学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅰ(計画) 問17
問題・正答・学習用解説
問題
図書館(所在地、建設年)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。国際子ども図書館が活用した旧帝国図書館は、1906年、明治39年に創建された建物です。大正時代の竣工ではありません。また、余剰容積を周辺敷地へ移す仕組みを活用した保存の説明は、東京駅丸の内駅舎の保存・復原などに対応します。国際子ども図書館の再生は、歴史的な意匠を残しながら、免震改修等を施して図書館として使い続ける取り組みです。
余剰容積とは、制度上建てられる床面積のうち、現状の建物では使っていない部分に当たります。その利用可能量を所定の制度で別の敷地へ移すことと、古い建物の耐震性を高めることは、別の仕組みです。設問は、歴史的建物の保存という共通点に、異なる事例の年代と制度を組み合わせています。他の図書館は、三角形を緩やかに使う平面、中庭と四つの塔、水辺側への新館増築という構成が特徴です。完成や開館の年と、元の建物の創建年も区別しながら理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。国際子ども図書館は、明治39年創建の旧帝国図書館を保存・改修して活用したものです。創建部分は鉄骨補強煉瓦造で、れんが壁と床を受ける鉄骨梁などで支えられています。歴史的な外観や内部を保ちながら、建物下に免震装置を設けるなどして耐震性を高めました。大正期の竣工と余剰容積の移転を組み合わせた設問の説明は対応しません。2002年という再生後の時点を、元の建物が建った年と混ぜないことも重要です。
選択肢2
(2)適当です。まちとしょテラソは、三角形を基本とする平面を、壁で細かく分けすぎずに使っています。中央付近に本棚を置き、周囲の三辺に沿って閲覧や活動の場所を緩やかに分ける構成です。どこも完全に同じ使い方にするのではなく、家具や位置の違いで居場所をつくります。図書館全体を見渡しやすく、利用者が自分に合う場所を選ぶ考え方として理解できます。開放的な空間でも、会話や静かな読書の釣合いを運用で支える必要があります。
選択肢3
(3)適当です。フランス国立図書館のこの建物は、中央の庭を囲む低い基壇部と、四隅のL字形の塔による構成です。基壇部は建物の下部に広がる水平な部分で、庭の周囲に閲覧空間を設けています。塔は開いた本を思わせる象徴的な形ですが、書庫や事務室などの実用的な空間も収めます。単に四つの塔が独立して建つのではなく、中庭と基壇でまとまる大きな図書館です。形の印象と、資料を保存し閲覧する機能を対応させます。
選択肢4
(4)本問では適当な組合せです。新館を道路の運河側に設け、旧館とつなぎ、新館に主要な入口を置いた増築です。水辺へ開く大きなガラス面と、黒い量塊が特徴となります。ただし、外壁全体が黒いガラスと覚えるのは正確ではありません。図書館の公式説明では、黒い外壁の主要部分は磨いた黒色花崗岩です。設問の新旧館、道路、運河の位置関係を押さえたうえで、黒い石の外壁とガラスの開口を区別すると、実物の構成を理解できます。
周辺知識
図書館の事例は、資料を保存する場所と、人が読んだり交流したりする場所の関係から整理できます。大規模な国立図書館では膨大な資料の管理と搬送が必要になり、地域の図書館では、日常的に立ち寄り、場所を選んで過ごせることも重要になります。蔵書数や利用者の性格の違いが、平面や建物の大きさに表れます。
歴史的建物を活用する場合は、価値のある意匠を残しながら、耐震、防火、設備、バリアフリーなどを改善します。免震改修は、地震の揺れを建物へ直接伝えにくくする装置を導入する方法で、既存の外観を大きく変えにくいという利点につながる場合があります。保存は何も変えないことではなく、何を残し何を更新するかを選ぶ行為です。
新旧館をつなぐ増築では、入口を変えると利用者の流れも変わります。中庭や大きな窓は気持ちよい閲覧環境に関係しますが、資料への日射や熱の影響も制御する必要があります。写真の形、材料、庭や道路との位置関係、内部の用途を合わせて読むと、似た保存事例や図書館どうしの取り違えを減らせます。