学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅰ(計画) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
住宅の作品名(設計者、建設年)とその特徴に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。正方形の平面に方形屋根を架け、傘の骨のような木組を内部に見せる説明は、篠原一男の「から傘の家」に対応します。坂倉準三建築研究所の「正面のない家-H」は、周囲の雑然とした環境から生活を守り、敷地の内部に庭を取り込むコートハウスの手法による住宅です。作品名と空間のつくり方を取り違えています。
方形屋根は、正方形の上に四つの三角形の屋根面が集まる、四角錐に近い形の屋根です。から傘の家では、この屋根を支える木材の組み方が室内の特徴となります。一方、コートハウスは庭を建物や壁で囲み、周囲の視線を抑えながら内側へ光や開放感を得る考え方です。「ワンルーム」「開放的」といった言葉だけでは両者を区別できません。増沢邸の吹抜け、清家清の移動畳による舗設、吉阪隆正の厚みを感じるコンクリートの壁も、それぞれ違う方法で住まいの広がりや落ち着きをつくっています。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。増沢邸は、のコンパクトな平面を基本とし、二層の一部を吹抜けにしています。間は長さ、坪は面積の単位で、1間四方が1坪なので、3間四方は9坪です。吹抜けには上階の床がないため床面積は減りますが、視線や光が上下へ広がり、小さな家に立体的な余裕をつくります。南の大開口に障子を設けると、紙を通った光が拡散して柔らかく入ります。面積を最大限に詰めることだけを目指さない小住宅の工夫です。
選択肢2
(2)適当です。斎藤助教授の家では、テラス、廊下、居間の連続性と、移動畳などによる使い分けが特徴です。舗設は、固定した壁で用途を決め切るのでなく、家具や敷物などを置いて、その場の活動に合う空間をしつらえる考え方です。例えば畳の場所を変えることで、座って過ごす場所をつくれます。日本の伝統的な空間の扱いを、現代の生活へ読み替えたものです。単に家具が動くという事実より、使い方に応じて場所の意味が変わる点が重要です。
選択肢3
(3)適当です。ヴィッラ・クゥクゥは、コンクリートの造形と、彫りの深い開口を特徴とします。外側に対して壁で閉じることは、内部を必ず細かく分断することとは違います。外部の視線を制御しながら、内部では一体的な空間や吹抜けをつくることができます。厚みを感じる窓や壁は、軽いガラスの箱とは異なる落ち着きと光の入り方を生みます。「外部への閉鎖性」と「内部のワンルーム性」を矛盾するものと捉えないことが大切です。
選択肢4
(4)不適当です。傘状の木組と方形屋根は「から傘の家」の説明で、「正面のない家-H」の特徴とは異なります。正面のない家-Hは、敷地内の庭に向かって空間を開くコートハウスとして理解します。周囲に開口を大きく設けにくい市街地でも、内側に光や景色を得る方法です。外から見える正面を強く構える代わりに、内側の住環境を整えるという考え方と、屋根の構造を室内に表す考え方を区別します。
周辺知識
住宅の「広さ」は、床面積だけでは決まりません。吹抜けは床を一部なくす代わりに上下の視線をつなぎ、テラスは室内から外部へ広がりを感じさせます。中庭は周囲の視線を避けながら窓を開く先をつくり、可動の畳や家具は同じ面積を異なる活動に使わせます。本問の住宅は、異なる方法で限られた空間を豊かにしようとした例です。
ワンルームという言葉も、賃貸の一室だけを意味するとは限りません。住宅作品では、生活空間を細かな独立室へ分けず、全体のつながりを重視する構成を指す場合があります。ただし水回りや収納などまで全く区画がないと断定する言葉ではありません。
材料や構造は、その空間の感じ方にも関係します。障子は光を拡散し、木の屋根組は室内から力の支え方を感じさせ、コンクリートの深い開口は壁の厚さを強調します。作品を覚えるときは、平面だけでなく断面と窓の位置を想像し、どこに座り、何が見え、光がどこから入るかを説明すると、設計者の名前と特徴を結び付けやすくなります。