です。上端筋を強い鉄筋へ変更すれば周囲との付着も自動的に強くなるわけではありません。鉄筋の引張許容応力度、コンクリートの付着許容応力度、定着・継手の長さは別の量として確認します。荷重による曲げの上下と、打込み位置による付着の有利不利を混同しないことが要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)突出長さ以下の片持ちバルコニーは、告示で定める突出部の鉛直震度による追加検討の対象から除かれる扱いなので、この記述は適切です。ただし、片持ち床の自重・積載荷重による曲げやたわみ、配筋・定着まで確認不要になるわけではありません。また、特別な荷重や形状で問題がある場合の検討も別です。という境界を、全ての構造確認を省略できる長さとして覚えないようにします。
選択肢2
(2)引張鉄筋が許容曲げを支配する範囲では、梁の許容曲げモーメントは概ねです。同じ径で面積を変えず、短期許容引張応力度の高いSD390へ変更すれば、SD345より許容曲げを大きくできるため適切です。ただし、変更後もコンクリート側の限界や釣合い条件、せん断・付着・定着を満たすことが必要です。鉄筋材種の変更の効果を、弾性たわみの低減と取り違えないようにします。
選択肢3
(3)上端筋は、ブリーディングやコンクリートの沈下により下側の付着状態が不利になるため、下端筋より小さい許容付着応力度を用います。大きいとする記述は逆です。これは上端筋の鋼材が弱いからではなく、鉄筋とコンクリートの境界で力を伝える条件の違いです。同じ鉄筋を使用していても、打込み時にどの位置にあったかを考慮します。引張強さの値と、付着で受け渡せる力の値を分けて理解します。
選択肢4
(4)所定の耐力壁の短期許容せん断力は、壁板が負担できる許容せん断力と、側柱が負担できる許容せん断力の和で評価する扱いがあります。壁板だけが全てのせん断を受けるわけではなく、両端の柱も骨組の一部として抵抗します。各部分について適切な算定方法と条件を用いて合計する記述として適切です。長期の壁の算定や終局耐力の式と、名称が似ていても同じ式ではないことに注意します。
周辺知識
鉄筋に大きな引張力が生じても、その力を梁の端や柱梁接合部へ渡せなければ、鉄筋コンクリートの一体性を保てません。異形鉄筋の節が周囲のコンクリートを押し、少しずつ力を渡すのが付着の働きです。その際には周囲を割り広げる作用も生じるため、かぶり、鉄筋の間隔、横補強筋などが重要になります。
鉄筋表面の伝達面積は、おおよそです。同じ鉄筋力でも長い範囲へ分散すれば平均付着応力度は小さくなります。逆に短い区間で力が急変する梁端などでは、付着への要求が大きくなります。太い鉄筋は断面積に比べて周長が相対的に小さく、力を伝える際に不利となる場合があります。
施工時のコンクリートの状態は、硬化後の構造性能へ影響します。締固め、配筋の混み具合、ブリーディングなどを考慮した許容値を用いるのは、理想的な一様材料だけで安全性を評価しないためです。力学の式と、実際に作られた部材の状態を結び付けて理解しましょう。