学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
図-1のような水平荷重Pを受ける山形ラーメンにおいて、Pを増大させたとき、その山形ラーメンは、図-2のような梁端部に塑性ヒンジを生じる崩壊機構を示した。山形ラーメンの崩壊荷重がPuであるとき、最も不適当なものは、次のうちどれか。ただし、梁の全塑性モーメントはMpとする。
選択肢
- (1)
水平荷重Puはl2Mpである。 - (2)
柱ABの軸力はlMpの引張力である。 - (3)
C点の曲げモーメントは0である。
- (4)
E点の鉛直反力VEはlMpである。
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
C点の曲げモーメントは0ではなく、大きさ43Mpです。Cは山形屋根の頂点ですが、ヒンジの記号はなく、曲げモーメントを伝える接合です。図2で塑性ヒンジとなるのは梁端B・Dの2か所で、柱脚A・Eは初めから回転を許すピンです。 柱が微小角θだけ傾くと、B・Dの水平移動はlθで、屋根部分は形を保って横移動します。外力の仕事と塑性ヒンジの仕事を等しくし、Pulθ=2MpθからPu=l2Mpです。全体のA回りのつり合いはVE(2l)=Pulなので、VE=lMp、Aの鉛直反力は下向きlMpとなります。 左柱の曲げのつり合いからAの水平反力は左向きlMpです。CはAより高さ47l、Bより高さ43lにあります。Cより左側を取り出すと、Aの水平・鉛直反力とBの荷重によるC回りのモーメントの合計は (4−7+1+23)Mp=43Mp したがってC断面には、これと反対向きの同じ大きさの曲げが必要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)B・Dの梁端に塑性ヒンジができ、柱が同じ小角θで傾く機構では、各ヒンジの相対回転角はθです。外力の仕事はPulθ、内部で消費する仕事はMpθ+Mpθとなるため、Pu=l2Mpで適切です。山形屋根の頂点までの高さ47lを、外力の移動量へそのまま使ってはいけません。荷重は柱頭Bへ作用しており、その水平移動を使います。 選択肢2
(2)Aの鉛直反力は、Eの上向きlMpとつり合う下向きlMpです。左柱ABには途中の鉛直荷重がないので、その軸力は一定です。下端が下へ引かれ、上端では上へ引かれる力とつり合うため、lMpの引張力となります。横から押す荷重しかなくても、骨組の転倒作用を左右の鉛直反力の組で支えるので、一方の柱が引張りを受けることがあります。 選択肢3
(3)Cは山形の頂点というだけで、自由に回転するヒンジではありません。全体を左右対称の形にしても、水平荷重による断面力が頂点で0になるとは限らないのです。左部分のC回りのつり合いを取ると、外力の回転作用が43Mp残るので、C断面にそれを打ち消す曲げが必要です。この値はMpより小さく、Cが塑性ヒンジになっていないという与えられた機構とも整合します。 選択肢4
(4)全体の転倒モーメントは、Bの水平荷重Puに高さlを掛けたPulです。右支点Eの上向き反力は、Aから水平距離2lを腕として抵抗するので、次のとおりです。 VE=2lPul=2Pu=lMp 柱脚がピンでも鉛直反力は伝えられます。ピンで0なのは支点モーメントであり、水平・鉛直反力まで0になるわけではありません。反力の向きと単位まで確認できます。
周辺知識
塑性ヒンジは、降伏によって回転が集中する部分を表す計算上の概念です。普通のピンは曲げモーメントを伝えませんが、塑性ヒンジは全塑性モーメントMpを保ちながら回転します。この違いを忘れて黒丸も白丸も曲げ0とすると、崩壊荷重や断面力を正しく求められません。 崩壊機構では、骨組が部材の長さをほとんど変えずに大きく形を変えられるようになります。微小な仮の動きを与え、力×移動量とモーメント×相対回転角の仕事をつり合わせると、その機構に対応する荷重が求められます。部材の一部が斜めでも、まずどの部分が形を保ち、どの接合で相対回転するかを描けば整理できます。 本問の屋根B–C–Dは、Cにヒンジがないため山形を保って横へ動きます。そこで生じる断面力は、機構から求めた荷重と支点反力を使い、通常の切断面のつり合いで求められます。機構の幾何学、仕事のつり合い、部分の力のつり合いという三段階を区別すると、崩壊荷重だけでなく各部の力まで理解できます。