学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問25
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、消防法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。図書館は、消防法施行令の用途区分では、博物館、美術館等とともに扱われ、本肢が述べる『特定防火対象物』には含まれません。したがって、新築の場合と同様に消防用設備等の規定を既存建物へ適用する特定防火対象物だ、とした説明は誤りです。
消防用設備等の基準は改正されることがあります。全ての既存建物に新しい基準を直ちに同じように適用するか、それまでの基準による扱いを認めるかは、法で区分されています。ホテル、飲食店、病院等の特定防火対象物は、不特定の人や避難が難しい人等の利用を考慮し、既存建物にも新たな設備基準への対応を求める扱いがあります。
図書館も多くの人が使う公共的な施設ですが、日常的に『多数の人が利用する』ことと、法律が列挙する特定防火対象物に入ることは同じではありません。定められた用途区分に照らして判断します。また、図書館が特定防火対象物でないことから、古い図書館は全ての設備を昔のままにしてよいと考えるのも誤りです。設備の種類や増改築等の条件により適用が変わるため、本問の特定防火対象物に当たるかという判断を、別の規定へ広げないことが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。図書館は、本肢の特定防火対象物の用途区分に含まれません。ホテルや飲食店等と同じ区分で、既存建物へ新築同様の設備基準を適用するとした点が誤りです。『公共施設』『不特定の人が使う』という日常語の印象だけでは分類を決められません。一方、特定防火対象物でない建物にも消防用設備等の義務はあり、設備の種類や工事等に応じた別の適用条件もあります。区分に入らないことと、消防の規制が全くないことを区別します。
選択肢2
(2)適当です。ラック式倉庫は、高い棚に物品を積み重ねて保管する倉庫です。天井の高さが10mを超え、延べ面積700m²以上の場合、原則としてスプリンクラー設備の対象です。本肢は12mかつ700m²なので、両方の条件に入ります。高い位置や棚の奥の火災は外から消火しにくく、保管物を通じて広がる危険があるため、自動的に散水する設備が重要になります。高さは『超える』、面積は『以上』で、700m²ちょうどを対象に含めます。
選択肢3
(3)適当です。地階に設ける駐車場のうち床面積1,000m²以上のものは、原則として消防法上の排煙設備の対象です。本肢の1,000m²は境目を含みます。地下では火災の煙が外へ逃げにくく、消火活動の見通しや進入にも支障を生じるため、煙を排出する仕組みが必要です。地上の開放的な駐車場へ、この地下の面積条件をそのまま当てはめることはできません。また、建築基準法にも排煙の規定があるので、どちらの法律の設置基準かを確認します。
選択肢4
(4)適当です。地階を除く階数が5以上で、延べ面積6,000m²以上の建物は、原則として連結送水管の設置対象です。本肢のホテルは5階、6,000m²なので対象に入ります。連結送水管は、消防車から送った水を建物内の配管で上階等へ届け、消防隊が放水するための設備です。地上から長いホースを一から伸ばす負担を減らします。スプリンクラーのような自動散水設備とは用途が違い、消防隊の活動を支える設備として理解します。
周辺知識
消防用設備等は、火災を知らせる設備、初期消火を行う設備、避難を助ける設備、消防隊の活動を支える設備などに分けて理解できます。スプリンクラーは火災の熱を受けた部分等から散水して火勢を抑え、排煙設備は煙を外へ出し、連結送水管は消防隊が必要な場所へ水を送るために使います。設備名が似た防災用語でも、役割を混同しないようにします。
設置条件では、用途、階数、地下かどうか、床面積、高さ等を組み合わせます。本問のラック式倉庫は天井高さと延べ面積、駐車場は地階と床面積、ホテルの連結送水管は階数と延べ面積が要点です。どの条件も、対象とする火災や消防活動の難しさを反映しています。面積の数字だけを暗記するより、どんな建物のどんな危険に対応するかを結び付けると整理できます。
既存建物への新基準の適用では、建物の用途区分と設備の種類等を確認します。『特定防火対象物』は法令で決めた区分なので、一般的に危険そう、公共的だからという印象で追加しません。図書館がこの区分でないという結論を得ても、全ての設備改修が免除されるとまとめず、問われた規定の範囲に限定して理解します。