学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅰ(計画) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
設計・監理業務等に関する次の記述のうち、建築士法第25 条の規定に基づく「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(平成31 年国土交通省告示第98号)」に照らして、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。工事監理では、工事が「設計図書」のとおりに実施されているかを照合して確認します。工事施工者が作成した「施工図」のとおりかを最終的な基準にする説明が不適当です。設計図書は、建物に求める形状、寸法、材料、性能等を図面や仕様書で示したものです。施工図は、それを実際に組み立てるため、施工者が詳細な納まりなどを描く図です。
例えば、設計図書では必要な耐火性能が指定されているのに、施工図で別の仕様に変わっていたとします。現場が施工図どおりでも、設計図書に適合するとは限りません。工事監理では施工図そのものが設計図書に適合するかを検討する業務もあり、現場の工事も設計図書と照合します。施工図を無視するという意味ではなく、確認の根拠を取り違えないことが重要です。本問は平成31年告示第98号を対象としており、直接人件費、質疑への対応、工程表の検討も、その業務範囲と費用の考え方から整理します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。直接人件費は、その業務に直接従事する人について、一日当たりの人件費と従事する延べ日数を掛け、全員分を合計します。一日当たりの費用には給与だけでなく、諸手当、賞与、退職給与、法定保険料等も含む考え方です。例えば日額3万円の人が10日、日額2万円の人が5日従事する例なら、万円です。この例の額は説明用で、基準が全員の日額を同額に定めているという意味ではありません。
選択肢2
(2)不適当です。照合の基準は、施工者自身が作った施工図ではなく設計図書です。施工図が誤っていれば、そのとおりに施工しても求める品質を満たせません。施工図等の検討と、工事の設計図書への適合確認は、関連する別の段階です。現場の確認には、目視、抽出、品質管理記録など、対象に応じた合理的な方法を使います。全ての作業を常に横で見続けることだけが監理ではありませんが、根拠となる図書と確認方法を明確にします。
選択肢3
(3)適当です。施工者の質疑は、設計内容の不明点や納まりの問題などを明らかにするものです。工事監理者は、形状や寸法だけでなく機能や性能を含む品質の確保という観点から検討し、必要に応じ建築主を通じて設計者へ確認したうえで回答します。例えば図面の寸法どうしが整合しないとき、現場の都合だけで決めず、設計意図と要求性能を確かめます。質疑への回答によって、求める品質が無断で変更されないようにすることが重要です。
選択肢4
(4)適当です。工程表は、いつ、どの工事を行うかを示す計画です。工期内に終わるかだけでなく、コンクリートの養生など、品質を保つための時間が確保されるかも検討します。無理な短縮によって品質を損なうおそれがあれば、建築主へ報告します。設問では、工事監理と一体で行うその他の標準業務に位置付けられています。監理者が施工者に代わって全ての作業手順を管理する意味ではなく、契約や設計図書との関係から問題を確認する仕事です。
周辺知識
「監理」と「管理」は文字が似ていますが、建築の仕事では役割を区別します。工事監理は、設計図書と工事を照合し、求めた建物になっているかを確認する仕事です。施工管理は、施工者が工程、品質、安全、原価などを管理し、実際に工事を進める仕事です。両者が協力する必要はありますが、同じ責任を全て持つわけではありません。
また、図面には段階があります。設計図書で要求する内容を決め、施工図で細部を具体化し、実際の工事で形にします。下流の図面や現場が上流の要求と食い違ったとき、どの図書が基準かを曖昧にすると、不適合がそのまま完成してしまいます。変更が必要な場合は、正式な確認や合意を経て図書へ反映します。
報酬の算定でも、誰が何を何日行うかを整理することが基本です。直接人件費のほかにも、業務に必要な経費等があり、人件費だけが報酬全体ではありません。業務範囲を明確にすることは、費用の説明だけでなく、確認すべき仕事が抜けないようにすることにもつながります。