学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
病院に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。非常用照明の照明カバーだけを取り替える工事は、使用中の建物について工事中の安全措置の計画の届出を必要とする工事から除かれる軽微な工事です。本肢は、5階の用途部分が1,600m²ある病院という規模だけで、カバーの取替えにも必ず事前の届出が必要とした点が誤りです。
工事中も建物を使う場合、避難に必要な階段や防火設備等を工事で使えなくすると、通常は安全な建物でも一時的に危険な状態になります。そこで、一定の建物と一定の工事について、工事中の安全、防火、避難の措置をあらかじめ計画して届け出る制度があります。病院は、自力で速やかに避難しにくい患者等も利用するため、工事の影響を慎重に扱う必要があります。
ただし、届出の要否は『対象の建物か』と『対象の工事か』の両方で判断します。照明カバーの取替えは、規定で除外される軽微な工事に該当します。照明装置そのものを変更したり、避難施設等に別の対象工事をしたりする場合まで同じ結論にはできません。法定の届出が不要でも、作業中の通行や照明の確保など、実際の使用者の安全に配慮することは必要です。工事の名称を部品のレベルまで正確に読む問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。国等の建物を除く地上3階建て、合計1,500m²の病院は、建築物の定期報告の対象に入ります。所有者等は、一級・二級建築士や建築物調査員に敷地、構造、建築設備の状況を調査させ、結果を特定行政庁へ報告します。建築時に適法でも、劣化や使い方の変化で危険が生じるため、継続して状態を確認する制度です。定期報告は建築確認のやり直しではなく、使用している建物の状態を専門家が調べる仕組みです。
選択肢2
(2)適当です。商業地域の病室で、道に面しない開口部でも、所定の水平距離が4m以上ある場合、採光補正係数の計算値が1.0未満なら1.0とする扱いがあります。補正係数は、窓の面積だけでなく、周囲の建物等に光を遮られやすい条件を反映するための値です。本肢はという計算と、水平距離4m以上の条件を示しています。単に商業地域だから常に1.0にできるのではなく、窓の向き、距離等の条件をそろえます。
選択肢3
(3)誤りです。使用中の工事に関する安全措置計画の届出では、対象となる建物の規模だけでなく、行う工事の内容を確認します。非常用照明の照明カバーの取替えは、対象から除外される軽微な工事です。5階の病院部分1,600m²という大きさを見て、照明に関する作業を全て届出対象にするのは誤りです。カバーだけの取替えと、設備そのものや避難施設等の変更を区別し、問題に記載された工事の範囲を超えて判断しないようにします。
選択肢4
(4)適当です。敷地が複数の用途地域にまたがる場合、建物の用途制限は原則として敷地の過半が属する地域の規定によります。本肢は合計1,000m²のうち工業地域が600m²で、半分の500m²を超えます。そのため工業地域の用途制限を適用し、病院は原則として建てられないので、例外の許可なしに新築はできません。準工業地域400m²の部分へ病院を寄せればよいという判断ではなく、用途制限では敷地全体に対する過半の地域を使います。
周辺知識
病院に関する法規は、建てる前、使っている間、工事をしながら使うときという時間の流れで整理できます。建てる前には用途地域や採光等の条件へ適合させます。使用中には定期調査・報告によって安全上の状態を確認します。使用を続けながら一定の工事を行う場合には、その期間だけ失われる避難・防火上の機能を補う計画が必要になります。
採光では、窓の実際の面積に補正係数を掛けて、有効な面積を算定します。窓の前が大きく開けているか、建物等が迫っているかにより、同じ窓面積でも室内へ届く光の条件が違うためです。病室に必要な採光面積の割合と、窓に掛ける補正係数は別の数値なので、どちらを問われているかを区別します。
また、複数の用途地域にまたがる敷地では、用途制限と容積率を混同しないようにします。本問の病院の用途の可否は600m²の工業地域が過半という判定ですが、容積率なら地域ごとの限度を面積に応じて配分するのが基本です。『またがる敷地はいつも平均する』とも、『いつも過半で統一する』とも覚えず、何の規制を判定しているかを先に確定します。