学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。125Hz・500Hz・2,000Hzで、それぞれ25dB・40dB・50dB以上という遮音性能は、長屋や共同住宅の各戸を区切る界壁等に関する基準です。老人福祉施設の防火上主要な間仕切壁に、この数値を一律に要求する規定ではありません。
防火上主要な間仕切壁は、建物内で火災が大きく広がることを防ぐために重要な壁です。準耐火構造にし、小屋裏や天井裏まで達することは、火が天井上を通って隣の区画へ回り込むことを防ぐ条件です。一方、遮音は、隣の住戸からの日常生活の音を小さくして健康的に暮らせるようにする条件です。壁という同じ部位でも、規定の目的が異なります。
Hzは音の振動数を表し、数値が大きいほど高い音です。透過損失は壁を通った音がどれだけ弱くなるかをdBで表したもので、値が大きいほど音を通しにくい性能を示します。防火性能が必要な壁だから、住戸間の遮音規定も必ず同じように適用するという関係ではありません。老人福祉施設でも静かな環境への配慮は大切ですが、法律上の義務を問う本問では、どの用途のどの壁にこの数値を適用するかを正確に区別します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。構造を支える重要な部分に指定建築材料を用いる場合、指定されたJIS・JASへの適合や、必要な品質の技術基準に適合するとする大臣認定等が必要です。JISは日本産業規格、JASは日本農林規格で、製品の品質等を共通の条件で確かめる物差しです。設計で太い柱や厚い床を指定しても、材料の強度や品質が想定より低ければ安全を確保できません。寸法を決める構造設計と、その性能を実際に持つ材料を使う確認の両方が必要です。
選択肢2
(2)適当です。直上階の居室が300m²なので、地上階の階段に代わる傾斜路の必要幅は120cmです。手すりの出幅15cmのうち、10cmまでは幅の算定上ないものとみなせるため、差し引くのは5cmです。壁の間が125cmあれば、となり基準を満たします。実際の壁間寸法と法令上の算定幅は区別します。15cm全部を引く計算でも、全部無視する計算でもありません。片側だけに手すりがある本問の条件を使います。
選択肢3
(3)適当です。第三種ホルムアルデヒド発散建築材料は、所定の範囲の量のホルムアルデヒドを発散する材料です。居室内の濃度が高くなり過ぎないよう、使用する内装面積に換気条件等に応じた係数を掛け、その値を居室の床面積以下に制限します。例えば係数0.5を用いる条件なら、使用面積60m²に対して算定値30m²となり、床面積30m²との比較になります。係数は自由に選ばず、居室の種類や換気回数に応じて表から選びます。
選択肢4
(4)誤りです。示された周波数別の透過損失は、長屋・共同住宅の住戸間の界壁等に関する遮音の数値です。老人福祉施設の防火上主要な間仕切壁に対し、天井裏まで準耐火構造で造ったことを理由として、その遮音基準が一律に適用されるわけではありません。火の回り込みを止める壁と、隣戸からの生活音を低減する壁では、法令が求める性能の入口が異なります。防火上の仕様を満たすかという判断へ、別用途の音の基準を付け加えた点が誤りです。
周辺知識
建材や壁には複数の性能があります。強度は力に耐える性質、防火は火災の熱や炎への抵抗、遮音は音を通しにくくする性質、低いホルムアルデヒド発散は室内空気を健康に保つ性質です。一つの性能に優れる材料が、他の性能も自動的に満たすとは限りません。使う場所に必要な性能を、別々の物差しで確認します。
遮音では、低い音と高い音で壁の性能が違うため、振動数ごとに基準値を定めます。透過損失が40dBという値は、音量を単純に40%減らす意味ではありません。dBは音の強さの比を対数で表す単位で、大きな値ほど音を通しにくくします。ただし本問の判断では計算そのものより、この基準が住戸間の壁等のためのものだという適用範囲が重要です。
また、幅や面積の計算には算定上の特例があります。手すりは10cmまでないものとみなす一方、ホルムアルデヒド材料は使用面積へ係数を掛けます。見た目の実寸や実面積だけで結論が決まらないため、何を計算する規定かを確認します。材料の種類、建物の用途、空間の使われ方、法令の計算方法を対応させることが、複合した条件を正しく読む基本です。